第32話 『終焉を司る王と最強冒険者 万能適応の極限突破』
ギィ……ッ
通路に響く不気味な音。
ユークの前で、改造体がゆっくりと立ち上がった。
全身に黒い魔法陣が浮かび上がり、その体は膨れ上がっていく。
「……魔力が……増大している?」
セリナが驚愕の声を漏らした。
「《自己再構築》……か」
ユークは冷静に呟いた。
「つまり、“壊れても修復可能”ってわけか」
改造体の目が赤く光る。
表情には笑みすら浮かべている。
「お前の力……吸収させてもらうぞ」
「吸収だと……?」
その瞬間——。
シュン!
改造体が消えた。
気配が消えた——いや、上だ!
「ユーク! 上です!」
ユークが即座に剣を構える。
ガッ!!
改造体が天井から飛び降り、ユークに向かって黒い爪を振り下ろした。
「《アイスバリア》!」
瞬時に氷の壁が展開される。
しかし——
バキィッ!!
氷の壁が粉々に砕け散った。
「な……!」
「無駄だ」
改造体がユークの腕を掴んだ。
全身から黒い魔力が流れ込み、ユークの体に侵食していく。
「——ユーク!!」
セリナが叫ぶ。
---
「くっ……!」
ユークの体を黒い魔力が蝕み始める。
意識が徐々に朧げになっていく——。
(——これが限界か?)
「そんなわけ……ないだろ」
ユークは剣を強く握りしめる。
その瞬間——。
ユークの中に、新たな感覚が広がった。
——お前にはまだ可能性がある。
——適応しろ。
——限界を超えろ。
——俺には……まだやれる!
ユークの瞳が蒼く輝いた。
「——適応する」
ユークの体に青白い魔法陣が浮かび上がる。
黒い魔力がユークの体を侵食しようとした瞬間——。
「——適応完了」
ユークの体に青白いオーラが走る。
黒い魔力が、逆にユークの体に吸収されていく。
「な……何!?」
改造体が驚愕する。
「お前の魔力——もらったぜ」
ユークの剣に黒い魔力が宿る。
剣が黒く輝き、異様な気配を纏い始めた。
「《ダークブレード》」
ユークが剣を振ると、黒い閃光が改造体を切り裂いた。
ザシュッ!!
改造体が吹き飛ばされ、地面に激突した。
「——バカな……!」
ユークは剣を構え直す。
「適応しただけだ」
ユークが低く笑う。
---
「貴様……! この俺を……!」
改造体が最後の力を振り絞り、体に黒い魔法陣を纏わせる。
「《ダークバースト》!!」
黒いエネルギーが暴風のように吹き荒れる。
「……ッ!」
ユークが剣を振り上げる。
「セリナ!」
「《ヒールバースト》!」
セリナの魔法がユークを包む。
「行くぞ」
ユークは剣を高く掲げた。
「——《エクスプロージョン・ブレード》!!」
赤と黒が混じり合った剣が燃え上がる。
ユークが一気に地面を蹴った。
「おおおおおお!!!」
剣が改造体の中心に突き刺さった。
ゴォォォォォォォォォォォッ!!
爆炎が広がり、地面が激しく震えた。
「……が……ぁっ……!」
改造体が叫びを上げながら崩れ落ちる。
そして——
——ドサッ
静寂が訪れた。
ユークが剣を引き抜くと、改造体の体が黒い霧となって消え去った。
「……終わった、か」
ユークは剣を収め、ゆっくりと息を整える。
手に握られた黒い剣「ダークブレード」から、じわじわと魔力が漏れ出ている。
「あなた、大丈夫?」
セリナが駆け寄り、ユークの腕に触れた。
「平気だ」
ユークは短く答えると、剣を腰に収める。
「この剣……改造体の魔力を吸収して生まれたものみたいだな」
「敵の力を……適応して武器にしたってこと?」
「万能適応の新しい形かもしれない」
ユークは剣を軽く握る。
黒く輝く剣からは、漆黒の波動が静かに広がっていた。
「とにかく、進もう。
《深淵の手》の本拠地はすぐそこだ」
「ええ」
ユークとセリナは顔を見合わせ、暗闇の奥へと足を踏み入れた。
---
しばらく進むと、目の前に巨大な黒い扉が現れた。
ギィ……ッ
扉がゆっくりと開くと、その先には広大な空間が広がっていた。
空間の中央には黒い魔法陣が刻まれ、そこに人影が佇んでいる。
「ようこそ、Sランク冒険者」
静かな声が響いた。
フードを深く被った人物がゆっくりと振り向く。
その顔には、ユークが見覚えのある「黒薔薇の紋様」が刻まれていた。
「……《深淵の手》のボスか」
ユークが剣を抜く。
「違うよ」
フードの男が笑う。
「私の役目はここまで。
本物の主は……別にいる」
ドンッ!
