035
境鳥村立中学および小学校
野咲ミク 中学担任
相原リョウコ 小学担任
霧山ユリ 中2
藤アラシ 中2
藤タイスケ 中2
星ホクト 中1
霧山アン 小6
藤サクラ 小5
星ミナミ 小4
天城マヤ 小2
射手ヒロ 小1
当日は全員が登校。
「家で宿題しようとしたのに追い出された。」
「宿題しようとしていたのに。宿題をっ。」
藤兄弟が力説するが担任はスルー。
「宿題するなら学校でやれって。」
妹サクラが母の言葉を伝えると
「家でやるから宿題なんでしょうが。」
藤アラシの憤慨に
「アラシ、夏休みの宿題なんてものはない。」
担任野咲ミクははっきり言い切る。
「山のような問題集があるでしょうが。」
アラシは鞄からどさりと問題集を取り出す。
「それは夏休み中の課題だ。」
「プリントにも書いてある。」
学年別夏休み課題一覧。
「宿題、ではないからどこでやってもいい。」
「宿題ではない、だと?まっ、まさかこうなる事を見越してっ。」
「フ、まだまだだな。」
藤アラシと野咲ミクが小芝居的な何かをしているが
二人以外は既に別の話を始めている。
「テングランドってAED置いてあるの」
「ありました。昨日聞いたら場所教えてくれました。」
「しっかり教わってくるようにって。」
AEDは霧山荘にもホテルシエルシャトーにも湯の星にも設置。
「でもエピペンはありませんでした。」
「あれは処方箋必要だから。」
「でも学校にはあるでしょ?」
「ないけどあるよ。」
「なにそれどゆこと。」
「アレルギーある生徒が在籍していないと置けないって言われたけど」
「何かあってからじゃあ遅いからちょっと手をまわした。」
相原リョウコが「内緒ね」と口止め。
「飲食店とか宿泊施設にも設置させてほしいよね。」
そんな話をしていると教室のドアが開き
「おはようございます。消防署の方から来ました。」
消防隊員の恰好、制服男性1名と活動服の男女2名。
制服の男性からの自己紹介。
「指揮隊長ヤマオカです。」
次いで活動服の男性
「救助隊タケナカです。」
最後に女性
「救命隊マナベです。よろしくお願いします。」
子供達も挨拶を返すが隊員の持ってきた大きなバッグが気になった。
真っ黒で、小学生くらいなら入れそうな大きなバッグ。
「ヒロ入れそうじゃん。」
霧山アンの台詞に
「あの中身と入れ替わって連れて行かれるのか?」
「今日からあの中身がヒロと呼ばれる少年となり」
「そしてヒロは消防科学開発研究所で被験者と」
霧山ユリがいつまでも続けるので
「あんな姉でごめん。」
「AEDは自動体外式除細動器。」
「Automated External Defibrillatorの略で」
「すごく簡単に言うと心臓止まったんじゃね?って人に電気ショックする装置。」
「エピペンはアレルギー反応でた人に打つ注射です。」
マナヘ隊員は説明を終えると
ついに黒いバッグに手を伸ばす。
チャックを開け隙間から見えたのは人の顔。
「人だっ。逃げろヒロっ。」
霧山ユリが真顔で叫ぶのでヒロも本気で逃げようとする。
妹アンが手を取り
「あんな姉で本当にごめん。」
中身はもちろん人形。上半身、下半身を取り出し結合。
「ヒロよりちょっとデカイか?」
「こちらはリトルスミス。」
「今日はスミスさんにに協力していただき」
「救命措置を実践しましょう。」
「人が倒れています。最初に何をするのか判りますね?」
ハイっと手を挙げたのは相原リョウコ。
マナベ隊員は困惑しながら無視して
「えっと、他の皆さんも判りますね?」
藤サクラが挙手しながら
「救急車を呼びます。」
「正解です。ではお手本を実演します。」
救助隊タケナカ隊員が一歩前に出る。
同時に藤アラシがボソリと
「コント、救命講習。」
タケナカ隊員による熱演が始まる。
「あっ。人が倒れている。」
ブフっと噴出したのは野咲ミク。
「スミマセン。いったん止めてください。」
「アラシ。ちょっと来い。」
アラシが返事をする前に野咲ミクはアラシの襟首を掴み教室の外へと連れ出す。
何が起こっているのか判らない消防隊員の皆さんに
相原リョウコが何やら言い訳をしている。
3分ほどで野咲ミクと顔面蒼白のアラシが戻る。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です。再開してください。」
野咲ミクは何事もなかったかのように言い放つ。
その隣で藤アラシは小型犬のように震えている。




