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チャイルドシリーズ

「別に俺たちはここで始めても構わないぜ」


 皆が驚きその声の主に注目が集まる


するとフリードリヒの後ろからフードを被った五人の人間がゆっくりと前に出てきたのである。


「何だ、テメエらは?」


 アルが目を細め五人に問いかけると、その連中は同時にフードを脱ぎ捨て会場に姿を晒す。


「子供?」


 サーシャが思わず口にしたようにその五人は見た目が十三、四歳ぐらいのあどけなさの残る子供ばかりであった。


「ガキか?どうしてお前らのようなガキがここにいるのかは知らねーが


誰もが子供に優しいとは限らないぜ、ガキはさっさと家に帰ってママのおっぱいでもしゃぶっていろ」


 アルの言い放った言葉に真っ先に反応したのは金髪でつり目の少年であった。


「ああ、調子に乗っているんじゃねーぞ、テメエだって俺たちとそんなに変わらねーだろうが、ぶち殺すぞ‼」


 喧嘩腰でイラつく金髪の少年を抑えるように引き留めたのは五人の中でも一際背の高い少年だった。


「止めないかベータ、王の前だぞ」


「止めるな、ガンマ、俺らを舐めやがって、こいつムカつくんだよ‼」


 ガンマと呼ばれた背の大きな少年はそのあどけなさの残る顔とは裏腹に


筋骨隆々の体と褐色の肌が特徴で今にも爆発しそうなベータと呼ばれる少年を羽交締めにして押さえている、そんな光景を見て口を挟む者がいた。


「全く、ベータはしょうがないですね、狂犬ですか貴方は?」


「ああ、今何つったデルタ⁉︎いつのいつも澄まし顔できどりやがって、何ならテメエもやっちまうぞ‼」


 デルタと呼ばれる少年は眼鏡をかけた痩せ気味の少年で、ため息混じりの呆れ顔でベータに言葉をかけていた。


「ハア、全く礼儀知らずというか脳筋というか……戦うのであれば正々堂々と戦場でやればいいでしょうに」


「ああ、お前はいちいちムカつくんだよ、デルタ、あいつより先にお前をぶちのめしてやろうか?」


 なぜか仲間内で歪み合う少年たちに戸惑いを隠せない連合側の者たち


何が起こっているのかわからず皆言葉を失っていた。すると会場をつん裂くような高い声が鳴り響く。


「止めなよ、アンタら、みっともない‼」


 ベータとデルタの言い争いに待ったをかけたのは五人の中では唯一の女子だった


黒髪ロングの整った顔立ち、子供っぽさは残っているものの間違いなく美少女といえるその姿はこの殺伐とした空気の中で一際目立つ存在でもあった。


「だってよお、イプシロン、デルタの奴が……」


「だってじゃないの、いい加減その喧嘩早い性格どうにかしなさいよ。


デルタもいちいちベータを挑発しないの、いい、わかった?」


「ああ、気をつけるよ、イプシロン」


 二人の喧嘩を仲裁したイプシロンと呼ばれる少女は満足げに大きく頷いた


だが次の瞬間サディスティックな笑みを浮かべニヤリと笑ったのである。


「喧嘩は戦場でやればいいじゃない、敵ならばどれだけ殺しても褒められるのだから……


わざわざ仲間内で争うのは損じゃない、絶望して命乞いする相手を無惨に殺す瞬間とか思い出しただけでもゾクゾクしちゃうわ」


 その可憐な見た目とは裏腹に残虐的な言葉を口にしながら愉悦に浸る少女の姿を目の当たりにして


周りの大人たちの背筋が寒くなる。


「お前らいい加減にしろ。失礼した、俺がこいつらのリーダーをやらせてもらっているアルファという、よろしく 先 輩 」


 皆を制するように前に出てきてアルに右手を差し出してきたのはアルファと名乗る少年だった


精悍な顔立ちに引き締まった体、銀色の髪、銀色の瞳が特徴の美少年


見た目は他の仲間と同い年ぐらいだと思われるが心なしか大人びて見える。


「先輩って……お前らまさか⁉︎」


 アルファの言い回しに引っかかったアルは珍しく動揺する。


「ええ、貴方の想像通りですよ 先 輩」


 含みのある言い方でニヤリと微笑むアルファ。


「〈チャイルドシリーズ〉か、お前ら⁉︎」


 アルは激しく動揺していた、険しい顔を浮かべ不敵に笑う五人の少年少女を睨むように見つめる。


 普段何があっても動じないアルのただならぬ態度を見てサーシャは思わず問いかける。


「アル、彼らは一体何者なの?〈チャイルドシリーズ〉って何⁉︎」


 だがアルは五人を睨みつけたまますぐさまサーシャの質問に答えることはなかった。


しばらく誰もが言葉を発することもなく沈黙という重苦しい雰囲気が会場を支配する


