ティータイム再び2
「流されて許してしまったって、後悔している?」
「それは……」
「……」
嘆いていた二人が言葉を詰まらせる。
思案の顔になる銀と赤の魔女に、緑の魔女はにっこりと笑った。
「後悔が悪いって言っているんじゃないわ。でも、一度受け入れたのなら、ちゃんと考えて答えを出してあげて。あの子達は私達と時間の流れが違うから、いつでも必死で真剣なの」
柔らかな笑顔で、緑の魔女はカップの縁を撫でる。
彼女の大きな目は、慈しみに満ちていた。
「人間の命は短いわ。だからってあの子たちが私たちより下だなんて、そんなことはないの。若すぎるとか、まだ早いとか、そんなことないわ。彼らなりに丁度いい時期なのよ。それに、私達が育てたからって、何でも理解できるわけでもないわ。育て方だってたくさんあるし、家族として見ていても親子だったり、姉弟だったり、立場はたくさんあるじゃない?」
「立場……」
そう言われて、赤の魔女は自分が従者にとってどんな立場だったのかを考えた。
赤の魔女は、いつだって拾った子供を里子に出していた。拾った子供はいつかいなくなるものと考えて、親と言うより宿り木のような気持ちだったかもしれない。
枝に止まる鳥だと思っていた子がまさかの猫で、枝に止まる鳥全てを排除されたが、赤の魔女だって枝で休む猫を可愛く思っている。
宿り木を檻にするくらいには。
一方銀の魔女は。
「……わたくし、教師のつもりだったのよ……」
「だから、イケナイ女教師なんだって」
「意味が分からないわ!?」
「どうせいつもみたいに「イケナイ子ね」「躾が必要ね」「いい子にはご褒美を上げるわ」とか言ってたんだろ。しかもちょっとラフな普段着で、ボディタッチ多めに接してたんだろ。もうそれが答えだって」
「黒の……あなた見ていたの……?」
「従者の性癖をねじ曲げた責任取ってやれよ」
しかも無意識に自分好みに育てていたのだから、収まるべき場所に収まるのが平和というものだ。
黒の魔女は混沌が好きだが、面倒ごとは嫌いだ。何かあるごとにこうして拠点で魔女集会を起こされては適わない。
是非纏まってくれ。
「そう言うあなたはどうなの、黒の! あなたの従者も随分あなたに執心のようだけれど」
「豆腐メンタルだからねぇな」
「即答……」
バッサリ斬り捨てた黒の魔女に、食ってかかった銀の魔女は思わず沈黙した。
「まあまあ。黒の魔女ちゃんも、言っている割にあの子のことちゃんと考えて接してるじゃない?」
「黒のが……?」
「考えて……?」
「おいアンタらの中のあたしどうなってんの?」
「黒の魔女ちゃん、とってもよく考えているわよ?」
ちなみに従者の魔女に対する感情をわかった上で、黒の魔女は従者を連れて歓楽街に出かけたことがある。
丁度年齢的に性に感心を持つ時期に、どういうものか学んでおけと蹴り出した。
甲高い悲鳴を上げて半裸で逃げる筋肉だるまの姿は今でも覚えている。
「うーん、覚悟が決まっているって言うのかしら。黒の魔女ちゃんは拾った時からちゃんと、自分と相手の違いをいい意味でわかって接してきたのね。それってすごいことよ」
緑の魔女の言葉に、銀と赤の魔女は胡乱げな視線を向けた。
そんな視線を受け流し、黒の魔女はティースプーンを揺らした。
「そーいう緑の魔女は、従者の人間に対してどーなんだ?」
「あら! 私はいつだって真剣に、あの子と向き合っているわ? ただ、私もまだまだだからあの子を本当の意味で甘えさせてあげられないの! うふふ、頑張らなくちゃ!」
明るく笑う緑の魔女は、全く下心を感じぬ健全さだった。
魔女なのに日だまりみたいな彼女に、黒の魔女は大きく肩を竦める。
「メンタルがどうとかよく言われるけどよ、緑の魔女が最強じゃね?」
「やあね! 純粋な力じゃ私が一番弱いわ~」
「……わたくしたちの中で、一番若いのは緑の魔女だったわね……」
「そういえばそうだったわ……」
年少の魔女に諭された銀と赤の魔女は、情けなさに思わず肩を落とした。
魔女達の大雑把な年齢順。
赤の魔女 < 黒の魔女 < 銀の魔女 < 緑の魔女
みんな長く生きているのでほぼ誤差。




