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5.おっさん、ギルドで塩対応される

次の更新は、5月8日金曜日の予定です。

 オルエドの町は、入場税の銀貨1枚を支払うとあっさりと入ることが出来た。

 宿屋には、オルエドの町に同行してくれた犬獣人の商人、コルドも泊まることが出来た。

 春陽は、コルドの部屋を訪ねるとオルエドの情報収集の打ち合わせをする。

 オルエドは人口1万人の中規模都市である。教会や冒険者ギルドもある。

 春陽は、宿を出ると冒険者ギルドに向かった。

 時間は18時ぐらいだろうか、受付嬢は帰り支度をはじめている。

 「あのギルドに登録したいのですが」

 「え?」

 春陽より少し若い受付嬢は、不信感にあふれた目で春陽を見る。

 20歳を過ぎてから、冒険者に登録する人間は、この世界では少ないのであろう。

 受付嬢は、それでも愛想笑いを浮かべると春陽に説明をしてくれた。地味な顔だが、美人である。ルッキズムは悪である。

 春陽が暮らす日本の政府では、そう広報することになっていた。そして、春陽は政府広報官も兼職をしていた。霞が関の官公庁には、美人官僚が多い。 

 顔採用をしたのではないかと思うことさえあった。しかし、そのことを口にすれば社会的に抹殺されるので、春陽は容姿を褒めることはない。

 だが、この世界の住人は、種族を問わずイケメン、美女が多かった。コルドも端正な顔つきの犬獣人であった。受付嬢も地味な顔をしているが、整った顔立ちをしている。

 春陽は、美人だなあとじっと顔を見つめる。受付嬢は、春陽の視線を避けるように冷たい口調で言った。

 「ギルドの登録料は銀貨2枚になります。よろしいですか?」

 春陽は黙って、受付嬢に銀貨2枚を支払った。

 道中で支払ったお金から、計算すると銀貨1枚が1千円。金貨1枚が2、3万円。銅貨1枚が百円前後のはずである。

 異世界の通貨価値を判断するのは難しい。この世界では、食べ物は安い。しかし、剣や家具、工具は数十万円以上する。

 受付嬢は、魔王城で使っている測定器と同じ魔水晶に触ってくださいと言った。

 「ああ、体力的に戦士や冒険者は止めた方が良いと思います」

 地味顔美人の受付嬢が冷ややかに春陽に言った。

 「魔力値も、低いですね」

 受付嬢は、春陽を小馬鹿にしたように苦笑いする。

 魔王城の魔水晶と異なる点は、身分証となるギルドカードに直接、数値を記入していく。

 体力や魔力値を元に、適正な職業を選ぶのだという。

 「あまり適正な職業はないと思いますが・・・」

 地味顔美人の受付嬢は、春陽を見下すような顔で見ている。

 春陽の体力や魔力値はこの世界の平均値より低いらしい。

 

 受付嬢がギルドカードを魔水晶から取り外そうとすると、魔水晶が記入を続ける。

 最後の職業欄は、登録者本人が決めるのだが、魔水晶が春陽の職業を映し出した。

 「職業・大賢者、備考・能力値測定不能」

 「ギルドマスター、大変です」

 魔水晶に表示された最後の1文を見た、地味顔美人な受付嬢は、2階のギルドマスター室にかけて上がっていく、疾走していく。

 「やはり、こうなったか・・・」

 春陽は、自分に大賢者の資質があることをリズウェルから教えられていた。

 すぐにギルドマスターが下りて来て、春陽は、2階のギルドマスターの執務室に連れて行かれた。

 ギルドマスターは、春陽の顔をじっくりと眺める。

 40代のギルドマスターもイケオジで、イケメンボイス、イケボの渋い声で話しかけてくる。

 春陽は、映画の世界に入り込んだエキストラのような感覚に陥ってしまうなとギルドマスターの説明を聞いていた。

 「春陽か、お前さんは、貴族か王族の血が入っているのか?」

 リズウェルは、念のためにと春陽に魔法をかけてくれた。春陽の顔そのものを変えることは出来ないが、金髪、碧眼になった。金髪碧眼になっても、春陽のおっさん臭さは抜けていない

 「黒髪、黒い眼はまずかろう。転生者の特性じゃからな。大賢者の適性があれば、勇者に祀り上げられてしまう」

 リズウェルがそう言うと、春陽は苦笑した。

 この世界の人間は、彫りの深い顔をしている。日本人の顔は目立つ。目立つというより、日本人は勇者の血統らしく、勇者と政略結婚した王族や上流貴族に先祖返りした東洋系の平たい顔の人間が生まれることが稀にあるという。

 「名前は本条春陽か、まるで勇者のような名前だな・・・」

 「偽名は、ギルドカードを作る時にバレる。まあ、お主なら名前の改ざんぐらいなら出来るかもしれんがな」というリズウェルの助言で、春陽は、本名を名乗ることにした。

 「まさか、勇者じゃないよな」

 「違いますよ。田舎の村で暮らしていましたから、町の生活がよくわからないのです」

 「大賢者なら、王宮で働く役人になれるが・・・」

 「絶対に嫌ですね、そんなブラックな仕事」

 春陽は、『ブラックな』という言葉をことさらに強調した。

 「そうか、王都の教会で神職に就けば、大神官になれる。それくらいだな、春陽の適職は」

 ギルドは、職業組合である。商業ギルドに加盟すれば、どの国でも商売ができる。冒険者ギルドの組合員は、どの国でも冒険者として依頼を受けることが出来る。パスポートがない世界では、身分証の替りになる。

 「冒険者ランクは、大賢者でもEランクからスタートだぞ」

 ギルドマスターがそう言った。

 

 春陽は、ギルドを出るとコルドが待っている宿に向かった。

 リズウェルも魔王城で春陽の適性を調べた。だから、春陽が賢者の適性があることはわかっていた。だが、魔力値が低いと表示されたので、魔法を学ばなかったのだ。


 魔王城の魔水晶は、簡易版である。人間世界にあるギルドの魔水晶は貴重な魔道具である。

 ギルドの魔水晶は、春陽の状態は、魔力値が低いのではなく、測定できないほど膨大であると表示した。

 リズウェルは魔王。もしも、春陽が、賢者の適正持ちでなければ、春陽の魔力が魔王以上に膨大であることを見抜けたであろう。だが、春陽は賢者と魔王、両極端な相反する魔法、つまり、この世界の全ての魔法を自由に使える適性を持っていた。そのため、神聖魔法と魔法が打ち消し合うことで、春陽の魔力値を低く感知してしまったのである。

 

 春陽の職業が大賢者だと言っても、魔法を覚える素質があるという意味である。

 

 春陽が、魔法が使えるわけではない。では、この世界ではどうやって魔法を覚えるのか?平たく言えば、お金で魔法を買うのだ。

 

 高額な魔法書を買って覚えたり、魔法使いや神官に授業料を払って魔法を教えてもらうのだ。地球も異世界も、「お金が全て」ということらしい。


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