11.ツンデレ・ロリババア・・・陥落する
「ただいま」
「待ちわびたぞ」
美少女ロリ魔王のリズウェルが嬉しそうに、春陽を出迎える。
春陽は、オルエドでの冒険をかいつまんで話す。
「春陽は、大賢者として人間の世界で暮らした方が幸せになれるかもしれんぞ」
寂しそうな顔をして、リズウェルが言った。
「いや、召喚魔法を解明して、地球に戻りますよ」
リズウェルは少し安堵した顔をした。
「ツンデレ、ロリババア」
小さな声で春陽が呟くとリズウェルが真顔で睨みつける。
「聞こえておるぞ」
春陽の人間世界での聞き取り調査や収集した資料から、リズウェルが言っていることは嘘とは言えないと春陽は判断をした。
まず、春陽を呼び出した召喚魔法の研究をすることにした。
「ただ飯ぐらいよ。お主の処遇なのじゃが魔王領に滞在するのなら宰相をやってみる気はないか?」
唐突に、リズウェルが春陽をリクルートする。
「そこまで人材不足なんですか・・・」
魔族達の中では、人間であり、大賢者であり、リズウェルの友人であり魔王の適性がある春陽とどう接していいのかわからないという戸惑いの声があった。
「宰相と言うのも・・・じゃあ、リズウェルの相談役でいいですよ」
「うむ、相談役じゃな」
春陽の執務室として占拠されている図書室にやって来たリズウェルに春陽はそう答えた。
「春陽殿を相談役に就任させるのでございますか?」
宰相補佐が聞き返す。
「うむ、相談役としてお披露目をしようと思う」
「しかし、魔王様。魔王様の相談役と言うことになりますと、春陽殿は摂政殿下となりますが、よろしいのですか?」
「摂政でよいではないか?ダメなのか」
いつものように、春陽は、朝食を取ると図書室に向かう。
しかし、その日は、
「春陽様のお披露目がございますので」
宰相補佐に、リズウェルの私室に連れて行かれる。
春陽は、召喚当初、来賓用の豪奢な部屋を与えられた。
「日本人は、小さな家で生活していますから」
春陽は、官僚になってから、築五十年の鉄筋コンクリートの二LDKの官舎に住んでいた。
ホテルのスイートルームのような豪奢な部屋は落ち着かない。
図書室を私室のかわりにしていたから、寝室は小さな部屋にして貰った。それでも魔王城の下級幹部用の私室である。トイレや浴室まで部屋の中にあった。
魔王城には、魔王の私室以外に、四天王や宰相達の部屋もある。
四天王や宰相は空位であったから、大量の部屋が余っていた。
食事は、毎回、同じ侍女が持ってきてくれた。不思議なことに、リズウェルは露出の多い衣装を着ているが、侍女達はロングスカート、どちらかというと控えめな清楚な格好をしていた。以前、図書室に食事を持ってきた侍女は、露出が多かった気がするが・・・。
「うちは、偉くなるほど、脱いでいくシステムじゃ」
美少女ロリ魔王のリズウェルが真顔で言ったが、宰相補佐は普通の貴族の服を着ている。
食事を運んでくれる侍女に、名前を聞くと、
「秘密でございます」
と言われた。セクハラになると怖いので、それから侍女と会話をするのをやめた。
宰相補佐に連れられ、リズウェルの私室には入った。そこには、十名の侍女が控えていた。
全員、髪の毛の色が違うが、清楚なメイド服を着ていて、胸はたいそう、ご立派であった。
「誘惑されるなよ。人間のお主には、清楚に見えるかもしれんが、侍女達は全員、サキュバスじゃぞ。サキュバス、つまりは淫魔じゃ」
「は?」
「サキュバスは、戦闘に不向きなものが多い。警備兵や近衛は様々な種族のものがいるが、侍女はサキュバスを雇うようにしているのじゃ。あ、エッチな接待は期待するな。春陽を誘惑したものは死刑じゃからな」
春陽は呆れる。
春陽は、リズウェルの私室を見回す。
「ところで、お披露目と言うのは?」
「相談役就任のお披露目じゃ」
確かに、ずっと図書室に引きこもっているのも申し訳ない。魔族達が、春陽のことを嫌悪しないのであれば、リズウェルや宰相補佐以外の魔族の話も聞きたかった。
「春陽様、それではお着替えを」
春陽は、リズウェルの衣装部屋に侍女達に連れて行かれる。
「あの、男性の使用人はいないのですか?」
「インキュバス、男性の淫魔族もおりますが、そちらがお好みですか?」
インキュバスは淫魔族の男性である。サキュバスは淫魔族の女性である。
戦闘力が低く、接待向きの人材ということで魔王城に淫魔族は保護されているらしい。