空間全体が震えた。
足元に広がる魔法陣が青白く輝き始める。
「この先で待っている。
お前が“選ばれる”かどうかは——お前次第だ」
男が手を上げると、床に無数の魔法陣が出現した。
「《ディメンションゲート》」
床に大きな亀裂が走り、ユークとセリナの足元が崩れ落ちた。
「——っ!!」
ユークはセリナの手を掴み、体を引き寄せる。
「ユーク……!」
「大丈夫だ。俺が守る」
ゴォォォォォォ!!
光に包まれ、二人の体が異空間に吸い込まれていく——。
---
ユークとセリナが目を開けると、そこは漆黒の空間だった。
上下左右の感覚がなく、どこまでも闇が広がっている。
「……ここは?」
「異空間か……いや、“次元の狭間”だな」
その瞬間——。
バサァッ!!
空間の中心に、巨大な影が現れた。
「これは……」
「ようやく来たか」
低く、威圧的な声。
「お前が……《深淵の主》か」
「我が名は《アビス・ヴァルナクト》。 終焉を司る王だ」
漆黒のローブをまとい、長く滑らかな黒髪が肩まで垂れている。
その瞳には、光の欠片すら存在しない。
「貴様か……アビス・ハンドを差し向けてきたのは」
ユークが剣を構える。
「フフ……そうとも。
貴様が“適応者”であると見込んだからな」
「俺を……試していたのか」
「そうだ。この世界は終焉に向かっている。それに抗える力を持つ者がいるか、見極める必要があった」
「終焉……だと?」
「いずれ、世界は深淵に沈む。
それは“必然”だ。
しかし……お前が“適応”できるのなら——」
ヴァルナクトが手を上げると、空間がねじれる。
「——見せてみろ、貴様の“適応”の力を」
ユークの足元に黒い魔法陣が展開された。
---
「来るぞ……!」
ユークが剣を構える。
「——《アビス・ディストーション》」
空間が歪んだ。
ユークが剣を振るった瞬間——剣の軌道がねじ曲がり、完全に外れた。
「——くっ!」
「フフ……空間そのものを支配している。
貴様の攻撃など、意味を成さない」
「なら……こっちだ!」
ユークが手をかざす。
「——《ライトニングスピア》!」
青白い雷が放たれた——が、雷が空中でねじ曲がり、ユーク自身に跳ね返った。
バチィッ!!
「——ぐっ……!」
ユークが膝をつく。
「無駄だ。
“法則”そのものが、ここでは私の支配下にある」
「そんな……」
セリナが息を呑む。
「ユーク……!」
ヴァルナクトが手をかざす。
「——《デスペア・エクリプス》」
セリナの視界が一瞬で暗転した。
「え……?」
目の前に映し出されたのは、幼い頃の記憶——
母が倒れ、血を流している。
「お母さん……」
「抗えるか?
お前が見たくない“絶望”に——」
「……っ!」
その時——。
ガシッ
ユークがセリナの手を掴んだ。
「セリナ——目を覚ませ」
「ユーク……?」
「お前はそんな絶望に負ける奴じゃない。
お前の力を……信じろ」
セリナの目に光が戻った。
「……ありがとう」
「お前は俺が守る」
ユークが剣を振り上げる。
「空間を支配?
なら、俺がその空間に“適応”する!」
ユークの体に青白い光が走る。
「《万能適応》——“時空適応モード”」
剣が黒く輝き始めた。
「——いくぞ!!」
ユークが一気に飛びかかる。
ヴァルナクトが黒い光を放つ——
「《ダーク・ジェネシス》!!」
「《エクスプロージョン・ブレード》!!」
——激突!!
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