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ひどく傷ついているように見えた


「俺を連れ出せるのか」


どこまでも澄んでいて、心の中を読ませない瞳が来縁を見ていた。

端から期待していない、と言いたげだ。望みを言うだけ言って叶えられないことが決まっているような。


それが、なんだか無性に腹立たしかった。

勝手に諦められているのが。


「分かった、なら行こう」


来縁の言葉に思っても見なかったのだろう。え、っと言った表情で奏は目を見開いた。


「ここから出たいんでしょ?  違うの?」


「いや、違わねぇけど」


歯切れの悪い奏に、来縁は内心苛ついていた。

自分から出たいと言っておいて、いざとなったら及び腰なのだろうか。


それとも、来縁には出来っこないと決めつけられているのか。


「なら迷う必要ないよ。行こう」


ほら立って、と促すと奏は信じられないといった様子で立ち上がる。

そんな奏を尻目に、手を取って前へと歩き出す。彼が何を思って、ここに留まっているのかは分からない。

分からないけど、望むなら叶えてあげたかった。


川の下流に向かって歩いていくと、人里が見えてきた。

いくつかの家から煙が上がり、人の気配にホッと胸を撫で下ろす。


早く戻ろうと歩いていくと、なにかに引っかかった。前のめりになった体勢をなんとか立て直す。


「うわぁっ!?」


よく見てみると森と人里を隔てるように胸の高さで縄が引かれていた。


(なんでこんなところに…………?)


まるで境界線のようだ。

先は見えないけれど、森の奥深く茂みに隠れて続いているようにも見える。

どこまで続いているのか見当もつかない。


「誰がなんのために……?」


何の変哲もないただの縄のように見える。

なにか有るのかと、来縁はそっと触れてみた。

しかし、変化も違和感もない。


人為的なものなのに、意図が読み取れず来縁は困惑した。


「これ何か分かる?  って、どうしたの」


ふと奏の顔をみると、すっかり青ざめていた。

縄を見つめたまま、唇をかみしめている。

このままでは唇を噛みきってしまうだろう。来縁は奏の直ぐ側まで行き、肩にそっと触れた。


「なんか変だよ」


奏を心配して顔を覗き込むと、視線が少しそれる。

こっちを見ない奏が、とても傷ついているように見えた。





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