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第53話 『学都ルミナス』

 学都ルミナスの城門が見えてきたのは、朝日が山の端から顔を覗かせたころだった。


「……でかいな」


 ユークは目を細めて、目の前にそびえる巨大な城壁を見上げた。

 王都の城門も十分に立派だったが、学都ルミナスの城門はそれ以上だった。

 灰色の石で築かれた分厚い壁の上には、見張りの兵士たちが整然と並び、城門の前には多くの商人や旅人が列をなしていた。


「やっと着いたわね」


 セリナが満足げに笑いながら言う。

 彼女の金色の髪が朝の光を浴びてきらきらと輝いていた。


「随分と賑わっているな」


「学都ルミナスは、王国の文化と知識の中心地だから。商人や旅人だけじゃなくて、魔導士や学者も集まるのよ」


「なるほど……」


 ユークは門を見つめながら、ふと過去を思い出す。

 自分が元いたパーティーのメンバーに、ここを訪れた者はいなかったはずだ。

 彼らは戦闘の力ばかりに頼っていた。だが——


(……だからこそ、アイツらは俺を切り捨てたのかもしれない)


「ユーク?」


 セリナの声に思考が途切れる。


「入るわよ」


「ああ」


 二人は並んで城門の列に加わった。


「身分証を提示してください」


 門番の兵士が淡々とした声で言った。


「これで」


 セリナが懐から取り出したのは、小さな銀の紋章だった。

 王族直属の紋章。王都での功績を認められた証である。


 兵士が紋章を確認し、頷いた。


「……通ってよし」


「ありがとう」


 セリナが微笑むと、兵士は顔を赤らめながら道を開ける。


「……お前、やっぱり妙に慣れてるな」


「まあね。こういう場面には慣れてるから」


 セリナが笑う。


 城門を抜けると、広がっていたのは、華やかで美しい街並みだった。

 王都とは異なり、石畳の道には様々な露店が並び、道行く人々の服装もどこか洗練されている。

 建物の外壁には魔導の紋様が刻まれており、時折その光が柔らかく街を照らしていた。


「すごいな……」


「でしょ? さあ、宿を探しましょうか」


「その前に——」


 ユークの視線が街の中心にそびえる巨大な塔に向けられる。

 《アルカナの塔》——学都ルミナスの象徴であり、王国最大の魔導院がある場所。


「……行ってみるか」


「ええ。でも、門をくぐるには許可が必要よ」


「許可か……」


「まあ、まずは様子を見ましょう」


 セリナとユークはゆっくりと街の中心に向かって歩き出した。




「——なあ」


「ん?」


「黒の書の存在が確認されたら……お前はどうするつもりだ?」


 ユークが低い声で尋ねる。


「……封印するつもりよ」


 セリナの声に迷いはなかった。


「でも……簡単に封印できるようなものじゃないはずだ」


「そうね。だから、私たちが知る必要があるの」


 ユークは剣の柄に手を添える。


「誰かに悪用される可能性もある……それがローブの男の狙いだった場合、戦いになるかもしれない」


「それでもやるしかないわ」


 セリナが立ち止まり、ユークの目を真っ直ぐに見つめる。


「あなたは、私を支えてくれる?」


「……当然だ」


 ユークの言葉に、セリナの顔が柔らかくほころぶ。


「ありがとう、ユーク」


 ユークは再び歩き出す。


「さて……まずは宿を探すか」


「ふふっ、そうね」


 二人は連れ立って、街の喧騒の中に消えていった。

 黒の書の真実に辿り着くまで、まだ道のりは長い。


読んでいただきありがとうごさいます!

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