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世界の平和の為に

マークハントをリーダーとする海賊達を仲間とすることに成功した連合側はいよいよ五カ国による連合としての活動を始めた。


まずは経済の基盤としてスワロワ海洋国を起点にコンテナによる大規模な海運が行われ


世界中からさまざまな商品が連合国へと輸入され始めるとそれに呼応するかのように各方面から商人達が集まってきて


連合国内での経済活動が活気を帯び始める。


海運業務が思いの外順調にいった要因はマークハント率いる元海賊達が


サーシャ達の期待以上に優秀でその能力を遺憾なく発揮したからである。


ちなみに海賊達とサーシャを引き合わせたサバロワはその功績を認められ多額の賞金と海軍主席幕僚という地位を与えられた


しかしマークハントらの証言により軍の機密情報を流していた事が発覚し【国家反逆罪】の罪により全ての地位と財産を失った


どうやら海賊達の足元を見たサバロワは流す情報の金額をどんどん釣り上げていっていたとの事で、海賊達から随分と嫌われていたようである。


 連合の財政面を任されたシャルファニア王国は短期間で世界初の紙幣というモノを発行した


金属製の硬貨から紙の通貨への移行は最初人々に不安を与えたが、一ヶ月もすると人々も慣れ始め


二ヶ月を過ぎる頃には〈もはやそれが当然〉という意識に変わっていった。


 医療、教育、社会福祉といったモノを一手に引き受けたキトロフ公国は連合からの多大な資金援助をバックに


着実に成果を上げていった。世界でも類を見ない国民優先のこの社会制度は人々から絶大な支持を受け


〈連合に加盟していない国に住むのは損〉という認識を世界中に浸透させていく


それは大勢の移民希望者を産み連合に所属する国の役所は永住権を求めてきた人で溢れかえるという社会現象を生み出した。


 五カ国の軍を解体再編し新しく設立された軍は【平和維持連合軍】と名称を変え稼働し始めた


最初は今までとのやり方の違いに戸惑う兵も多かったがゴルドバン武王の指導力とカリスマ性により屈強な兵士へと成長していった


そして最大の仮想敵国であるリストランテ連邦共和国に対しては


内情に詳しいアルが戦術面での助言をすることによって統率の取れた最強の軍隊として生まれ変わったのである。


 ケルコフ共和国はその情報収集能力を活かし他国の情報活動をするとともに


連合各国の活動に不穏な動きや不正がないかを監視する役目を担っていた。


まさに適材適所と言えるこの政策はのちの連合各国に莫大な繁栄をもたらすのである。


 連合による各国の動きは最初の一ヶ月ほどは混乱や問題が多発しバタバタとしたものの


サーシャの的確な改善策と連合各国の素早い対応により三ヶ月を過ぎた頃には順調に回り始め他国からも〈我が国も連合に加入させてほしい〉という声が出始めた。


 連合活動が軌道に乗り始め三ヶ月を過ぎた時、各国の王とサーシャは現状報告と今後の方針を話し合う為の定例会合に出席していた。


多少の問題は残るものの全体的には順当に稼働している状況を見て各国の王達も満足げな表情を浮かべている


定例会議が終盤に差し掛かり各国の報告や意見が出尽くしたと思われた時、サーシャがスッと手を上げた。


「何か意見でもあるのですかな、サーシャ殿?」


 今回議長を務めているバルダークが問いかけるとサーシャは真剣な面持ちで語り始めた。


「ようやく連合での活動も軌道に乗り始めた今、次の一歩を踏み出す時期だと思うのです」


 サーシャの意味深な言葉に穏やかだった全体の空気に一瞬緊張が走る、そしてその内容は皆の想像をはるかに超えるものであった。


「次の一歩とは、具体的に何をしようというのですかな?」


 バルダークの質問に対しサーシャは一度皆を見回した上で口を開いた。


「リストランテ連邦共和国に我が連合への加入を進めるのです」


 そのあまりに予想外の提案に一同は思わず顔を見合わせる。


「本気で言っておられるのですかサーシャ殿?」


「はい、こんな事を嘘や冗談で言えません、私は本気で言っていますよ」


 すると皆の意見を代表するようにゴルドバン武王が目の前の机を激しく叩いて立ち上がり感情的な口調の言葉をサーシャにぶつけた。


「何を馬鹿なことを、リストランテは我々の敵ですぞ‼それを連合に加えるだと?正気の沙汰とは思えぬ‼」


「そうでしょうか?ゲルゼアとバーゼナンデを併合した今のリストランテは国土、人口ともに世界トップの国です


もしリストランテを連合に組み入れる事ができれば市場規模を考慮した場合その経済効果たるや計り知れません


そして最大のメリットは連合に加入させてしまえばリストランテの軍を解体し合法的に平和維持連合軍へと組み込む事ができます


これは事実上世界規模の戦争が終結した事を意味します。


もし実現できればこれ以上の成果はないと思うのですが?」


 まるでそれが当然とばかりに理路整然と提案するサーシャ、この年端も行かぬ少女の言葉に百戦錬磨の王達も思わず息を呑んだ。


「し、しかし良いのですかサーシャ殿?リストランテはあなたの母国であるベルドルアを滅ぼし未だ国王であるお父上を捕らえている国ですぞ」


 バルダークの問いかけにサーシャは唇を噛み締め拳を強く握りしめた。


「ええ、わかっています、ですからリストランテが我が連合に加入する条件はベルドルア国王と国民の解放


及びベルドルアの国土の返還を最低条件としたいと思っています」


 絞り出すように皆に告げる、努めて冷静に発した言葉であったがその節々から並々ならぬ思いが伝わってくる。


「しかしあのリストランテがその条件を飲みますかな?そもそもあのフリードリヒが我々との会談に応じるかもかなり怪しいと思うが?」


 ゴルドバンが懐疑的な目でサーシャを見ながら再び問いかける。


「リストランテの国内では未だ内乱が続いており経済状態も悪化の一途をたどっています


失業者も増え続け一部の地方では食糧不足による餓死者すら出ているとのこと


その証拠にリストランテから我が連合への移民希望者も増え続けています。


何より軍の再編もままならず切り札であったアルがこちらにいる以上リストランテ側も我々連合との戦争は避けたいはずです、勝算は十分あると思っています」


 自分を言い聞かせるように力強く言い放ったサーシャ


確かにサーシャの言っていることは正論でありもし本当にそれが実現すればこれ以上の成果はないだろう。


だが現実の政治というのはそんなに甘くないという事を嫌というほど知っている各国の王達は


一抹の不安と小さくない期待を抱えながら彼女の意見に賛同した。


 こうしてサーシャは連合側の代表としてリストランテの王でありアルの祖父でもあるフリードリヒと歴史的な会談に臨むこととなったのである。



頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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