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第47話 『再起の道標』

 ユークは森の中に立っていた。

 王都の外れに広がるこの森は、昼間でも薄暗く、湿った土の匂いが鼻をついた。

 木々の隙間からわずかに差し込む光が、苔むした地面に影を落とす。

 ひんやりとした風が肌を撫で、森に張り詰めた静寂が耳に痛いほどだった。


「……静かすぎる」


 ユークは剣の柄に手を添え、慎重に周囲を見渡した。

 肌を刺すような魔力の残滓が、微かに空気に漂っている。


「気配は……ある。でも、遠い」


 ユークが眉をひそめたその時——


「ユーク、大丈夫?」


 セリナがユークの隣に立っていた。

 彼女は弓を構え、金色の瞳を細めて辺りを見渡している。

 彼女の指は弓弦に添えられており、いつでも矢を放てる体勢だった。


「……今のところは何もない」


 ユークは小さく息を吐いた。

 だが、胸の奥に残る不安は消えない。


「あいつ……やっぱり本物だったの?」


 セリナが小声で尋ねる。

 ユークはゆっくりと頷いた。


「間違いない。アイツは……死んだはずなのに、生きていた」


「でも、どうして……?」


「わからない」


 ユークの脳裏に、“あの時”の光景が蘇る。

 激しい戦闘の末に、確かに自分はアイツにとどめを刺した。

 それなのに——


『お前には”真実”を知る資格がある』


 あの時、男はそう言った。

 “真実”とは何なのか。

 それを知った時、自分は本当に絶望するのか——


「ユーク」


 セリナがユークの袖を軽く引いた。

 はっとして、ユークは彼女を見る。


「考え込んでる場合じゃないよ」


「……ああ」


 ユークは剣の柄を握り直した。

 森の奥から、不吉な気配が漂ってくる。


「もしまた現れたら……どうする?」


「——倒す」


 ユークの瞳が鋭く光る。

 彼が視線を向けると、セリナは微かに笑った。


「じゃあ、私も手伝うわ」


「頼む」


 ユークが言うと、セリナは弓を握り直した。

 二人は視線を交わし、森の奥へと足を踏み出す。


 その時——


 ——ザッ……


 遠くで枝が折れる音が響いた。


 ユークが即座に剣を構える。

 セリナも素早く矢を番える。


「……来る」


 不気味な気配が濃くなる。

 暗闇の中に、赤い光がちらついた。


「……何かいる」


 ユークの背筋を冷たい汗が伝う。

 “アイツ”なのか?

 それとも——


 次の瞬間、暗闇の奥から”それ”が姿を現した——


読んでいただきありがとうごさいます!

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