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神罰の子と呼ばれた少女は、王都で初めて居場所を知る  作者: バニースリッパ


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第12話 新しい居場所

広場が、静まり返った。

クリスティーナは息を切らしながら、できた…と思った。と、その時


「…お前はっ!!」


聞き覚えのある声が背後から響いた。驚きつつ振り返ると大股の急足でやってくる杖をついた老人が視界に入った。


「じぃじ……?」


ブレイバーンは、すごい形相でクリスティーナの前で立ち止まった。


「なっ……なな、何しとんじゃ、お前はっ!!一人で魔獣にっ、なんて無茶をーっ!!」


クリスティーナは目を丸くした。


「……なんで、ここに」

「たまたまじゃ!たまたま、王都におっただけじゃ!」


(絶対に嘘だ…)


クリスティーナは、早口で少し声の上ずったじぃじの顔をじっと見た。


「……ずっと、ついてきてたでしょ」


ブレイバーンは、しばらく黙っていたが、やがて観念したように大きなため息をついた。


「……バレとったか」

「バレバレ」

「ほっほっほ……」


老人は、力なく笑った。

「心配で、な。見送るだけのつもりが、気づけばずっと後ろにおったんじゃよ」


クリスティーナは何も言わなかったが、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。


「……しかし、たった一人でこれをやってのけるとはな。ようやった」


ブレイバーンは、簀巻きの魔獣を一瞥した。その一言に、クリスティーナは少しだけ照れくさそうに目を逸らした。


「……別に」

「いつもの口癖じゃな」


じぃじは、笑いながら杖で軽く地面を叩いた。


「よし、決めた」

「え?」

「うちに来い」


クリスティーナは目を瞬かせた。


「……いいの?」

「野宿より、ましじゃろ。それに一人で行かせるのは、やっぱり性に合わん」


じぃじは、少し照れくさそうに髭を撫でた。その言葉に、クリスティーナは小さく笑った。


「最初から、そう言えばよかったのに」

「うるさい。ワシにも、意地というものがある」


群衆の中から、ぱらぱらと拍手が起こった。少しした後、騎士団が駆けつけてきた。


「魔獣はどこだ!」


町人たちが、震える指で示す先の簀巻きの魔獣を見て、騎士たちは一瞬言葉を失った。


「……誰が、これを?」


町人全員が、一斉にクリスティーナを指差した。


「この子です!」


隊長格の騎士が、驚いた顔をしながらも深く頭を下げた。

「助かった。町を代表して、礼を言う!」


クリスティーナは、固まった。礼を言われた…魔法を使ってありがとうと言われた。


「……怒らないの?」

ぽつりと、少女が呟く。


騎士は、意味が分からず眉を寄せた。

「……なぜ?君のおかげで、誰も傷つかなかったんだ。感謝こそすれ、怒る理由などないだろう?」

「だって…魔法を使ってしまったから。」


そうぽつりをこぼしながらクリスティーナは、少し俯いた。その時、騎士の表情が変わった。驚き、戸惑い、そして、わずかな痛み。(この子は…魔法を使うことを、罪だと思っているのか)


ブレイバーンは、静かに目を細めていた。

(この子は、まだ、自分を罰しておる。魔法を使ったことを、詫びるように生きておる。じゃが……迷いなく、あの子を助けに走ったのう。その心が、ちゃんと残っておる。それだけで、今は、十分じゃ)


その後、二人は王都の賑わいを抜け、石畳の細い路地へ進む。そして、さらに奥へ、さらに曲がっていく。クリスは首を傾げた。


「じぃじ」

「なんじゃ」

「だんだん、家が古くなってません?」

「落ち着くじゃろ」


着いた先は、小さな石造りの古めかしい家だった。蔦が壁を覆い、小さな庭にはハーブが好き放題に育っている。煙突は少し傾き、屋根には鳥が止まっていた。


「ここじゃ」

「……。じぃじ」

「なんじゃ」

「王国一の大魔法師のお家とは、思えません」

「掃除が楽そうじゃろ」

「全然、楽そうじゃありません」


扉を開けると、ギィィ……と軋んだ音がした。


「ただいま。ドイル、お客さんじゃ!」


じぃじは、家の奥へ向かって声を張った。しばらくして、ニコニコとしたおおらかそうな女性が家の奥から姿を現した。


「あらあら、まぁ。可愛らしいお坊ちゃんだわ」


じぃじは、クリスへ向き直った。


「こちらはミセス・ドイル。ワシの世話を焼いてくれとる人じゃ。今日から、お主の世話も焼いてくれる。」


すると、ドイルさんがくすりと笑って言葉を挟んだ。


「『焼いてくれる』じゃありません。ちゃんとご飯も食べてもらいますからね」


ドイルさんは、にこりと笑って一礼した。

「初めまして、クリスさん。この家のことは、何でも聞いてくださいね」


それから、ふとじぃじの方へ向き直り、じろりと睨めつけた。

「……で、ブレイバーンさんはちゃんと生きてたのね」


「毎回、その確認は必要か」

「必要です。あなた、放っておくと無理して三日は平気で寝込んでますからね」

「大袈裟な」

「先月は、丸々二日も地下室に閉じこもって、ドアを叩いても、うんとも言わなかったんですから。死んだかと思いましたよ」


じぃじは、気まずそうに視線を逸らした。


「……没頭しておった」

「でしょうね」


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