第74話 終焉のローブ、始まりの光
霧が晴れた学都の広場。
ローブの男との激闘を終え、ユークとセリナはしばし静かに立ち尽くしていた。
朝日がゆっくりと顔を出し、ふたりの影を長く伸ばしていく。
「……終わった、のよね?」
セリナが不安げに呟く。
ローブの男は確かに消えた。だが、ユークの胸には拭えない違和感が残っていた。
「……ああ。でも、気を抜くな」
ユークは剣を収めながら、周囲を見渡す。
戦いの余波で広場の石畳には焦げ跡が残り、空気にはまだ魔力の残滓が漂っている。
「……妙だな」
ユークは低く呟く。
「何が?」
「これだけの戦いがあったのに、誰も騒ぎ立てていない」
本来ならば、近隣の住民や警備の騎士が駆けつけていてもおかしくない。
だが、今のところそんな気配はない。
「まるで……誰にも気づかれないように仕組まれていたみたいだ」
ユークの言葉に、セリナも表情を曇らせた。
「そんなこと……本当にできるの?」
「可能性はある。ローブの男の力ならな」
ユークは拳を握る。
(あいつは、最後に何かを言い残していた……)
「その”選択”が……君の未来を決める……」
その言葉の意味を考えようとした瞬間——
「——ッ!?」
ユークの胸に鋭い悪寒が走る。
「どうしたの?」
セリナが心配そうに覗き込む。
「……分からない。だが、嫌な気配がする」
ユークは周囲を見渡す。
「セリナ、念のためもう一度魔力を探ってくれ」
「分かったわ」
セリナは目を閉じ、静かに魔力を集中させる。
すると——
「……っ! これ……」
セリナが驚きに目を見開いた。
「何か見つけたのか?」
「うん。でも……信じられない。まるで、学都全体に……何かの”封印”がかけられているみたい」
「封印……?」
「ええ。私たちが戦っていた間に、外側から何かが……」
セリナの顔が青ざめる。
「この学都は、今”閉じ込められている”のかもしれない……!」
ユークの目が鋭く光る。
(ローブの男の目的は……これだったのか!?)
ただの奇襲ではない。
ユークと戦いながらも、奴は別の”何か”を仕掛けていた——。
「……急ごう、セリナ」
ユークは迷いなく歩き出す。
「どこへ?」
「学長のところだ。もしこの学都全体に異変が起きているなら、学長が何かを知っているはずだ」
「分かった!」
セリナも頷き、ユークの後を追う。
学都の静寂の中、二人の足音だけが響いていた。
——ローブの男が消えた今、次に待ち受けるのは”学都そのもの”に仕掛けられた異変。
ユークたちはそれに気づいたばかりだった。
(このままでは……まずい)
ユークは拳を握りしめる。
ローブの男との戦いは”終わった”。
だが、それは決して”すべての終わり”ではなかった。
むしろ、これは——新たな戦いの始まりだった。
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