そんなピリピリとした空気を打ち破るようにようやくアルが口を開く。


「あいつらは〈チャイルドシリーズ〉、簡単に言えば俺の複製品のようなモノだ。


父上はずっと〈チャイルドシリーズ計画〉には反対だった、それなのに……


こいつらの年齢から判断するに父上には内緒で計画を進めていやがったな、じいちゃん⁉︎アンタって人は……」


 絞り出すようなアルの言葉にサーシャを始め連合側の人間たちに驚愕の表情が浮かぶ。


「そんな……アルの複製品って……」


 激しく動揺する連合側の人間たちを尻目にチャイルドシリーズの五人はニヤニヤと愉悦に満ちた笑みを浮かべていた。


「おいおい、複製品とはひどいな、せめて兄弟と言ってくれよ 先 輩」


「しかし我々は主であり国王でもある祖父を裏切るような出来損ないとは違いますよ」


 まるで挑発するかのようなアルファとデルタの言葉にアルは思わず拳を握りしめる。


そんなアルを見て嬉しそうに口を開くベータ。


「おいおいここでやろうってか?いいぜ、来いよ‼俺はアンタと戦いたくてウズウズしているのだから‼」


「止めなよ、ベータ、王の御前よ。でも逃げないでね、先輩。


できれば連合軍全員でかかってきて、そうしたら一人一人プチプチとなぶり殺しにしてあげるから。


昨日のメデルゲン王国の兵士も最初は威勢が良かったのだけれど最後はみんな逃げ出して必死で命乞いをしてきたわ


それを無慈悲に殺すのがたまんないのよ……


戦意を喪失して絶望に染まった人間を虫みたいに殺すの、ああ、思い出しただけでゾクゾクしちゃうわ……」


 そのあどけなさが残る見た目とは正反対に恍惚の表情を浮かべながら残虐な言葉を口にするイプシロン


だがその話の内容に引っかかったサーシャは思わず問いかけた。


「メデルゲンって……貴方たちはメデルゲン王国に何をしたのですか⁉︎」


 そんなサーシャの質問を待っていましたとばかりにアルファがニヤニヤと笑みを浮かべながら答える。


「メデルゲン王国は昨日我々五人が滅ぼした」


「メデルゲン王国は精鋭揃いと聞いていましたが意外と楽でしたね」


「あいつら最後は逃げ出しやがってよ、最後まできっちり戦えよ、腰抜け共が」


「いいじゃない、恥も外聞もなく逃げ出す人や必死に命乞いしてきた相手を無慈悲に殺すのが最高に面白いのだから」


「それはお前だけだ、イプシロン」


 まるで遊びに行った楽しい思い出を語るように仲間内で盛り上がる五人。


「滅ぼしたって……あのメデルゲン王国をたった一日で……」


 異様に盛り上がるリストランテ陣営とは裏腹に絶望的な空気が漂い始める連合側、


れを見越したかのようにフリードリヒがクルリと背中を向けると肩越しに言い放った。


「こちらから連合側に告げるのはひとつ、降伏勧告だけだ。期限は一週間


それまでに返答がないのであれば元ベルドルア国王を見せしめのために公開処刑し貴様ら連合に対して侵攻を開始する」


 フリードリヒは慈悲を感じさせない冷徹な目でサーシャとアルを見下ろしながら言い放つ。


「父上を処刑……」


 絶望的な表情を浮かべ崩れ落ちそうになるサーシャを気にかけることもなく話を続けた。


「せめてもの慈悲として元国王以外の城の者は解放してやる、ありがたく思うのだな」


 そう言い放つとそのまま会談場を立ち去るフリードリヒ、チャイルドシリーズの五人もそれに続いた。


「じゃあまた、戦場でお会いできることを楽しみにしていますよ 先 輩」


とアルファが言った。


「少しでも考える頭があれば我々と戦うなどという愚かな選択はしないとは思いますが」

とデルタも続く。


「逃げるんじゃねーぞ、テメエは俺が直接ぶちのめしてやんだからな‼」


とベータ。


「ベータ、全くアンタは……まあでも逃げないで欲しいというのは私も同じだけれどね


まさか可愛い女の子の誘いを断るとかしないわよね?たっぷりと楽しませてね、ふふっ」


とイプシロンが嬉しそうに言った。


「ではこれで失礼する」


とガンマは頭を下げた。


 捨て台詞のような言葉を残しその場を後にするチャイルドシリーズの五人


リストランテ側の人間が全て去った後も残された連合側の人達はあまりのことにしばらく言葉を発することも立ち上がることもできなかった。


 アルは祖父であるフリードリヒが出て行った後も扉の方をジッと睨み続けていた。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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