『聖域の侵入者と、断罪の強制パッチ』
神界中央創造局、午前3時。
ソウゾウは深夜のオフィスで、4つ目の奇抜な世界『空しかない世界』の空気抵抗データを、流れるような手際でエレガントに計算していた。
その刹那、画面の隅で、第1話で創り上げた『おしゃべり植物の世界』の観測モニターが真っ赤に点滅した。緊急アラート。未知の質量データが、世界の内部に直接発生している。
「む……? 我が至高の箱庭に、異物が混入しただと……!?」
ソウゾウが劇画調の鋭い眼光でモニターを凝視すると、信じられない光景が映し出されていた。
どうやって侵入ルートを見つけたのか、見知らぬ神2名が、植物世界の地表に直接その肉体を持って降臨していたのである。
「おい、この星マジで植物しかいねえぞ! ウケる!」
「しかもこいつら喋るぞ! ほら、火をつけたらどうなるかなぁ!?」
降臨した不届きな神どもは、ソウゾウの愛する植物たちを足で踏みにじり、おもちゃのように扱い、好き勝手に世界を荒らし始めていた。画面の向こうでは、おしゃべりな植物たちが「痛いよー!」「火はダメだよー!」と涙を流して悲鳴を上げている。
その瞬間、ソウゾウの逆鱗が完全に弾け飛んだ。
「ふざけるな……! 監視グループの目を盗み、私が血と汗を流して種を植え、剪定し、ようやく開花させた奇跡の生態系だぞ……! それを、そんな汚い足で踏みにじり、おもちゃのように扱いおって……!」
ソウゾウの顔面が、怒りで凄まじい劇画調の闇に染まる。全身の筋肉が怒髪天を突くほどの怒りで膨れ上がり、彼の肌から凄まじい熱気の蒸気が立ち上った。神界の大事件には目もくれなかった男が、自身の芸術を汚されたことで、真の「破壊神」のごとき覇気を放っている。
「私の……私のパッション(情熱)への冒涜は、万死に値する……っ!!」
ソウゾウの指先が、キーボードを破壊せんばかりの猛烈な速度でカウンタープログラムを打ち込み始めた。タイピング音はまるで機関銃の掃射のごとくオフィスに轟く。肉体的な殴り込みではない。超一流の技術による、冷徹でエレガントな神のハッキング断罪。
植物世界では、暴れていた神2名が突感、異変に気づいて足を止めていた。
「……ん? なんだ、足元の地面の座標がバグって――」
ソウゾウは血管の浮き出た凄まじい形相で、キーボードのエンターキーを、全霊の力で「ッターン!」と叩きつけた。
「我が論理の鉄槌(強制パッチ)を喰らうがいい! 貴様らのような有象無象には、奈落の底すら生ぬるい……! 滅びゆくゴミ溜め(デリート対象の世界)で、永久に這いずり回るがいい! ――消え失せろ!!」
次の瞬間、植物世界の地表がパカッと割れ、神2名の足元に暗黒の次元孔が物理的に出現した。
「うわああああっ!?」という絶叫を残し、不届きな神2名は、解体グループが処分を待つだけの「滅んだ暗黒の世界」へと文字通りストーンと奈落へ突き落とされた。そして、二度と他の世界へ転移できないよう、彼らのアカウント権限ごと完全にロックされたのである。
世界から侵入者の気配が消え去った。
ソウゾウはフッといつもの冷徹な劇画顔に戻ると、乱れたネクタイをエレガントに整え、眼鏡をクイと上げてボソリと呟いた。
「ふん……。ざまーみろ」
画面の中では、助かった植物たちが「ソウゾウ様ありがとうー!」「すごかったー!」とガヤガヤと大騒ぎで歓喜している。
ソウゾウはそれを見て、いつものように大真面目な顔で、冷や汗を流しながら呟いた。
「静かにしろ。……神界の上層部どもにバレたら、本当に終わりだからな」




