第68話 追放の代償
王都の宿屋の一室。
「……これで、また負けたな」
レオナールはベッドに腰掛け、天井を見上げた。
室内には重い沈黙が広がっている。
テーブルの上には、砕けた剣の残骸が置かれていた。
「どうすれば……どうすればいいんだ……」
レオナールの隣に座っていたリーナが、顔を伏せる。
「私たちだけじゃ、限界なのよ……」
「そんなこと……わかってる」
レオナールがこめかみを押さえる。
「でも……それを認めたら、俺たちは終わりだ」
「……終わり、か」
壁に寄りかかっていたガルフが低く呟いた。
「実際、もう終わってるだろ」
「おい、ガルフ!」
「事実を言ってるだけだ」
ガルフは不機嫌そうにレオナールを睨む。
「ユークを追放してから、俺たちはまともに勝てた試しがない。依頼は失敗続き、ギルドの評価もEランクにまで落ちた。これでも『終わってない』って言えるのか?」
「それでも……!」
「それでも、何だ? 『勇者パーティー』だから諦めない? そんなプライドのために、どれだけの犠牲を出せば気が済むんだ」
「……!」
レオナールは拳を握りしめた。
「だったらどうすればいい!?」
「それを考えるのが、お前の役目だろ」
「でも……ユークはいない」
「だから、終わってるって言ってるんだ」
ガルフは苛立たしげにため息をつく。
「ユークがいれば、こうはならなかった……」
「……」
沈黙が落ちる。
「ユークを追放したのは……」
エレナが震える声で呟いた。
「私たち……だよね……」
彼女は両手を胸に当て、涙をこぼす。
「ユークがいた時は、私たちは強かった……怖いものなんてなかった。でも、ユークがいなくなった途端、全部崩れた……」
「それでも俺たちは……ユークを見下していた」
リーナが呟く。
「ユークがいなくても大丈夫……そう思ってた。でも……」
「でも、実際は——」
「私たちは……ユークに頼っていたんだ」
「ユークが、私たちの支えだった」
「なのに……」
「ユークを……追放してしまった」
重い沈黙が広がる。
「取り返しがつかない……」
エレナがすすり泣く。
「でも……まだ遅くないかもしれない」
レオナールが顔を上げる。
「ユークを……迎えに行こう」
「迎えに……?」
「今さら何を言ってる」
ガルフが睨みつける。
「一度捨てた人間が、素直に戻ってくると思うのか?」
「でも……でも、ユークがいなきゃ、俺たちは——」
「だったら、自分たちの力でどうにかしろ!」
「……!」
「ユークを追放したのはお前たちだ。その結果に向き合え」
「でも……!」
「もしユークに助けを求めるなら、今度こそ俺たちは完全に終わるぞ」
「……そんなこと……!」
「俺たちは『勇者パーティー』だったんだろう?」
「だったら、自分たちで立ち上がるしかない」
「それができないなら、俺たちはもう終わってる」
レオナールは拳を握りしめたまま、震えていた。
「……俺は……」
「どうするかは、お前が決めろ」
ガルフが冷たく言い放つ。
「だが……俺は今さらユークには頼らない」
「……」
「頼っていいのは、最初から全てを受け入れてくれた者だけだ」
ガルフは背を向けて、部屋を出て行った。
リーナとエレナが、レオナールを不安そうに見つめる。
「レオナール……」
「……俺は……」
レオナールは剣を見つめ、苦しそうに呟く。
「俺は……どうすればいい……?」
答えは、どこにもなかった。
続きはスピンオフでご覧ください
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