10.おっさん、残党処理をする
明け方、紫色の点をすべて拘束すると、オルエドの領主館に向かった。
いつもは、ラビスも街中の宿に身分を隠して宿泊しているらしい。
「ガリア、なぜここにきた?」
領主館にラビスの警備兵が集結する。
二十代後半の超絶イケメンの青年を見て、ラビスが驚いた。
ガリア伯爵は、リース辺境伯領の最高司令官である。三千人の領兵をひきいるガリアは、ラビスの本領であるリース辺境伯領に常駐しているはずだった。しかし、こっそり隠れて毎回、ラビスが冒険と称して本領を離れる時には警備兵を指揮して警護をさせていたのである。
ガリア伯爵は、王都の近衛師団の副隊長だった。しかし、ラビスの幼馴染であったから、近衛師団長への昇進を断り、ラビスが辺境伯に任命されるとリース辺境伯領の守備隊の責任者になったのである。伯爵でもあるガリアは、領土を持っていた。領土を持っていたが、代官に任せ、リース辺境伯領に赴任していた。辺境伯は、国境を守備する大貴族である。ロベリア王国では、辺境伯は、公爵と同格であったし、ラビスは王族である。
武勇にも優れた王族のラビスは、王族が通常任命される公爵ではなくロベリアの要所を守護するリース辺境伯に任じられたのである。
ラビスは、ロベリア王国でも有数の戦士であった。そこで、A級冒険者としてもお忍びで、ロベリア王国内を自由に往来することが出来た。王族のラビスは無許可で王国外に冒険に出れば、国王への反逆罪で拘束される。
ラビスもそれくらいの常識は持ち合わせていたので、ロベリア王国外には冒険にいかなかった。
ガリアは、春陽にラビスが助けられたことを知ると、土下座をして床に頭をこすりつけてお礼を言った。
「そういうのはなしにしましょう。ラビスから莫大な報酬を貰ってチャラにしましょう」
春陽は爽やかに言った。
「あと、私は本当に勇者ではありません。転生者かどうかは黙秘します。大賢者であるのはギルドにバレていますから、大賢者です」
春陽は、大賢者であることはギルドにもバレているから隠すのは止めた。
「暗殺事件の拘束者の拷問は止めてくださいね、無駄なんで」
春陽は、まだ自白魔法を使えない。しかし、覚えようと思えば魔法書で学ぶことが出来る。
春陽がそう言うとラビスとガリアが顔を見合わせる。
「実は、自白魔法は禁書なんだ。ロベリアの宮廷魔法長か教皇になれば魔法書を読むことが出来るが・・・。春陽を王に推薦してもよいが。宮廷魔法長になるか?」
ラビスの説明によると人の心を読むことが出来る自白魔法は、危険すぎるのだという。
かつては、多くの国で王族同士が自白魔法を学んでいたが、猜疑心の強い王が自分に少しでも敵意を持っている家臣や王族を皆殺しにしたらしい。それから、自白魔法はこの世界では、禁書魔法となったという。
春陽の使った探知魔法のように、やましい気持ちになれば探知できる魔法があるらしいが、自己暗示をかければ探知するのは難しいらしい。
「人の気持なんか読めない方がいいかもしれませんね」
自白魔法は、人の気持ちがわかる。そのため、自白魔法を覚えた教皇や宮廷魔法長が極度の人間不信に陥り、現在、自白魔法を覚える資格があっても誰も覚えていないという。ロベリア王国はもちろん、世界中どこにも自白魔法が使えるものはいないという。
自白魔法は、探知魔法の応用らしい。
「探知魔法が使える春陽なら、魔法書を読めば、人の心を読めるようになると思うが・・・・」
ラビスが言葉を濁す。
「私は、他人の批判に耐えられるほど、メンタルが強くありませんよ」
春陽も自白魔法を覚えることは留保することにした。
「ラビス暗殺の動機は、人道的に探ってください。普通に考えれば、王位継承争いでしょうね。あと、処刑や大逆罪の八つ裂きのような処刑法を私は嫌います。人道的な処罰を望みます」
「王法があるが、ロベリア王国ぐらいなら滅ぼせそうな大賢者春陽のいうことだ、尊重しよう」
春陽はラビスにお礼を伝える。
「王都に行ってみたかったんですが、王位継承争いや政争の場合、私もラビスも命を狙われますからね」
「そうだな」
ガリアからは、しばらくリース辺境伯領にとどまって欲しいと懇願されたが、春陽はオルエドの町を出ることにした。
ラビスの暗殺騒動で、B級冒険者昇進の依頼達成どころではなくなってしまったが、王族であるラビスの護衛に成功した功績を冒険者ギルドにリース辺境伯としてラビスが報告をしてくれた。そのため、春陽は、無事、A級冒険者ランク冒険者に昇進することが出来た。
獣人族のコルドが魔王領から戻ってくると、春陽はラビスからお礼の魔法書を数十冊、受け取り、魔王領に帰ることにした。
また、ラビスが春陽の保証人になってくれたので、ロベリア王国内では無税で領内を移動することが出来るようになった。ロベリア王国と敵対していない国であれば、ロベリア王国の外交官特権を使い、無税で移動できるようにギルドカードに登録してくれたのである。




