第90話 『封印、解放』
光の柱が天を衝く。
ユークの手が封印の中心に触れた瞬間、学都ルミナス全体に響き渡るような低い振動が起こった。
目の前に広がる巨大な魔法陣は、まるで意思を持つかのようにユークを拒絶しようとする。
しかし——
「……今さら、意地を張るなよ」
ユークは静かに呟いた。
——バキィィン!!
破砕音とともに、封印の魔法陣が砕け散る。
長い間この街を縛りつけていた呪縛が、今、完全に消え去った。
ーーゴゴゴゴ……!!
世界が揺れ、街を覆っていた見えない鎖がほどけていく。
暗く沈んでいた空が一瞬で晴れ渡り、温かな陽光がルミナスの街全体を優しく包み込んだ。
風が流れ、鳥のさえずりが聞こえる。
ユークはゆっくりと手を下ろし、封印があった場所を見つめた。
そこには、もう何もない。ただ静かに、澄み切った空気だけが広がっていた。
(終わった……本当に)
思わず、肩の力が抜ける。
今まで張り詰めていた緊張が、一気に解ける感覚だった。
気づけば、心臓の鼓動がやけに速い。
自分は、やり遂げたのだ。
勇者パーティーを追放され、補助役と見下され、“いらない”と切り捨てられた自分が——
世界を揺るがす封印を、たった一人で解いた。
「……ははっ」
ユークの唇が、自然と緩む。
長く感じた道のりだった。
だが、この瞬間のために、全てがあったのだと思えるほどの達成感があった。
セリナが駆け寄ってくる。
「ユーク……! 本当に、ありがとう……!」
その目には涙が浮かんでいた。
ユークは照れくさそうに頭を掻きながら、肩をすくめる。
「……ま、当然のことをしただけさ」
遠くで街の鐘が鳴る。
学都ルミナスは、ようやく自由を手に入れた。
グランが、驚嘆したように呟く。
「……お前は、歴史を動かしたのかもしれんな」
ユークは小さく息を吐く。
——だが。
何かが、目覚めた気がした。
封印が解かれたことで、新たな運命の歯車が動き始めた。
「……さて、ここからが本番か」
ユークは静かに空を見上げる。
学都ルミナス編、完。
——だが、彼の旅はまだ続く。
読んでいただきありがとうごさいます!
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