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境鳥村立中学および小学校

野咲ミク 中学担任

相原リョウコ 小学担任

霧山ユリ 中2

藤アラシ 中2

藤タイスケ 中2

星ホクト 中1

霧山アン 小6

藤サクラ 小5

星ミナミ 小4

天城マヤ 小2

射手ヒロ 小1


発表作品制作中霧山ユリがぼそりと呟く。

「今年ってイベント多くない?」

「あー」と思い出を掘り起こそうと顔を挙げる野咲ミク。

「去年は忙しかったから。」

「まともに授業始まったの二学期になってからじゃない?」

「それは言い過ぎ。でも実際かなり遅れたな。」

「その分イベント無くなった感じ?」

「まあそうかもな。」

霧山ユリと野咲ミクの会話の違和感。

決定的だったのは

「学校変わって無かったら何かイベントあった?」

「1年生だけの大きな行事はないよ。体育祭や文化祭はあるだろうけど。」

「この人数で体育祭やってもね。」

ホクトが質問する前に妹ミナミが

「学校変わったって何?」

「私らこの学校に通うの去年からだから。」

霧山ユリ、霧山アン、藤アラシ、藤ダイスケ、藤サクラ。

この5名は一昨年まで

「「川向こうの学校まで毎日バスで通ってた。」

昨年天城マヤが1年生になるタイミングで

「6名以上になってこの学校の復活が認可された。」

県だか村だかの決まりらしく

それまで境鳥村立小中学校はしばらく「休校」扱だった。

「それで成立していないのか。」

模造紙に下書きをするホクトが誰にでもなく口にする。

「成立って?」

ユリが尋ねる。

「この学校が組織として成立していないなって。」

「意味が判らん。」

藤アラシも手を止める。

「校長も教頭もいない。養護教諭も事務員も。」

「担任がそれぞれ1名ずつ。」

ホクトはチラリと野咲ミクに目を向ける。

担任は天文台の研究員でもある。

「2人だけで学校運営とかどこのブラック。」


模造紙には境鳥村の地図。

一枚は横向山を頂点に南西部。

八手湖から境鳥川。道路を挟んで温泉街。

もう一枚は南東にある牧場や農園。

それぞれに施設と住宅。

「それで、対策対象の怪獣は何処から現れる。」

野咲ミクはふざけて、からかって言っているのではない。

と、子供達は感じた。

が、真意は少し異なる。

子供達は「霧山ユリのおふざけに本気で付き合っている」だけだと思っている。

ホクトもそう感じたらかこそ口を挟まずに

2人のやりとりを眺めていた。

「何となくの予想?めぼし?はあるけどその前に。」

霧山ユリはボケっとしているホクトに目を向ける。


その日の午後。

学校に星ホクト、ミナミの祖父星タツゴロウが訪れる。

霧山ユリからの依頼でホクトが事情を伝えると

「今日の午後なら時間が取れる。」

そのまま一緒に学校に戻る。

黒板を背に教壇に立ち

直接床に座る子供達を見下ろし

「聞いたらがっかりするぞ」と切り出す。


ダイダラボッチ、デイダラボッチ、ダイタロウホウシ、

「まあ呼び方はどうでもいい。」

日本のあちこちにある巨人の伝承の一つ。

そいつが山や湖を作り、巨大なムカデやらダンゴムシを退治した。

「的な話を期待したのだろうが」

実際はもっと単純で浅はかだ。

「先ずは山の名。」

川向うの者が見て

「人が横を向いているようだから横向山となった。」

「そして温泉の名。」

川向こうの山の信仰の象徴として烏天狗がいる。

「まあ実際天狗がいたかどうかは知らん。」

ホクトはこの村に越してきてすぐ霧山ユリに連れられ神社近くの公園に行った日を思い出す。

神社までの階段の登り口には烏天狗の石像があった。

「烏天狗は人とそれ以外の境の者。翼がある事から境鳥とも呼ばれる。

「その天狗たちが滋養に浸かる温泉として境鳥温泉となった。」

「多分、これが事実なのだろう。」

それから申し訳なさそうに、

「昔ホクトに聞かせたと言われたが」

「私はそれを全く覚えていない。」

がっかりとする子供達を前に星タツゴロウは笑い、続ける。

「だがこれが事実と断定する事は誰にも出来な。」

「この村の歴史について残された文献は一つも存在しない。」

昭和か、その前か

「役場が全焼してな。書類書物全て燃え尽きた。」

ホテルの中に役場があるのも

その場しのぎの措置がそのまま続いているからだ。

霧山ユリはホクトが「祖父から聞いた」事は聞いていたので

その内容の確認をするつもりで星タツゴロウを呼んだ。

ホクトが聞いた話とは何だったのだろう。

ユリがそれをタツゴロウに尋ねると

「うーん。どうだったかな。」

何とも頼りない返答である。

子供相手にふざけただけなのか?

「歴史が欲しいなら自分達で創ったらどうだ?」

「資料は全て消失した。証拠はない。」

歴史の捏造。神話の創造。

「トールキンになれ。」


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