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第48話 『限界突破』

「——来る」


 ユークは剣を構え、前方の闇を睨んだ。

 セリナも矢を番え、引き絞った弓を震わせている。


 暗闇の奥から、赤い光が不規則に明滅する。

 同時に、耳鳴りのような低い音が森に響いた。


「……強い気配だ」


 ユークは全身を駆け抜ける魔力の波を感じ取っていた。

 肌を刺すような感覚。——まるで生存を許さない、死の気配。


 ズゥゥゥゥゥン……


「——っ!」


 セリナが息を飲む。

 闇の奥から、巨大な影が現れた。


 奈落竜(アビスドラゴン)


 真紅の瞳がユークたちを睨みつける。

 漆黒の鱗は闇そのものを纏っているかのようで、空間が歪んで見える。


「……間違いない。アイツだ」


 ユークの脳裏に、あの時の戦いがよみがえる。

 ——必死の戦いの末に、ユークはアイツを倒したはずだった。

 それなのに——


『お前には”真実”を知る資格がある』


 奈落竜があの時、最後に放った言葉。

 “真実”とは何なのか。

 それを知ったとき、ユークは——


「……来るぞ!」


 ユークが叫んだ瞬間——


 ガアアアアアア!!


 奈落竜が咆哮し、地面が揺れた。

 竜の巨体が一瞬で距離を詰めてくる。


「セリナ、伏せろ!」


 ユークが叫ぶと同時に、奈落竜の鋭い爪が空を切り裂いた。


 ギィィィン!!!


 ユークは剣を振り上げ、爪を受け止める。

 だが、強大な衝撃が腕を通じて全身に響いた。


「ぐっ……!!」


 体が弾き飛ばされ、木に叩きつけられる。


「ユーク!」


 セリナが叫ぶが、ユークはすぐに体勢を立て直した。

 剣を地面に突き刺して体を支え、鋭い眼光で奈落竜を見据える。


「……やっぱり、あの時より強くなってるな」


 奈落竜が再び爪を振るう。

 ユークは一瞬で前方に飛び出した。


 シュンッ!!


 刹那、奈落竜の爪がユークの鼻先をかすめる。

 ユークは剣を逆手に持ち替え、脇腹を斬りつける。


 ザンッ!


「ガアアアッ!!」


 漆黒の鱗が裂け、黒い血が噴き出す。

 だが、奈落竜は即座に傷を再生させる。


(……やっぱり再生能力があるのか)


「セリナ、後ろに回れ!」


「わかった!」


 セリナは木々の影をすり抜け、奈落竜の死角に回る。

 ユークは地面を蹴り、斬撃を放った。


 シュバッ!!


 剣の軌跡が空を裂く。

 だが、奈落竜は大きく跳躍して避ける。


「やるじゃねえか……!」


 ユークが口元を歪めた瞬間、奈落竜の口が大きく開いた。


「——まずい!」


 ドゴオォォォン!!!


 暗黒のブレスが一直線に放たれる。

 ユークはセリナを抱きかかえて飛び退く。

 背後の大木が粉々に砕け散った。


「っ……くそっ……!!」


(普通にやっても、勝てない……)


 ユークは剣を強く握りしめる。

 体中の魔力が高鳴り、心臓が早鐘を打つ。


「……なら、使うしかないか」


 ユークは目を閉じ、意識を集中させた。

 胸の奥から、熱い力が湧き上がる。


「——《万能適応(オールマイティ)》」


 一瞬、ユークの体が白く輝いた。

 セリナが驚いたように目を見開く。


「ユーク……!?」


「ここからが本番だ」


 ユークは剣を振り抜いた。

 瞬間——


 シュンッ!


 ユークの姿が消えた。

 同時に、奈落竜の左腕が宙を舞った。


「——がああああっ!!」


「……どうした? もう終わりか?」


 ユークは涼しい顔で剣を構える。

 奈落竜が苦しみのうめきを上げ、怒りに満ちた咆哮を放った。


「セリナ、援護を頼む」


「了解!」


 セリナが矢を番え、魔力を込める。


「——これで終わりだ」


 ユークは剣を構え、飛び出した。

 セリナの矢が奈落竜の目を正確に射抜く。


「ガアアアアッ!!」


 その隙を逃さず、ユークの剣が閃いた。


「——喰らえ!!」


 ドガァァァァァン!!!


 奈落竜が絶叫し、その巨体が崩れ落ちる。

 ユークは剣を納め、ゆっくりと息を整えた。


「……終わったか」


 セリナが駆け寄る。


「ユーク……!」


「……大丈夫だ」


 ユークはセリナの手を握った。

 二人を包む光が、森に静けさを取り戻していた。


読んでいただきありがとうごさいます!

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