第39話 『王国の英雄、そして始まる陰謀』
婚約が正式に発表されてから数日後、
王宮ではユークとセリナを祝う盛大な歓迎会が開かれていた。
華やかなシャンデリアが光を放ち、
豪華な衣装を纏った貴族たちが広間に集まっている。
「……場違いだな」
ユークは壁際で腕を組みながら、
広間の様子を見渡していた。
「ユーク」
セリナがユークの隣に立つ。
「あなたが注目されるのも当然よ。
“核の力”を受け継いだ英雄なんだから」
「……俺はそんなものになったつもりはない」
「でも——
あなたは確かに皆を救った」
ユークが無言で視線を落とす。
「セリナがいなかったら、
俺はここにいなかったかもしれない」
セリナが微笑む。
「だからこそ——
私もあなたと一緒にいるのよ」
ユークがため息をついた瞬間——
「ユーク殿!」
豪華な衣装を纏った一人の男性が近づいてきた。
その胸元には王国の紋章が刻まれている。
「これはこれは……
“英雄”ユーク殿!」
「……何の用だ?」
ユークが冷たい目で見据えると、
男は慇懃に微笑んだ。
「お堅いことは言わずに……
ぜひとも我が家に力を貸していただきたいと思いまして」
「……力を?」
「核の力を受け継いだあなたなら、
きっと我が家に繁栄をもたらしてくれることでしょう」
ユークの目が細くなる。
「それは“王国のため”か?」
「もちろん、王国のためでもあり……
我が家のためでもあります」
「……断る」
ユークが即答すると、男は驚いた顔を見せた。
「お待ちください、ユーク殿——」
「俺は“英雄”じゃない」
ユークが静かに言い放つ。
「俺はただ、セリナを守るためにここにいるだけだ」
「……っ!」
ユークの眼差しに気圧された男は、
舌打ちをして離れていった。
「……やれやれ」
ユークが再びため息をつく。
「……こういうのが増えるんだろうな」
「ユーク……」
セリナが心配そうにユークを見つめる。
「大丈夫?」
ユークが微かに笑う。
「お前がいるなら、問題ない」
---
「……ユーク殿」
今度は別の貴族が近づいてきた。
「“英雄”として、我が領地をお守りいただければ——」
「あなたの力を、ぜひとも我が家のために——」
ユークの周囲に次々と貴族たちが集まり始める。
「……おいおい」
ユークが顔をしかめると、
セリナが前に出た。
「申し訳ありません。
ユークはまだ回復の途中ですので、
しばらく静養が必要です」
「そ、そうですか……」
貴族たちは名残惜しそうに下がっていく。
「……助かった」
ユークがセリナを見つめる。
「あなたが嫌がっているのが分かったから」
セリナが微笑む。
「ありがとう」
ユークが目を細める。
---
——ギィィィン!!
ユークが目を見開いた。
「ユーク!?」
「……始まるかもしれない」
ユークが剣を引き抜くと、
フードを被った人物がゆっくりと近づいてきた。
「“英雄”か……」
低く、冷たい声。
「お前に興味がある」
ユークの目が鋭くなる。
「……俺に興味?」
「“核”を継いだ適応者——
その力、どれほどのものか……
いずれ確かめさせてもらおう」
「……試してみるか?」
ユークが剣を構える。
だが——
——シュンッ!!
フードの人物が微かに笑った瞬間、
その姿がかき消えた。
「……逃げた?」
ユークが剣を下ろす。
「何だったの……今の?」
セリナがユークの腕を掴む。
「……分からない」
ユークは剣を鞘に収める。
「“核”の力とは違う……
だが、あの力は間違いなく——異質だった」
ユークが庭園の奥を見据える。
「……警戒しておいた方がよさそうだな」
セリナがユークの腕に寄り添う。
「ユーク……大丈夫?」
ユークは微かに笑った。
「お前がいるなら、大丈夫だ」
セリナがホッとしたように微笑む。
「それなら……
少し落ち着こうか」
ユークがセリナの手を引き、
庭園の石造りのベンチに腰を下ろした——
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