第93話 『砂に沈んだ都』
灼熱の太陽が照りつける砂漠の都、アル=ザハール。
ユークたちは市場の喧騒を抜け、王宮へと続くメインストリートを歩いていた。
「やっぱり、活気のある町だな」
ユークは周囲を見渡しながら呟く。通りには商人や旅人、遊牧民の一団が行き交い、異国情緒に満ちている。
だが、活気とは裏腹に、町の人々の表情にはどこか不安の色が混じっていた。
「……やっぱり何かおかしいわね」
セリナが市場の端に目を向ける。そこでは、何人もの人々が集まり、不安げな声を上げていた。
「最近、地下の水が濁り始めた……」
「また誰かが行方不明になったらしい……」
「やっぱり、遺跡の影響じゃないのか?」
ユークたちは、話を聞くために近づいた。
「遺跡の影響って、どういうことですか?」
セリナが尋ねると、一人の老人が振り返った。
「……あなたたち、旅人か?」
市場の老人が、ユークたちを見上げる。
「まあ、そんなところね」
セリナが答えると、老人はじろりと彼女を見つめた。
「……貴族か?」
セリナはピクリと反応する。豪奢なドレスこそ着ていないが、彼女の気品ある佇まいは隠しきれるものではなかった。
「……まあ、そんなところよ」
すると、老人は鼻を鳴らす。
「ここじゃ、“貴族の権威”なんざ通じねぇぞ。この町は、交易と実力がすべてだ」
「……ふふ、面白い町ね」
セリナは苦笑した。
「……そうかもしれんな。だが、この街には妙な噂もあるんじゃ。旅人なら知らないだろうか。この町の地下には古代の都市が眠っているんだ」
「古代の都市?」
ユークが眉をひそめる。
「ああ。千年以上も前、この地には『ナスラム』という巨大な都があったと伝えられている。しかし、ある日突然、砂に沈み、消えてしまった……」
「それが、今になって関係あるのですか?」
セリナが尋ねると、老人は深く頷いた。
「数か月前から、地下で奇妙な振動が起き始めた。そして、最近になって地下に通じる“隠された入口”が見つかったのさ」
「……なるほどな」
ユークは顎に手を当て、考え込む。
封印が解かれた影響で、何かが動き出している……?
「その地下遺跡、どこにあるんだ?」
ユークが尋ねると、老人は市場の外れに視線を向けた。
「西の外れに古い井戸がある。今は使われてないが、そこが崩れて……地下への道が開いたそうだ」
「ふむ……」
ユークはセリナを見た。
「……行ってみる価値はありそうね」
セリナの意見を聞きつつ、ユークはゆっくりと頷いた。
「よし、“沈んだ都”の調査に向かうか」
ユークたちは、千年前の遺跡が眠る地下へと足を踏み入れることを決めた——。
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