第81話 封印を解く資格
刻印の書のページが、淡い光を帯びながらゆっくりと開かれていく。
ユークはその光を浴びながら、流れるように浮かび上がる古代文字を目で追った。
「……やっぱり、俺にしか読めないみたいだな」
ユークが呟くと、隣で覗き込んでいたセリナが困惑した表情を浮かべる。
「私には、ただの古い記号にしか見えないわ……。それなのに、あなたには読めるの?」
「ああ、はっきりと読める」
ユークは刻印の書に触れながら頷いた。
そこに記されていたのは——
「封印を解く者は、適応する者でなければならない」
ユークの指がわずかに震える。
(……やはり、そういうことか)
適応する者。
——それは、「環境や魔力、そして世界の法則にすら適応できる者」。
そしてユークは、自身のスキル《万能適応》によって、その条件を満たしていた。
「……封印を解く方法、分かった?」
セリナが不安げに尋ねる。
ユークは深く息を吐き、静かに口を開いた。
「封印を解くためには、俺自身が“刻印の書”と同調する必要がある」
「……同調?」
「この書に刻まれた魔力と俺の魔力を重ね、封印の“適応者”として認められることで、学都を覆う結界を解除できる」
「でも……それって、危険なんじゃない?」
セリナの声には明らかな不安が滲んでいた。
ユークは一瞬考えた後、率直に答えた。
「……分からない」
正直なところ、どんな影響があるのかは未知数だった。
だが、刻印の書の文字が浮かび上がり、ユークに語りかけるように揺らめいている。
「でも、やるしかない」
ユークは決意を固め、刻印の書の中央へ手を伸ばした。
バチッ——!
瞬間、書物全体が眩い光を放つ。
「っ……!!」
ユークの意識が深い闇に沈み込んでいった。
***
気がつくと、ユークは真っ白な空間に立っていた。
重力すら感じさせない無機質な空間——そこには、一人の人物がいた。
「お前が——適応する者か」
声が響く。
目の前に立っていたのは、ユークと瓜二つの男だった。
「……誰だ?」
ユークが警戒しながら剣を構える。
「お前自身だ。……いや、“適応する者としての理”と言った方が正しいか」
もう一人のユークは、淡々とした口調でそう告げた。
「理……?」
男は静かに歩み寄る。
「刻印の書は試す。お前が本当に適応する者として、この力を受け入れる資格があるのか」
「試す……?」
その瞬間、もう一人のユークが剣を抜いた。
「証明しろ。お前が、この世界に適応し続ける存在であることを——」
ユークの前に、もう一人の自分が立ちはだかる。
「……そういうことか」
ユークは剣を握り直し、ゆっくりと構えた。
「なら——受けて立つ」
次の瞬間、光が炸裂し、二人のユークが交錯する。
試練が、始まった——。
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