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旅の始まり

「さて、これから私と貴方はパートナーという事になるわね、改めてよろしく」


 優しい笑顔で微笑みかけてくるサーシャにアルフレッドは少し戸惑っていた


何しろ自分はサーシャの国を滅ぼした張本人なのだ。


自分だったらそんな人物に対してこんな笑顔を向ける事ができるだろうか?



そんな思いを抱えつつそっけない態度で返事をした。

「ああ」


「じゃあまずは最初にお互いの呼び方ね、アルフレッドという名前は少し長いから


私は今後あなたの事をアルと呼ぶ事にするわ、それでいい?」


「好きにしろ、それで俺はお前の事をどう呼べばいい?」


「サーシャと呼んでくれればいいわ」


「わかった。で、ここからは現実的な話だ。


ここからケトラ砂漠を越えケルコフ共和国に行くとなると常人だと最低でも三日はかかる。


砂漠の日中は四十度を超える猛暑、夜は氷点下に近い極寒という厳しい環境だ、俺は平気だがお前は本当に大丈夫なのか?」


 そんな問いかけにサーシャは少し不機嫌な顔を見せた。


「お前じゃない私の事はサーシャと呼びなさい、今決めたばかりじゃないの‼」


「ああ、そうだったな。で、どうなのだ?ケトラ砂漠を越えるのは大の男でも過酷な所業だ


王宮暮らしのお前……じゃなくサーシャにできるのか?」


「できるわよ、これでも体力と根性には自信があるのよ」


 自信満々に答えるサーシャ。アルは少し懐疑的な目を向けるがそれ以上は突っ込まずに話を続ける。


「砂漠を超えるにはまず大事なのは〈水〉だ


食い物は最悪三日ぐらい食わなくとも死にはしないが水がないと普通の人間はすぐに死んでしまう。


水を作り出す魔法〈クリエイト・ウォーター〉が使えれば何の問題もないのだが俺は訳あって魔法が使えない。


サーシャは魔法を使えるのか?」


 お互いのことを確認するような質問にサーシャはゆっくりと首を振る。


「使えないわ、正直戦闘に関して私は全くの無力よ。私は頭脳担当だから」


 何故か誇らしげに語るサーシャをアルはやや冷めた目で見つめた。


「わかった、じゃあありったけの入れ物に水を詰め込んで持って行くぞ。お前らの乗ってきた馬車に何かあるか?」


 その質問にはロネオラが答えた。


「ああ、水を入れられるいくつかの袋と数人が入れるテントを形成するマジックアイテムは持っておる」


 まだアルの事をどこか納得できないロネオラは睨みつけるような表情で答える。


だがアルはそんな事を気にするそぶりも見せない。


「水や道具は俺が持ってやる、だがそれだけ威勢のいい啖呵を切ったのならば砂漠は自力で肥えてみせろ


お前が途中で倒れても俺は助けないからな。お前の信念とやらを見せてみろよ」


「お前じゃなくてサーシャ‼わかっているわよ、見てなさい」


 なぜか自信満々のサーシャであった。


 こうして【リストランテの悪魔】と呼ばれたアルフレッドと


【ベルドルアの宝石】と呼ばれた元ベルドルア王国第一王女サーシャの不思議な旅が始まったのである。



「また気温が上がって来た様だな、ここら一帯もすっかり砂漠化してしまって……


数年前まで何万人もの人が住んでいた都市とは思えないほどの荒廃ぶりじゃねーか」


 アルは吐き捨てるように言い放った。周りを見渡すと崩れかけた建物の残骸がポツリポツリと視界に入ってくる


それは廃墟というより消滅した都市の墓標にも見えた。


 アルはそんな建物の残骸を無感情の眼差しで一瞥した後、舌打ちして後ろを振り向いた。


「ちっ、このままじゃあ今日中にこのケトラ砂漠を越えられねーぞ……


おい、サーシャ。もっと早く歩けねーのか⁉︎そんなペースじゃあ日が暮れるぞ‼︎」


 呼びかけるように叱咤した先、アルフレッドから20mほど遅れてトボトボと歩くもう一人はもちろんサーシャである。


 砂漠横断の旅に出て三日目、初日こそ元気に進んでいたサーシャだったが二日目には疲労の色が見え始め


三日目となる今では両手で杖をつきながらバテバテの様子でヨロヨロとふらつきながら歩いていた。


「ハアハア……うるさいわね……ちゃんと……歩くわよ……」


 目一杯強がるサーシャだったが見るからに疲労困憊であり限界寸前といった様子が見てとれた。


「出発時の勢いはどうした?あとちゃんと水分補給はしておけよ


脱水症状で動けなくなっても知らねーぞ、お前が倒れても放っておくからな」


 持ってきた水は全て飲み干し、残っているのは首に掛けている水筒の水だけという状態である。


立ち止まってサーシャを待っていたアルはようやく追いついた彼女に容赦無く辛辣な言葉を投げかける。


「ハアハア、わかっているわよ……ちゃんと一人で歩けるわ……でももう水もないのよ」


 サーシャは首からかけている水筒を大袈裟に振って見せ、中身が空であることを伝える


「もう全部飲んじまったのかよ、仕方がねーな……ほらよ」


 アルは自分の首からかけている水筒を無造作にサーシャに投げ渡す。


びっくりした様子で受け取ったサーシャは驚きの視線を向けた。


「でもこれアルのじゃない、アンタはいいの?」


「ああ、俺は普通の人間とは違うからな、水分を一ヶ月ぐらい取らなくてもどうという事はない。


俺のことは心配いらないから遠慮せず飲め。ただしゆっくり飲めよ」


 サーシャは受け取った水筒の蓋を外し、水を飲もうとした時、その飲み口を見つめて一瞬躊躇していた。


その様子を見て怪訝そうな表情を浮かべるアル。


「どうしたサーシャ、飲まないのか?」


「いやその……これ、アルが口を付けたのよね?」


「ああ、俺の水筒だからな……もしかして感染症でも疑っているのか?


いっておくが俺の体には特殊な免疫が備わっているから、おかしな病原菌は死滅する様にできている、安心して飲め」


 淡々と説明するアルとは対照的になぜかドギマギしているサーシャ。


「べ、別にそんな事疑っていないわ……でもこれって関節キッスに……」


「何だそれは、新手の感染症か?四の五の言っていないでさっさと飲め、急ぐんだろ‼」


 躊躇しているサーシャに向かってアルは苛立ちまじりに言葉をかけた。


「わ、わかっているわよ、飲むわよ、飲めばいいんでしょう‼」


 そういってサーシャは水筒の水を一気に喉の奥に流し込んだ。


「馬鹿、一気に飲むなといっているだろうが‼今さっき言った事を忘れるとか、ホウホウ鳥かお前は⁉︎」


「失礼ね、私はこれでも頭はいい方よ、大体アルは……」


 誰もいない砂漠の真ん中で不毛な言い争いをする二人。


結局サーシャの疲労と残り距離を考えもう一晩砂漠での夜営をする事にした。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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