第38話 『婚約』
ユークとセリナがギルドの広間で食事をしていると、
ギルドの受付嬢が慌てて駆け寄ってきた。
「ユーク様!王宮から正式な招待状が届きました!」
「……招待状?」
ユークが眉をひそめる。
「王宮で——正式な婚約の儀式が行われるそうです!」
「婚約の……儀式……」
ユークが剣を握りしめる。
「王国として、ユーク様を“王国の英雄”として迎えたいとのことです!」
「……英雄ね」
ユークがため息をつく。
「王国の思惑が見え見えだな」
セリナが心配そうにユークを見つめる。
「ユーク……」
ユークは無表情のまま椅子から立ち上がる。
「どうするの?」
セリナが尋ねると、ユークは剣を腰に収めた。
「行くしかないだろう」
「でも……」
ユークがセリナに視線を向ける。
「お前が……本当にそれを望むなら」
セリナの目が一瞬揺れる。
「私は——」
ユークがゆっくりと歩き出す。
「答えを……聞かせてくれ」
---
ユークはギルドの外に出て、
夜の王都を歩いていた。
夜空には月が浮かび、
冷たい風が肌を撫でる。
「……俺が“王国の英雄”?」
ユークがため息をついた瞬間——
「ユーク」
振り向くと、セリナが立っていた。
「どうした?」
セリナがゆっくりと歩み寄る。
「……迷ってる?」
ユークが眉をひそめる。
「……俺はただの冒険者だ」
「でも、あなたは“核”の力を受け継いだ」
「だからって……
王国に縛られるつもりはない」
「ユーク……」
セリナがユークの腕をそっと掴む。
「……それでも、私はあなたと一緒にいたい」
「セリナ……」
セリナが微笑む。
「王国のためじゃない」
「?」
「私が……ユークと一緒にいたいから」
ユークの目がわずかに揺れる。
「……セリナ」
「婚約が“王国のため”になるのなら、
私はそれでも構わない」
「でも——」
セリナがユークを真っ直ぐに見つめる。
「私がユークと一緒にいる理由は……
ユーク自身が好きだから」
ユークが驚いたように目を見開く。
「だから……ユークが決めていいの」
ユークが剣の柄に手を添える。
「……分かった」
ユークが微かに笑った。
「俺が……お前を守る」
セリナの目が潤む。
「うん……」
ユークはセリナの手を優しく握った。
「行こう」
---
翌日、
ユークとセリナは王宮の謁見室にいた。
国王アルベルトが玉座に座っている。
「ユークよ、来てくれたか」
ユークが剣を腰に収めたまま前に進む。
「お前がセリナと正式に婚約を結ぶことを——
王国として認めよう」
ユークが国王を見据える。
「……俺に、王国の力を利用させるつもりか?」
「いや……
そなたが王国を守る存在であることは間違いない」
「……ふん」
「だが——
そなた自身の意志が最も重要だ」
ユークがセリナに目を向ける。
セリナが頷く。
「……俺は」
ユークが剣を掲げる。
「この婚約を受け入れる」
——ザワッ……!!
「ユーク様が婚約を受け入れた!」
「英雄が王家の一員になるぞ!」
国王が満足そうに頷いた。
「ならば——
ユークよ、王国の守護者となる覚悟はあるか?」
ユークが剣を収め、静かに答えた。
「俺が守るのは——
王国じゃない」
「……?」
「セリナだ」
セリナの顔が赤くなる。
「……ユーク」
ユークがセリナの手を握る。
「俺が守るべきものは、
ずっと決まってる」
国王が微笑む。
「それで十分だ」
---
ユークとセリナが互いに手を取り合う。
「ユーク……ありがとう」
「お前が望むなら——
俺はどこまでも付き合う」
セリナが笑顔で頷いた。
「私も……
ずっとそばにいるわ」
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