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神罰の子と呼ばれた少女は、王都で初めて居場所を知る  作者: バニースリッパ


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第18話 生活魔法とズボンストン


その頃、中庭では、クリスが手のひらの上のルゥの毛をとかしていた。


「きゅ〜♪」


「今日は頑張ったね」

ルゥの毛は、以前より少し白くなっている。

「泥も、少なくなってきたね」


そこへ、ドゥーガルが走ってやってきた。

「クリス!団長が呼んでる!何か、怒ってたぞ!」


クリスは驚きつつ、団長の執務室へ向かった。

執務室でレオンハルトは腕を組んで難しい顔をしている。


「クリス。お前に確認したいことがある…あれは、本当に生活魔法なのか?」

「はい」

「嘘をつけ」


クリスは首をかしげる。

「髪を編む魔法です。便利ですよ」

「何に」

「長い髪は、絡まりますから」

レオンハルトは眉間をほぐしながら口を開く

「人間の話をしているんじゃない。便利なのは認めるが、問題は、なぜその生活魔法で魔獣が倒せる」


そこでガレスが、口を開いた。

「他には、どのような生活魔法が?」


クリスは指を折りながら挙げていく。

「掃除。洗濯。乾燥。裁縫。料理。収納。着替え…」


レオンハルトの眉が、ぴくりと動く。

「着替え?」

「はい。服を、素早く着る魔法です」

「見せてみろ」

「ここでですか?」

「いや、やっぱりいい」


「あと、ズボンを下げる魔法も得意です」

「は…?」

「命名ズボンストンと呼んでいます」


部屋が静まり返った。

「…?なんだそれは?」

「ズボンストンです」

「もう一度、聞く」

「ズボンストンです」


ガレスは眼鏡を外して、目頭を押さえた。

(ネーミングセンスが、壊滅的ですね。)


その日の午後、訓練場に、レオンハルトが若手騎士たちを集めていた。

「今日は、模擬戦だ。クリス!好きにやれ」

「はい」


クリスの訓練相手はドゥーガルだった。

「手加減しろよ!」


開始の合図とともに、ドゥーガルが突っ込み、と同時にクリスは魔法を使った。


「ズボンストン」

ーシュッ

ドゥーガルのズボンが瞬時に足首まで下がる。


「え?」

「え?」

「えぇぇぇぇぇ!?」

ドサッ。見事に転ぶドゥーガル。

そして訓練場が爆笑に包まれた。


レオンハルトは天を仰いだ。

「ガレス。今のも、生活魔法か」

「本人は、そう主張しています」


クリスは、本気で不思議そうだった。

「便利ですよ?敵は転びますし、攻撃の隙を得られます」


「便利の方向性が、おかしい!」



その日の夕方、騎士団の食堂に声が響き渡った。


「聞いたよ!ズボンストンだって!ガハハ!!」


食堂中が吹き出す。ドゥーガルは、まだ恨めしそうだった。

「ズボンストン!パン取ってぇ〜!」

「俺、ズボンストンじゃねぇ!!」


食堂中が笑いに包まれ、ドゥーガルは頭を抱えた。

「なんでこんな、あだ名が定着してんだよ…」


クリスは、申し訳なさそうに小さくなる。

「…ごめんなさい」

ドゥーガルは笑って肩をすくめた。

「気にすんな。語呂がいいのが、悪い!」

その一言に、周りの騎士たちも頷く。

「そう!」

「語呂がいい!」

「呼びやすい!」


その様子を見ながら、クリスの口元が少しずつ緩んでいった。

「…ふふっ」

小さく、声が漏れる。


一瞬、食堂が静かになった。

「……!」

「クリスが、笑った!」

「おお!」

拍手と口笛が響く。


ドゥーガルが胸を張った。

「どうだ!俺の犠牲も、無駄じゃなかった!」


クリスは笑いながら頭を下げた。

「ありがとうございます」

「何が?」

「…こんなに笑ったの、久しぶりです」


その一言に、騎士たちは照れくさそうに頭をかいた。


レオンハルトは、少し離れた席からその光景を見つめていた。ガレスが隣で小さく笑う。

「団長、クリスに居場所ができましたね」

レオンハルトは短く頷いた。

(久しぶり、か。)

その言葉が、レオンハルトの中に、静かに残った。


一方その頃、王都の小さな家でじぃじは優雅に紅茶を飲んでいた。ドイルさんが、ティーポットを置きながら言う。

「今日も、お孫さんは元気だったそうですね。」


じぃじは目を細めた。

「そうか。それは、何よりじゃ」


ドイルさんは顎を上げ、鼻を上に向けながらにやりと笑う。

「今日は対戦相手のズボンを脱がせたそうですよ。騎士団で話題になっていたとベイクウェルの女将さんから聞きました」


「ぶふっ」


じぃじは思わず紅茶を吹いた。


「リリティ〜〜〜ネぇぇぇぇ〜〜〜!」

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