第42話 『異変』
「これで終わりだ」
——ゴォォォォッ!!
俺が振るった魔法の一撃が、
敵の魔物を一掃した。
「ま、またユーク様が……!」
「まるで伝説の英雄のようだ……」
集まっていた冒険者や兵士たちが、
信じられないものを見るような目で俺を見ていた。
(ふう……こんなもんか)
「ユーク!」
セリナが駆け寄ってきた。
「大丈夫?」
「ああ、問題ない」
セリナが安堵したように胸をなでおろす。
「でも……すごいわ。
あの規模の魔物の群れを、一撃で……」
「まあ……な」
「ユーク……あなたは本当にすごいわ」
セリナが俺の手をそっと握る。
柔らかい感触が、手のひらに伝わる。
「……」
「……ありがとう」
俺は軽く笑って、手を握り返した。
(……悪くない)
「ユーク様! あなたにお願いがあります!」
兵士の一人が駆け寄ってきた。
「なんだ?」
「実は……王都の南門に“異常”が起きているとの報告がありました」
「異常?」
「何か……邪悪な魔力が観測されています」
「邪悪な魔力?」
セリナが眉をひそめる。
「かなり強力なものです。
通常の魔物とは異なる波動が感じられます」
「なるほど……」
(これは……ただの魔物じゃないか)
「わかった。俺が行く」
「ユーク……!」
セリナが不安げに俺の腕を掴む。
「危険よ。
もし、あなたに何かあったら——」
「大丈夫だ」
俺はセリナの手にそっと触れた。
「俺を誰だと思ってる?」
「……最強の冒険者」
「その通り」
セリナが静かに微笑む。
「一緒に行くわ」
「いや……」
俺はセリナの額に軽く指を当てた。
「ここで待ってろ。
大丈夫だから」
「……でも……」
「信じろ」
俺が微笑むと、
セリナはしばらく迷った後、静かに頷いた。
「……気をつけて」
「ああ」
俺は王都の南門に向かって歩き出した。
(邪悪な魔力……か)
魔力を感じる——
しかも、この感覚……
(まさか……)
南門にはすでに数十人の兵士と冒険者たちが集まっていた。
しかし、皆が戸惑った様子で立ち尽くしている。
「何があった?」
俺が尋ねると、
兵士が慌てて報告してきた。
「魔力の波動が強すぎて……
中に入ることすらできません!」
「どれほどの魔力だ?」
「……S級以上の可能性があります」
「……そうか」
俺は剣を握る。
「下がってろ」
「えっ……?」
「これから俺が片付ける」
俺が一歩踏み出すと——
——ドクンッ……!
空気が歪んだ。
「……っ!!」
「な、なんだ……?」
空気がざわつき始める。
まるで空間そのものが引き裂かれるような感覚——
——バリィィィンッ!!!
空間が割れた。
その裂け目から、
巨大な黒い影が現れる。
「グオオオオオ……」
「こいつは……」
異様なほどの魔力が辺りに充満する。
「化け物か……」
剣を握る。
(この感覚……どこかで……)
その時——
「待ちなさい」
声が響いた。
ユークの剣先がかすかに震える。
目の前に立つローブの男が、ゆっくりと顔を上げる。
「まさか……お前が……?」
男のローブが風にあおられて落ちる。
そこに現れた顔を見た瞬間、ユークの血の気が引いた。
「そんな……死んだはずだろ……」
男は静かに笑った。
「久しぶりだな、ユーク」
ユークの背筋が凍る。
目の前にいるのは——
かつて、ユーク自身がこの手で倒したはずの人物だった。
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