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野咲ミクは担任として同行したものの
会場であるホテル大太楼との交渉や
黒式団との会談のセッティングは
全て霧山ユリが手配していた。
「私はどうして連れてこられた?」
「黒式団を信用できるか見て。」
ネット上では素性が全く掴めず
直訳であるMIBやそれに類する組織の検索も
創作や噂の域を出ない。
黒式団はおそらくそれをこそ利用して名乗っている。
コードネームに至っては
ウルトラマンシリーズの星人の名。
「交渉じゃなくて依頼って事にするけど」
「お金が絡みそうだったら口挟んで。」
張子の虎ではなく大人として対応しろと。
「寄付の提案してきたら断ればいいのか?」
「そのへんを見極めてって話。」
判ったような判らないような話だが
生徒に言われるまでもなく
温泉街に現れた奇妙な集団は気になっていた。
役場での歴史資料閲覧、
ホテルや周辺店舗での聞き込み。
八手ダムの見学。
集団が二手に分かれて行動している事も把握している。
気になるのは
小中学生の夏休みの課題に対して
1ヵ月もホテルを抑え調査する理由だ。
ユリの言う通り
「どうやら金持ちの道楽っぽい」が正しいのか。
観光名所のない寂れた温泉街で
ただ余暇を楽しんでいるだけ?
席に着いたのはリーダーのワイアール、
縦に大きなザラブ、
横に大きなサイモン。
若造のナックル。
日本人女性メイツ。
「女性二人は買い物に出かけた」
「彼女達には私が伝える。」
「依頼の内容を聞かせて。」
翻訳された音声はイヤホンではなく
タブレットから直接流している。
聞かれて困る話でもないからとユリが説明はを始める。
隣町で行われる催事にて
クラスメイトがピザを提供することになった。
「世界中から人が来るようで」
「多国籍集団の黒式団の皆さんに」
「アレルギーとか宗教的に大丈夫でしたら。」
「じっ、試食していただけるとありがたい。」
日本人女性のメイツが吹き出してしまうが
他のメンバーは翻訳アプリでの音声なので
どうやら「じっ」は通じていない。
「見返りは?」
リーダーのワイアールが尋ねる。
「感想を聞かせてください。」
「それだけ?」
「それが目的ですから。」
「本番はいつだね?」
「秋分の日。」
「シューブンとは?」
「その日を境に夜が長くなる。」
「催事、がどのように翻訳されているのかわかりませんが」
「festivalではなく、Enshrineが近いかな。」
ワイアール以外のメンバーが議論を始める。
各人はイヤホンをしているものの
テーブルに置かれたタブレットを通じてそれが聞こえる。
概ねは「地元の住民との交流は必要」と協力的。
「費用は?」
ナックルの質問には担任野咲ミクが答える。
「学校教育の一環なので無料。ただし」
「大量に用意はできない」
「まず間違いなく満足はしないだろうから」
「我々の作るピザとは別に食事を用意する事をお勧めします。」
それを聞いたサイモンが
「どのようなピザを作る予定ですか?」
「種類。トッピング。大きさを知りたい。」
リーダーのワイアールが呆れるように笑う。
同意するように大きなザラブが窘める。
「子供の食事ですよ。味見程度に考えましょう。」
霧山ユリが答える。
「1つは催事に提供するマルゲリータ。」
「もう1つはその日の野菜か肉をトッピングするつもり。」
「大きさは多分これくらい。」
ユリはスマホを取り出し画像を見せる
夏休みにホクトが焼いたピザ。
少なくとも野咲ミクはそう思っていた。
「なるほど。」
サイモンは呟き、隣のザラブに目配せする。
ザラブがスマホを覗き込み、リーダーのワイアールをつつく。
普段なら、彼はピザのサイズにはこだわらない。
サイモンが呼んだならきっと「君に任せる」と言っただろう。
ザラブが呼んだ事でワイアールはスマホを覗いた。
「うん。いいね。」
ワイアールがユリを見て微笑んだ。
その間、担任野咲ミクは
最年少ナックルに口説かれニヤニヤしていた。
境鳥村立中学および小学校
野咲ミク 中学担任
相原リョウコ 小学担任
霧山ユリ 中2
藤アラシ 中2
藤タイスケ 中2
星ホクト 中1
杜人イズミ 中1
霧山アン 小6
藤サクラ 小5
星ミナミ 小4
天城マヤ 小2
射手ヒロ 小1
黒式団
ワイアール 男性 40代 アラブ系
サイモン 男性 30代
ビブロス 女性 愛称ミリー
ザラブ
ベル 女性 20代 海洋学者
メイツ 女性 日本人
ナックル 男性 若造




