第30話 『最強冒険者、闇市の罠に挑む』
ユークとセリナは、闇市の奥へと足を踏み入れていた。
赤いランタンの明かりが揺れ、壁際では異様な取引が行われている。
薬品の瓶が並び、不気味な光を放っている。
それを覗き込む獣人の目はギラつき、怪しげなフードを被った男が小声で何かを囁いている。
「……人の気配が多すぎるな」
ユークは小声で言った。
「この場所自体が、裏社会の中心ですから」
セリナは顔を伏せながら答える。
彼女の金色の髪がフードの下で揺れる。
「注意してください。
《深淵の手》がこの奥にいる可能性は高いです」
「……ああ」
ユークは剣に手をかけながら、辺りを警戒した。
その時——。
「あれ……Sランク冒険者か?」
低い声が背後から聞こえた。
振り返ると、三人の男が立っていた。
全員が黒いフードを被り、胸元には《深淵の手》の紋章——黒薔薇の紋が刻まれている。
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「お出迎え、ご苦労なことだ」
ユークが剣を軽く持ち上げると、中央の男が一歩前に出た。
フードを外すと、そこには端正な顔立ちの男が現れた。
青い髪に冷たい金色の瞳——見下すような笑みが浮かんでいる。
「まさか、王都の冒険者ギルドがここまで嗅ぎつけてくるとはな……。
Sランク冒険者、そして……王女セリナ」
「……知っているのか」
ユークが低く問いかけると、男は口元を歪めた。
「ええ。あなた方の動きはすべて把握しています。
それに、あなたが王都で何を成そうとしているのかも……」
「ふん……それで、どうする?」
ユークは剣を構えた。
「戦うつもりか?」
男は笑った。
「戦う必要があるのなら、そうするまで。
だが……まずは“試させて”もらいましょうか」
その瞬間——。
シャッ
黒い布が天井から落ち、闇市の明かりが一斉に消えた。
辺りが闇に包まれる。
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「セリナ、後ろに下がれ!」
ユークは剣を振りかざし、迫る影を切り裂いた。
シュン!
剣の刃が何かに当たり、鈍い音が響く。
直後、複数の気配がユークに襲いかかった。
「《ダークバインド》」
低い声が響くと同時に、闇の鎖がユークの足元から現れる。
「……っ!」
ユークは素早く左手をかざした。
「《アイスバリア》!」
カキン!
氷の壁が瞬時に展開し、闇の鎖を閉じ込める。
「まだだ……」
ユークは右手を掲げる。
「《サンダーボルト》!」
青白い雷が弾け、周囲の影を一掃する。
「……っ、あなた、大丈夫ですか?」
セリナが駆け寄ってきた。
「平気だ。お前は後ろで待機しろ」
「でも……」
「《深淵の手》は回復役を最優先で狙う。
お前は俺が守るから、動くな」
セリナは不安そうに眉を寄せたが、静かに頷いた。
「……わかりました。回復が必要ならすぐに言ってください」
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ユークは剣を構え、ゆっくりと前に進んだ。
「さあ、どうする? まだ“試す”つもりか?」
男はフードを外し、冷笑を浮かべる。
「なかなかやりますね。ですが——」
ユークの剣が一閃した。
ザシュッ!
男のフードが裂け、頬に赤い線が走る。
「……!」
ユークは無表情のまま、剣を下ろした。
「遊びは終わりだ。
本気で来るなら、いつでも相手になる」
男は一瞬だけユークを見つめ、そして笑った。
「面白い。では……次は“本番”といきましょうか」
男は黒いマントを翻し、闇の中へと姿を消した。
ユークは剣を収め、セリナを振り返った。
「行くぞ」
「ええ」
ユークとセリナは、闇市のさらに奥へと進む。
そして、深淵の闇が二人を待ち受けていた。
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