第46話 『迫る影、揺れる決断』
——王都・王宮内
「……黒の書、だと?」
ユークの言葉に、セリナが眉をひそめた。
「ええ。さっき調べた魔力の残滓……どう考えても、普通の呪詛とは違うわ」
広間に漂っていた不気味な魔力の痕跡。それを辿った結果、浮かび上がったのが「黒の書」という禁忌の存在だった。
「黒の書……」
ユークは呟く。
それは、古の時代から伝わる「闇の魔導書」であり、持つ者に強大な力を与えるが、同時に破滅を招くとも言われている。
「まさか、あの男が黒の書と関係していると?」
「可能性は高いわね」
セリナは神妙な面持ちで頷いた。
ユークは考える。
(……本当に”アイツ”だったのか? それとも、何か別の存在なのか?)
相手の正体を掴めないまま、ただ不安だけが募る。
「これ以上、手掛かりはないのか?」
「一つだけ……」
セリナは静かに口を開いた。
「黒の書に関する研究は、王都ではほとんどされていないわ。でも——学都ルミナスなら、何か分かるかもしれない」
「学都ルミナス……」
王都から北へ数日。魔法研究の中心地であり、膨大な魔導書が保管されている場所。
「どうする? ユーク」
セリナが静かに問いかける。
ユークは少し考えたあと、ゆっくりと口を開いた。
「……王都でできることを、もう少し調べる。その上で、学都ルミナスへ行くか決めよう」
「……分かったわ」
セリナは頷いたが、その瞳には僅かな不安が宿っていた。
(黒の書……このまま王都にいるのが、本当に安全なのかしら……?)
そんな思いを胸に秘めながら、二人は王都の調査を続けることに決めたのだった。
——しかし、その決断を嘲笑うかのように。
王都のどこかで、不吉な気配が蠢き始めていた。
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