第31話 『最強冒険者、闇市で覚醒!万能適応の力が進化する』
ユークとセリナは、闇市のさらに奥へと進んでいた。
通路はますます細くなり、壁には黒い苔がびっしりと張り付いている。
空気は湿っており、腐臭が鼻を突く。
どこかで水が滴る音が響き、それが静けさをさらに際立たせていた。
「……気配が濃くなってきたな」
ユークが剣を握り直すと、セリナが隣に並ぶ。
「気をつけて。
この奥に《深淵の手》がいる可能性が高いわ」
「分かってる」
その瞬間——。
ギィ……ッ
鉄を引き裂くような不気味な音が響き、通路の奥から黒い霧が渦巻いた。
そして、霧の中からゆっくりと二つの影が現れた。
「……待っていたぞ、Sランク冒険者」
低く、抑揚のない声。
一人がフードを外すと、漆黒の紋様が顔全体に広がっている。
「“改造体”か……」
ユークが呟いた。
《深淵の手》が人体に禁断の魔術を施した戦闘用の強化体——それが「改造体」。
「やはりお前は特別だな。
だが……ここで終わりにしてもらおう」
男が手を上げると、通路に黒い魔法陣が展開された。
「《シャドウスラッシュ》!」
無数の黒い刃が空中からユークを襲った。
---
「《アイスバリア》!」
ユークが左手をかざすと、氷の壁が瞬時に形成される。
黒い刃が壁に衝突し、ガラスが砕けるような音とともに弾き返された。
「遅い!」
ユークが壁の隙間から瞬時に前へ跳ぶ。
右手に炎を纏わせる。
「《フレイムブレード》!」
炎を纏った剣が赤い軌跡を描き、改造体の胸を狙う。
「——甘い!」
改造体が瞬時に回避し、ユークの死角から腕を振り上げた。
腕から黒い刃が生成され、ユークに振り下ろされる。
シュッ!!
「《テレポート》!」
ユークの体が光に包まれ、一瞬で改造体の背後に移動。
「——終わりだ」
ユークが剣を振り下ろした瞬間——。
「——させるか!」
もう一体の改造体がユークに襲いかかる。
「……っ!」
ユークが剣を振り返すより速く、黒い刃がユークの腕を狙った。
「ユーク!」
セリナの声が響く。
「《ヒールブースト》!」
ユークの腕に温かな光が走り、傷が一瞬で塞がる。
「助かった」
ユークは剣を逆手に持ち替えると、素早く前に踏み込んだ。
「——《サンダーボルト》!!」
青白い雷が敵を包み込み、地面に落ちた刃が焦げ付く。
「こっちも——いくぞ」
ユークは片手を高く掲げる。
周囲の魔力を一気に吸収し、剣に魔力を収束させる。
「《エクスプロージョン・ブレード》!!」
剣から赤い炎の刃が発生し、ユークが全速力で敵に向かって突進する。
「——なっ!?」
ユークが一閃すると、炎の刃が改造体の胸を貫いた。
「が……ぁっ……!」
改造体が叫び声を上げ、崩れ落ちる。
---
「終わった……?」
セリナがユークに駆け寄る。
「いや……まだだ」
ユークが剣を構えると、残った改造体がゆっくりと立ち上がった。
口元に笑みを浮かべる。
「……さすがはSランク冒険者」
男の瞳が赤く光った。
「次は……本気でいかせてもらう」
改造体の全身に黒い魔法陣が走る。
魔力が異常なまでに膨れ上がっていく。
「——ユーク、危険です!」
「上等だ」
ユークが剣を持ち替える。
「このまま奥に行くのは無理そうだな……
なら——こいつを倒すしかない」
ユークは魔力を集中させる。
剣の刃が白く輝き始めた。
「セリナ、サポートを頼む」
「ええ、任せて!」
ユークとセリナは互いに頷き合った。
「——始めよう」
ユークは前に出た。
再び、闇が二人を包み込もうとしていた。
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