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神罰の子と呼ばれた少女は、王都で初めて居場所を知る  作者: バニースリッパ


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第21話 団長の知らなかった真実

野営用の簡易テントにクリスの身体が運び込まれる。出血が思ったより多く意識がない。


「クリス、しっかりしろ!」

「他は持ち場へ戻れ!周囲の警戒を怠るな!ガレス、治癒師が来るまで時間を稼げ!」

レオンハルトはテントの中に一人残り、クリスの血に染まった上着へ静かに手を伸ばした。


「すまん、少し失礼するぞ。これは…ひどい怪我だ。我慢しろよ…」

そして止血のため、上着に手をかけ傷をかばうように脱がせた。

その瞬間。


ーーー


「うわぁぁぁぁ〜!!!」

突然の雄叫びと共にテントの入口が勢いよく跳ね上がり、レオンハルトが転がるように飛び出してきた。


「団長!?」

「何事です!?」

「えっ魔獣がテントに――!?」

隊員たちが、剣を構えて集まってくる。

「うぉ!」

「敵襲か!?」


「待て、待て!」

ガレスが、間に割って入った。

「団長、落ち着いてください」


隊員たちがテントに向かおうとしているその時、レオンハルトが叫んだ。


「テントには、誰も入るな!絶対にだっ!!」


ただならぬ様子に、一同は立ち尽くして困惑していた。


「…で?」

ガレスは、静かにレオンハルトへ向き直った。

「団長、何がありましたか」


レオンハルトは顔面蒼白になって近くの木にもたれかかった。

「くっ……。く、クリスが……」

「クリスが?」

「…女だった」


沈黙が落ちた。数秒の間のあと、ガレスは深く長いため息をついた。

「はぁ…やっと、気づきましたか」


「――は?なんっ」

レオンハルトは目を見開いた。

「知って…いたのか?」

「面接の時から、うすうす、なんとなく」


ガレスは、眼鏡を押し上げながら続ける。

「様子からして絶対訳ありなのだろうと思っていましたので。宿舎を個室にしたり入浴の時間をずらして割り振ったのも私です。詮索しないのが礼儀かと」


レオンハルトは思わず絶句した。

「…お前、どこまで…なぜ、黙っていた!」

「団長が、気づいていないのが面白かったのでつい」

「ガレス!!」



隊員たちは、二人のやり取りをぽかんと見つめていた。

「…つまり、どういうこと?」

「新人、女だったのか?」

「え、ズボンストンって、女の子がやってたのか…」


「じゃあ俺…俺は…女の子にズボンストンされたのか!?」

ドゥーガルは、顔色を赤くしたり青くしたりしていた。


テントの中では、クリスがまだ意識を失ったまま横たわっていた。この後、治癒師が呼ばれ無事に怪我の手当てがなされた。そして、クリスが目を覚ました時に騎士団の空気は少しだけ変わっていることになる。


ーーー


意識がゆっくりと戻ってくる中で、クリスは重い瞼を開けた。目に映ったのはテントの天井だった。身体を起こそうとすると、脇腹の痛みに思わず顔をしかめる。そこへ「起きたか」という声が聞こえ、声のする方へ目を向けると、テントの入り口にレオンハルトが立っていた。けれど、なぜか目を合わせようとしない。


「……団長?」

「怪我の具合は、どうだ」

「大丈夫、です」

「そうか」


そこで会話は途切れてしまった。(何…この空気)


「あの」

「――っ」

呼びかけただけで、レオンハルトは大きく肩を揺らした。

「……」

「なんですか、何かあったんですか」

「い、いや。何でもない」

レオンハルトの視線は、明らかに泳ぎ、挙動不審だった。


ちょうどその時、テントの入り口にガレスが顔を出した。

「クリス、気がつきましたか」

「ガレスさん」

「よかったです」


ガレスはレオンハルトをちらりと見ると、小さく笑って言った。

「団長、そろそろちゃんと話したらどうです」

「お、おい!」


クリスは二人を交互に見やった。

「…一体何の話ですか、何があったんですか」


長く気まずい沈黙が流れたあと、レオンハルトは意を決したように口を開いた。

「クリス。その…手当ての際に、上着を脱がせる必要があって」


クリスは一瞬、状況が飲み込めなかったが、それも束の間のことでゆっくりと顔が青ざめていった。

「え…見た、んですか」

「見た、というか…不可抗力というか、命の危機に瀕していたからであって…」


「悲鳴を上げてテントから転げ出てきましたよ」

ガレスが、淡々と付け加えた。

「ガレス!!」



クリスは、両手で顔を覆った。

「終わった…」

「いや、その」

レオンハルトは、しどろもどろだった。

「責めているわけでは、ない。ただ、事情を聞かせてほしい」


クリスはしばらく黙っていたが、やがて観念したように息を吐いた。

「…女の子だと、危ないと思ったんです。一人で旅をするのも、騎士団に入るのも。だから、髪を切って、男の格好をして隠していました。すみませんでした」

そう言って、深く頭を下げた。


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