『偽証のコンパイルと、深淵の容疑者ども』
翌朝、神界中央創造局は、昨日とは比較にならないほどの重々しい厳戒態勢に包まれていた。
回廊には武装した調査員たちが行き交い、オフィス内には鋭い緊張感が張り詰めている。
それもそのはず、例の「別の開発室の事件」の最重要容疑者である神2名が、昨夜から忽然と姿を消したのだ。神界のあらゆるアクセスログを解析しても、彼らの行方は一切掴めず、上層部は完全にパニックに陥っていた。
(フッ……ログが残っているはずがない。この私の完璧な論理の檻が、彼らのシグナルを外部から完全に遮断しているのだからな……)
ソウゾウはいつも通り、太い眉をキリッと上げた暑苦しいほどの爽やかフェイスでデスクに向かいながら、脳内では劇画調の冷徹な笑みを浮かべていた。彼らが今、解体待ちの「ゴミ箱世界」の底で這いずり回っているなど、創造局の誰も知る由がない。
その時、ソウゾウのデスクの前に、地響きのような足音が止まった。
見上げると、そこには眉間に深い皺を刻み、鋭い眼光を放つベテランの調査員が立っていた。その背後には、例のいかつい査察官の姿もある。
調査員は、ソウゾウの魂まで見透かすような恐ろしい顔で睨みつけ、ドスの利いた声で尋問を開始した。
「ソウゾウ君。君は昨夜も遅くまで残業していたな。例の容疑者2名の行方について、何か些細なことでも目撃しなかったか……?」
オフィスの全神経がソウゾウに集中する。息を呑むような沈黙。
ソウゾウの脳内では、一瞬にして超高速の演算が走った。
(クッ……! ここで彼らが私の『おしゃべり植物世界』に侵入してきたと正直に言えば、容疑者は捕まる。だが、同時に私の大切に剪定した秘密の箱庭も、規律違反の違法建築として一発で消滅する……! それだけは、私のクリエイターとしてのプライドが絶対に許さん……っ!)
ソウゾウの額から、劇画調のドロッとした大粒の冷や汗が流れ落ちる。彼は最悪の結末を回避するため、全神経を集中させてポーカーフェイスを維持し、眼鏡をクイと指で押し上げた。
そして、完璧に計算された「エレガントなアドリブ供述」を口にした。
「そういえば何か……深夜、私のパーソナル感知システムに、一瞬だけ微弱なノイズが走りましてね。……変な二人組が、どこかのデリート対象の世界(滅んだ世界)に入るのを感知……した気がします」
「何だと……!?」
調査員の目が限界まで見開かれた。
「奴ら、証拠隠滅と神界からの逃亡のために、自らデリート世界へ身を隠したというのか! 盲点だった、ログに残らないわけだ! おい、すぐに解体グループへ連絡し、該当するデリート世界をすべて包囲しろ!」
「はっ!」
調査員たちは「大金星の目撃情報だ!」と色めき立ち、慌ただしくオフィスから走り去っていった。ソウゾウの完璧な誘導により、容疑者たちは無事に(?)ゴミ箱の中で本格的に捜索されることになり、ソウゾウの秘密の世界は見事に守られたのである。
嵐のような捜査陣が去り、再び静寂が戻ったデスク。
ソウゾウは椅子の背もたれに深く体重を預け、激しい呼吸を整えながら、劇画顔でポツリと呟いた。
「フッ……嘘は言っていない。彼らは確かにデリート世界に『入った(私が落とした)』のだからな。……やれやれ、私の有能さが、またしても神界の捜査を正しい方向へ導いてしまったな(冷や汗)」
自分の完全犯罪にうっとりと悦に浸りながらも、あまりの緊張感にやはり冷や汗が止まらないソウゾウであった。