「サキュバスでいいです」
侍女達が持ってきた衣装は、豪勢な衣装である。
「王族みたいな衣装ですね」
春陽が眼鏡をかけた地味目の侍女に質問した。
「先代魔王様の衣装と同じものを春陽様のサイズで仕立て直したものでございます」
「え?」
春陽は、侍女達に着せ替え人形にされた。
そして王族の衣装を身にまとい、装飾が艶やかなドレスを着たリズウェルのところに連れて行かれる。
「いつものハイレグの痴女服は?」
「痴女服ではない。あれが、魔王の正装じゃ」
初代魔王は、力でのし上がり魔族を統治した。
裸で戦えるのが魔王ということらしい。
歴代魔王の正装も、男性はパンツ一丁だという・・・。
弱い魔族は武装し、弱いから着飾るのだ。真の魔王は、パンツ一丁で武装した魔族と戦えるということらしい。脳筋魔王・・・。
リズウェルは、痴女服や露出狂じゃなかったのか・・・。
春陽が先代魔王の儀礼服に着替え終わると、魔王の玉座に案内される。
玉座には数百人ほどの着飾った魔族が集まっていた。
リズウェルが玉座に座ると、魔族達はひれ伏す。
「皆に紹介する。春陽である。魔王召喚で呼び出した人間だが、魔王の適性がある。余の相談役をぜひ、やりたいというので摂政に任じることにした」
静まり返った玉座の間で、リズウェルは立ち上がる。
リズウェルの横に連れて行かれた春陽はおずおずと手を挙げる。
「あの、摂政は大変そうなので勘弁してくれませんか」
玉座の間に集まった、魔族の重鎮達が驚愕の表情を浮かべる。
「異論があるなら、力で証明せよ」
リズウェルは、衣服を脱ぎ去るといつもの水着姿になった。
春陽と戦う気らしい。
オルエドから帰る時に貰った魔法書の中に、魔王消滅や対魔魔法の本があった。『魔王消滅』の魔法書は、一般には流通していないが中流以上の貴族達の家には必ず保管されていた。
タイトルを見た春陽が、ラビスに尋ねる。
「これ、貰って帰っても大丈夫な魔法書ですか?」
「ああ、魔王消滅は貴族や神官には最もポピュラーな魔法だ。ただ、使えるのが魔法使い系の勇者や魔王討伐に加わった賢者だけなのだ。だから、貴族なら誰でも覚える魔法だが使えるものはいない」
魔王城に帰ってから試してみると、春陽の手から淡い光が出た。魔力を込めると光が強くなる。
春陽はリズウェルに警告する。
「多分、私は魔王消滅魔法を使えます。手加減に失敗したら、リズウェルを殺すことになります。降伏してくれませんか?」
リズウェルは、にやりと笑った。
「使えるのなら、遠慮なく使うがよい」
春陽はリズウェルに右手をかざす。
「我は、神の使徒。邪悪なるものをかなり手加減して死なない程度に殲滅せよ。魔王消滅魔法、忖度のアレスマギナ」
淡い光がリズウェルを包み込むとリズウェルの水着が消滅した。生まれたままの姿でリズウェルは春陽の前にいる。魔族達は全員が震えながら、ひれ伏している。魔王のヌードを見た魔族はリズウェルに消滅させられる。
顔を紅潮させたリズウェルは、目が虚ろになる。
真っ裸のリズウェルは、春陽に抱きつくと宣言する。
「余と結婚しよう」
「侍女のサキュバス、リズウェルに衣服を」
侍女達が素早くリズウェルを囲み、肉の壁を作る。他の侍女がリズウェルの服を持ってくるとリズウェルに服を着せようとするが、春陽に抱きついて離れない。
「リズウェル。服を着てください」
目が虚ろなまま、「はい」とリズウェルは春陽に従う。
洗脳魔法だ。
魔王消滅の効力を落とすと強力な魔王限定の洗脳魔法になるらしい。
春陽が人間の世界で学んだのは、人間用の回復魔法や状態異常を治療する魔法、攻撃魔法や生活魔法である。
魔族と敵対しているこの世界の神の魔法を使えば、リズウェルを傷つけることになる。
春陽は、宰相補佐に、玉座の間の魔族達を解散させると、魔導士達をリズウェルの執務室に呼び出した。
「魔族相手の状態異常の治癒魔法を教えてください。リズウェルを元に戻さないと」
「春陽様。申し上げにくいことですが、現魔王のリズウェル陛下を倒した場合、春陽様が新魔王に即位するのが魔王領の習いでございます」
魔導士達が口々に呟く。
「新魔王春陽陛下、万歳」
「その脳筋ルールは廃止でいいですよ。リズウェルの状態異常を治したら、今、万歳した魔導士、粛清されますよ。宰相補佐も万歳しない。すぐにリズウェルを治療しないと・・・」




