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第66話 『迫る決断』

 《王家の聖剣》を前にして、ユーク・アーデルは静かに剣を構えていた。

 目の前に立つのはフードの男。長く黒いフードが顔を覆っており、その表情は見えない。


「ユーク・アーデル……ここで引くつもりはないのか?」


 フードの男の声は低く、響くようだった。


「当然だ。これを手にしなければ——塔を救うことはできない」


 ユークは手にした剣をわずかに持ち上げ、フードの男を見据える。


「お前が何者かは知らないが……王家の聖剣は俺たちが必要としている」


「確かに、聖剣はお前たちに必要なものだろう」

 フードの男が静かに言った。


「だが、その剣を手にした時、お前は選択を迫られることになる」


「選択……?」


「《王家の聖剣》には、かつて黒の書を封印した力が宿っている。

 だがその力を引き出すためには、代償が必要だ」


「代償?」


「命、だ」


 フードの男が静かに言った。


「剣を振るうためには、持ち主の生命力を捧げる必要がある。

 もしこの剣を使えば——お前の命は尽きることになる」


「……っ」


 ユークはわずかに息を呑む。


「ユーク……」


 セリナがユークの腕を掴んだ。

 その瞳は不安に揺れていた。


「やめて……そんな代償を払う必要なんてないわ」


「だが、これを使わなければ——塔は崩壊する」


「だからといって、ユークが犠牲になる必要は——!」


「セリナ……」


 ユークはセリナの手をそっと握った。


「……俺は、何があっても塔を救う」


「でも……」


「ユーク・アーデル」


 フードの男が静かに言った。


「もし剣を手にするなら、覚悟を決めろ。それができないなら……ここで退け」


「……」


 ユークの瞳が鋭くなる。


「お前は……何者だ?」


「今はまだ、その答えを知る必要はない」


 フードの男がゆっくりと身を翻した。


「だが、お前がその剣を手にした時——再び相まみえることになるだろう」


「待て!」


 ユークが前に踏み出した瞬間、フードの男の姿が淡い光と共に消えた。


「消えた……?」


「一体……何者なの……?」


 セリナが不安げに呟く。


「……わからない」


 ユークは剣を握る手に力を込めた。


「だが、一つだけわかったことがある」


「何?」


「この剣を手にすれば……必ず代償を支払うことになる」


「ユーク……」


 セリナがそっとユークの腕に触れる。


「あなたが命を捨てるようなことになったら……絶対に止めるわ」


「セリナ……」


 ユークは小さく笑った。


「……大丈夫だ。俺は簡単には死なない」


 ユークが剣を腰に収める。


「それに……まだやることが残っている」


「《黒の書》をどうにかしなきゃいけない……」


「ああ」


 ユークは真っ直ぐ前を見据える。


「俺は……必ず塔を救う」


 セリナが静かにユークの手を握った。


「……一緒に、ね」


「もちろんだ」


 ユークが頷いた時、窓の外に広がる夜空に、光が瞬いた。

 それはまるで、新たな戦いの始まりを告げるようだった。


 ——ユークの決意と共に、運命の歯車が再び回り始める。

読んでいただきありがとうごさいます!

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