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経済連合

その瞬間ゴルドバンは思わず両目を大きく見開き絶句する。


各国の王達も動揺を隠せず城内がざわつき始めた。


護衛のためについてきていた騎士達がそれぞれの王を守るように前に出てきて腰の剣に手をかけいつでも戦闘可能な臨戦体制をとった。


「サーシャ殿、このような重要な場でいくら何でも冗談がすぎますぞ、その少年があの【リストランテの悪魔】ですと?そんな馬鹿な‼」


 何とか気を取り直したゴルドバンが絞り出すように言葉を発するとサーシャの代わりとばかりに今度はバルダークが口を開く。


「嘘や冗談ではないですぞ、ゴルドバン殿。この少年こそ間違いなくあの【リストランテの悪魔】ことアルフレッド・バーキュリーです。


その証拠に我が国の誇る特殊部隊【SINOBI】の者達二十人ほどがあっという間に彼に倒され


我が国の高位魔道士の魔法を受けてもびくともしなかった、この者が本物である事は私が保証いたします」


 バルダークの淡々とした説明に思わず息を呑むゴルドバン、すると騎士の一人が反論するように大声で叫んだ。


「馬鹿な、そんな少年があのアルフレッド・バーキュリーだと⁉︎大体なぜ【リストランテの悪魔】が我らの味方をするのだ?


