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第58話 『黒の書の真実』

 ユークとセリナは、第三の試練を終えた扉の奥へと進んでいた。


 薄暗い廊下を抜けると、そこには広大な書庫が広がっていた。


 壁一面に積み上げられた古書。無数の本が魔力を帯び、薄く光を放っている。


「ここが……《アルカナの塔》の最深部……?」


 ユークが静かに歩を進める。


 その時——


「よく来たな」


 低く響く声。


 ユークとセリナが振り返ると、そこに現れたのは——


「……ラザルフ?」


 《アルカナの塔》の副長官、ラザルフが静かに立っていた。


「お前が試練を突破するとは……正直、驚いたよ」


「これで“黒の書”について教えてもらえるんだろうな?」


 ユークが剣を下ろしたまま、冷静な視線をラザルフに向ける。


「もちろんだ。だが——」


 ラザルフが指を鳴らすと、背後の空間に巨大な魔法陣が浮かび上がった。


「……?」


 ユークが警戒を強めると、魔法陣から漆黒の本がゆっくりと現れた。


「まさか……」


「これが——黒の書だ」


 ラザルフが手を伸ばし、その本を掴む。


 表紙には、奇妙な魔法文字と紋様が刻まれている。


「存在しないと言われていた黒の書が……本当に……?」


 セリナが驚きの声を漏らす。


「これがどういう代物か……説明してもらおうか」


 ユークが鋭く問いかける。


「黒の書——それは“死を操る力”を持つ禁断の魔導書だ」


「死を操る……?」


「そうだ」


 ラザルフは静かに続ける。


「この書には“死の法則”が記されている。

 死んだ者を蘇らせ、魂を繋ぎ止め、死そのものを支配する力が……な」


「そんなことが可能なのか……?」


「可能だ」


 ラザルフの瞳が鋭く光る。


「だが、黒の書の力を完全に解放するには、“鍵”が必要だ」


「鍵……?」


「そう——そして、その鍵とは——」


 ラザルフがユークを見つめる。


「お前だ」


「……俺?」


「“万能適応”——オールマイティ。

 その力こそが、黒の書を開くための“鍵”になる」


「……なるほど」


 ユークは驚くこともなく、静かに剣を下ろす。


「黒の書を解放する? そんなことをして、何が目的だ」


「それはもちろん——“死を超越した存在”となるためだ」


 ラザルフが手をかざすと、黒の書が黒い光を放つ。


「お前がその鍵になるのなら——

 その力を引き出すまでだ!」


 ——ゴゴゴゴゴ……ッ!!


 黒の書が暗黒の魔力を放ち、空間が歪む。


「ユーク、来る!」


「分かってる」


 ——ズォォォッ!!


 黒の書から無数の黒い触手のような影が飛び出し、ユークに襲いかかる。


「……チッ!」


 ユークが剣を振るい、影を切り払う。


 ——ギィィィン!!


「《ヒール!》」


 セリナが即座に回復魔法を唱える。


「サポートに徹するわ!」


「頼む!」


「《プロテクション》!」


 ユークの体を守る防御魔法が展開される。


「行くぞ……!!」


 ユークが一気にラザルフに向かって突き進む。


「“万能適応”の力——見せてもらおうか!」


「見せてやるよ……これが俺の“適応”だ!!」


 ——シュンッ!!


 ユークの身体が一瞬で加速し、ラザルフの懐に飛び込む。


「なに!?」


「終わりだ」


 ユークの剣が閃き——


 ——ザンッ!!


「……ぐっ!!」


 ラザルフが膝をつく。


 黒の書が地面に転がった。


「黒の書……これが……」


 ユークが剣を収め、黒の書を手に取る。


「ユーク……」


 セリナがそっとユークの隣に立つ。


「黒の書をどうするの?」


「……封印する」


「そんなことが……できるの?」


 ユークはゆっくりと黒の書を掲げる。


「“万能適応”の力がある限り、不可能はない」


 そして——


「《封印》」


 ——ズゥゥゥゥン!!


 黒の書がまばゆい光を放ち、ゆっくりと姿を消していく。


「……これで、終わりだ」


 ユークは冷静にそう言い、剣を収める。


「……ユーク」


 セリナがユークをじっと見つめる。


「これでいいの?」


「ああ……これでいい」


 ユークは静かに目を閉じた。


「——試練、完遂」


 空間に声が響き、アルカナの塔が静寂に包まれた。


「……帰るか」


「ええ」


 二人は肩を並べて歩き出す。


 黒の書——

 その禁断の魔導書は、今、ユークの手によって封じられた。


 だが——


 この決断が、未来に何をもたらすのかは、まだ誰にもわからなかった。

読んでいただきありがとうごさいます!

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