第21話 『王都に着いたら、なぜか噂になっていた件』
巨大な城壁がそびえ立つ。
厚い石造りの門には重厚な紋章が刻まれ、その前には王国の衛兵たちが厳重に警備をしていた。
ユークは門をくぐりながら、王都・アルザディアの街並みを見渡す。
地方都市とは比べものにならない規模の建物。
貴族たちが乗る豪華な馬車が通り、衛兵たちは目を光らせ、街の整備された道には多くの商人や冒険者たちが行き交っている。
「……やっぱり、でかいな」
王国の中心地だけあって、洗練された雰囲気が漂う。
だが同時に、何かが違うとも感じた。
街全体に漂う“異質な気配”。
王都特有の緊張感か、それとも——。
ユークはその考えを振り払うように歩き出した。
まずは、王都の冒険者ギルド本部で登録の更新を済ませる必要がある。
ギルド本部は、巨大な石造りの建物だった。
地方ギルドの倍以上の広さを誇り、入口には常に多くの冒険者が出入りしている。
中に入ると、広々としたホールには受付カウンターが並び、巨大なクエスト掲示板には無数の依頼書が貼られていた。
「……Sランク冒険者、ユーク・アーデル?」
受付嬢がユークのギルドカードを見るなり、目を丸くした。
周囲の冒険者たちの会話がぴたりと止まり、一斉にこちらを見てくる。
「アイツが……」
「ドラゴンを倒したっていう噂、本当だったのか……?」
「地方から来たSランク……何者なんだ?」
ざわつくギルド内。
ユークは気にせず、受付嬢にカードを渡す。
「登録更新を頼む」
受付嬢は戸惑いながらも、手続きを進める。
「王都本部でのSランク登録には、いくつかの追加規則があります。
まず、王都内での無許可戦闘は禁止。さらに、ギルドの許可なしに貴族や王族と直接交渉することも制限されています」
「……好き勝手に動くな、ってことか」
「そういうことです。王都は、他の都市とは違いますので」
ユークは、受付嬢の言葉に含みがあるのを感じた。
王都には、冒険者であっても自由に動けない「ルール」がある。
改めて、ここがただの都市ではないことを実感する。
「……まあ、覚えておく」
ギルドカードの更新手続きが完了し、ユークが立ち去ろうとしたその時——。
「ユーク・アーデル……話がある」
低く響く声が聞こえた。
ギルド本部の奥にある応接室。
テーブルを挟んで向かいに座るのは、壮年の男だった。
鋭い目つきと、王都のギルド幹部らしい威圧感をまとっている。
「お前、王都をなめてるんじゃないか?」
「……なんの話だ?」
ユークは眉をひそめる。
「お前の噂はすでに王都中に広がっている。Sランク冒険者、ドラゴン討伐……それに、貴族や王族が目をつけ始めたこともな」
「……」
「ここは王都だ。お前がどれだけ強かろうが、勝手には動けねえ」
「つまり?」
「王都のルールを守れ。でなきゃ、お前は“消される”ぞ」
ユークは小さく笑った。
「……試す気か?」
ギルド幹部は目を細め、しばらくユークを見つめていたが、やがて苦笑する。
「……いい度胸だ。だが、忠告はしておく。貴族や王族は、お前みたいな存在を放っておかない」
「……めんどくせえな」
ユークは席を立ち、部屋を後にした。
その頃、王宮の広間では、王女セリナが報告を受けていた。
「……ユーク・アーデルが、王都に到着?」
「ええ。ギルド本部で登録更新を済ませたとのことです」
王女は静かに考え込む。
すでに、王都の貴族派は「ユークを制御不能な脅威」として警戒し、
ギルドは「管理すべき存在」として注視している。
そして、王女自身も——
「彼を、どう扱うべきか」
もし、ユークが「王国の敵」となるならば排除しなければならない。
しかし、もし「王国の力」となるならば——。
王女は静かに口を開いた。
「彼に会う準備を」
「直々にお会いに?」
「ええ。私の目で、彼がどんな人物か確かめます」
王都の運命を揺るがす出会いが、今始まろうとしていた——。
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