とてもじゃないが信じられぬ、我々を騙そうとしているのではないのか⁉︎」


 険しい表情を浮かべながら緊張した面持ちで睨みつめる騎士達、そんなピリついた空気を楽しむようにアルは不敵な笑みを浮かべる。


「俺が本物か偽物かそんなに疑わしいというのであればかかってこいよ


何なら全員で来てもいいぜ、俺が本物かどうかその身を持って教えてやんよ」


 挑発的な口調で余裕とも取れるセリフを口にするアル、対照的に騎士達の剣を握る手に益々力が入る


部屋全体に緊張感が高まり一触即発の空気が流れた。


「やめなさい‼」


 張り詰めた空気の中でサーシャの甲高い声が響き渡る。


「私達は平和のため、協力し合うためにここに集ったのよ、決して戦うためではないわ。


アル、その挑発的な物言いはやめなさい‼」


「けどよ、サーシャ、コイツら敵意剥き出して俺に向かってきているじゃねーか


別に事を荒立てたい訳じゃないが売られた喧嘩は買ってやらないとな」


 アルの発言に騎士達の顔が益々強張る、対照的にアルは終始余裕の態度でペロリと舌を出し愉悦に満ちた表情を浮かべていた。


「だからその挑発的な言動をやめなさいと言っているのよ‼


【リストランテの悪魔】が突然目の前に現れたら皆が驚くのは当然じゃない、私達は話し合いに来たのよ」


 まるで子供を叱りつけるような口調で説教するが、当の本人はどこ吹く風とばかりにプイッとそっぽを向きボソリとつぶやいた。


「お前が俺の事を黙ってコイツらを集めたせいじゃねーか……」


 サーシャは無言で睨みつけるがアルは知らないふりを決め込みどこ吹く風とばかりに全く反省の色を見せなかった。


仕方がないとばかりに大きなため息をつくと再び皆に説明を始めた。


「お騒がせいたしました、皆様にアルの事を黙っていた事は謝罪します


この事をお知らせしてしまうと来てくれないと思ったものですから……」


 サーシャは皆に向かって頭を下げ再び話し始める。


「ここにいるアルは本物のアルフレッド・バーキュリーです


どうしても信じられないというのであればこの会談終了後に模擬戦を行なってもいいです


何でしたらここにいる全員同時を相手にして戦っても問題ありません。


アルには相手を殺さないように言い含めますが戦うのであればそれ相応の覚悟をしてください」


 静かな口調で話すサーシャだったが可憐な見た目とは裏腹にその言葉には凄みと決意が見てとれた、各国の王達も思わず息を呑む。


 そんな時、ゴルドバンが皆を代表する様に口を開く。


「まだ納得しきれてはいないが、この若者が本物のアルフレッド・バーキュリーだというのであれば


我らにとってこれ以上ない僥倖といえよう。今のリストランテは統合したバーゼナンデとゲルゼアの内乱で国内は混乱している


主戦力である魔道士達も使えず切り札の【リストランテの悪魔】がこちらの陣営に付いたとあれば


超大国となったリストランテが相手でも十二分に戦えるぞ」


 ギラギラとした目で右拳を握りしめるゴルドバン、それに応えるかのようにサーシャは大きく頷いた。


「ゴルドバン様の言う通りです、今や超大国となったリストランテが国内を平定してしまえば


他国は国力の差に圧倒され滅ぼされるか膝を屈するという屈辱的な選択しかなくなるでしょう。


今しかないのです、今のうちにリストランテに対抗できるだけの力をつけるのです


一つ一つの国ではとても敵わないでしょうが皆が力を合わせれば必ずできます


どうか世界の平和の為に皆様の力をお貸しください‼」


 深々と頭を下げ切実に懇願するサーシャ、その姿に各国の王達も少なからず心動かされているようであった。


 そんな時、キトロフ公国のブレドレフ国王が手をあげた。


「サーシャ殿の理想や平和を思う信念は十分に伝わってきました、ですが理想と現実は違います。


世界を思い、国を思い、民を思うのであれば抽象的な理想論ではなく現実的な具体案が必要でしょう。


国内が混乱しているとはいえ今やリストランテは超大国となりました


もし仮に我ら五か国が集まり軍事的には対抗できたとしても国力ではとてもじゃないですが歯が立たないと思われます


もし連合の全てを軍事力に全振りし民を蔑ろにすると言うのであれば


我が国としてはとても承服しかねると返答しなければなりません、そこのところをどうお考えですかな?」


 ブレドレフは【微笑み王】の二つ名通り、温和な口調と優しい表情でサーシャに問いかける


だがその言葉には民を思う確固たる信念が感じられた。


「ブレドレフ様のおっしゃることは当然です、軍事に全ての力を注ぎ


国民が飢えてしまうのであれば本末転倒と言えますからね。


私の考えは経済においても五国間で連合を組み相互利益を生み出し互いに発展していきましょうというものです」


「ほう、それは具体的にはどういったものですかな?」


 ブレドレフの質問に対し、一旦間を置くように目を閉じたサーシャ、そして再び大きく目を開き静かに語り始めた。


「五か国による経済連合を確立します、具体的にいえば人々の行き来をしやすくする


つまり五か国間の国境の通行自由化を行い、関税も撤廃します」


 サーシャの提案にどの国王も驚き、動揺の色を隠せなかった。


「それはまた大胆な政策ですな、しかし国境の通行を自由化し関税を撤廃したただけでそれほどの経済効果が得られますかな?」


 ブレドレフはその提案に驚きながらも努めて冷静に質問するとサーシャは口角を上げすぐに語り始めた。


「そうですね、それだけでは厳しいでしょう。


ですから私といたしましては世界中の人々を五か国に集める必要があると思っています。


流通を整備し物と人を集めるのです、そのための第一弾として通貨を統一します


今後五か国内ではこの通貨以外では取引できないようにしようと思っています」


 集まった五か国ではそれぞれの国が独自の金貨、銀貨、銅貨を使用しており


その国で商売する為には一々通貨を両替しなければならず、その為の手数料も馬鹿にならないというものであった。


なるほど、五か国間の行き来を安易にし、関税も両替もないというのであれば


五か国内で商売する商人にとってはありがたい話ですな。


ですが通貨の統一は中々に大変ですぞ、新しい金貨を作るにもそれ相応の金が必要となります


今までの通貨を回収しそれに使われていた金や銀を溶かして改めて作るにしても


まずは市場に出回るだけの金、つまり先行投資が必要です、その資金はどうするおつもりですかな?」


 ブレドレフの当然の質問にサーシャ含みのある笑みをうかべて小さく頷いた。


「今後我々が使う通貨に金や銀などの金属は使いません」


「金属を使わない?では何を使うおつもりですかな?」


 その質問を待っていたとばかりにサーシャの目がギラリと光った。


「新たな通貨は紙幣、つまり紙を使うつもりです」



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