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勇者がヒモになったなら  作者: ひーらぎ
5章「勇者の使命・ヒモの役目・おれの人生」
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5章「勇者の使命・ヒモの役目・おれの人生」2

今作品は、C90「よろづ屋本舗」にて販売した作品となります。


「最低だなぁ……わたしって」

 アルトと別れてから無意識にただ歩き続け、いつの間にか彼と出会った中学校を正面に望むコンビニのベンチへ腰を下ろしていた。

 屋根があるからこれ以上濡れないはずなのに、今も何かへ濡らされてる気がしてキチンと顔を上げることができない。三角座りの形で膝に顔を隠し、上目で真っ暗な中学校の輪郭をぼうっと視界に収める。

「酷い事言っちゃったよね……。アルト怒ってるよね……嫌われちゃったよね……。アルトはアルトなのに……アルトは――痛っ」

 彼の顔を思い出した途端、頭が割れそうな痛みが走った。

 そして脳裏へ浮かぶのだ――ただ赤いだけで何を映しているのかわからない、景色なのか絵なのか、それとも別のものなのかもしれない何か。

 それを見るたび、なにか大事なことを忘れている気になってしまう。しかしそれが何なのか、

「わからないよ……」

 膝を強く抱いて、痛みへ耐えるように身体へ力を入れる。こんな時、いつもどうしてたかを考えてみる。

 最初に頭痛が起きたのは……彼がこっちに戻った日の夜だ。

 帰って来たのはアルトなのに、自分の知ってるアルトと重なってくれない。その瞬間を目の当たりにするたびに頭痛に苦しめられたのだ。記憶喪失なのだから当たり前なのに。それでも自分はアルトを疑ってしまった。でも、

「……わからないよ」

 こんな時、いつも辛い時に助けてくれたのは誰だっけ――アルト。

「あ……ると」

 喘ぐように漏らすと、

「おっと、危ない危ない。お姉さん、もしかしてひとり?」

「えっ……?」

 声へ頷くと、傘を差した誰かに手を取られた。ふらふら立ち上がる。

「喧嘩でもした?」

「あの……」

 助けに来てよ……アルト。

 内心でそう願うも、

「すごく寒いの……。お願い、助けて……」

 口から出た言葉は彼を裏切るものだった。

 雨はまだ続く。街を塗り潰すように。強く、強く――強く。

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