第18話 『もう終わった話だ──元仲間との決定的な決別』
王都の裏路地。
闇に包まれた石畳の道に、血を流した暗殺者たちが転がっていた。
ユークは倒れた男たちを見下ろしながら、誰がこの暗殺者を送り込んだのかを考えていた。
その時——
カツン……カツン……
背後から、足音が聞こえた。
(……またか)
静かに振り向く。
そこに立っていたのは——
「ユーク……ようやく見つけたぞ」
かつての「勇者パーティー」のリーダー、レオナールだった。
その隣には、魔法使いのリーナ、聖女のエレナ、そして戦士のガルフもいる。
「……何の用だ?」
ユークの声は冷たかった。
「お前を迎えに来た」
そう言ったレオナールの目には、焦りと執念が宿っていた。
「お前がいないと、俺たちは……」
言いかけて、歯を食いしばる。
自分たちが、ユークを追放してからどれだけ堕ちたか。
それを認めるのは、勇者だった彼にとって屈辱だった。
だが、事実だった。
ギルドではEランクに降格され、王国からは勇者の称号を剥奪され、戦闘では惨敗を繰り返す。
そして今、王都ではユークの名前が英雄として囁かれ、自分たちは「落ちぶれた元勇者パーティー」扱いされている。
だからこそ——
「ユーク、お前が必要なんだ!」
思わず、叫んでいた。
レオナールの声が、王都の夜に響く。
リーナとエレナも、必死に訴えかける。
「ユーク、お願い! 戻ってきて!」
「あなたがいれば、私たちは……!」
しかし、ユークは彼らを一瞥し、無表情のまま答えた。
ユークは静かに歩みを進め、レオナールたちに向かって言った。
「お前たちは、俺を追放した。そうだよな?」
「……それは……」
「それなら、もう俺に関わるな」
冷たく突きつけられた言葉に、レオナールの拳が震える。
「……違う! 俺たちは、お前を……!」
「今さら何を言おうが、どうでもいい」
ユークは淡々と続けた。
「お前たちにとって、俺は『補助役』だった。それで十分だったはずだ」
「なら、今の俺は『必要のない存在』のはずだろ?」
レオナールは言葉を失う。
だが、それでも——
「俺は……まだ終わりじゃない……!」
そう呟くように言った。
「……勝手にしろ」
それだけ言い残し、ユークは踵を返した。
「……俺にとっては、もう終わった話だ」
その一言で、場が凍りついた。
レオナールたちの表情が、愕然としたものに変わる。
「そ、そんな……」
「終わった話って……そんなの、認めない!」
だが、ユークの目には何の感情も宿っていなかった。
ユークが立ち去ろうとしたその時——
「待てッ!!」
突如、彼は剣を抜いた。
「お前が、俺たちより強くなったなんて……認めない!!」
その目には、嫉妬と焦りが渦巻いていた。
——自分たちよりも先に進んでしまったユーク。
——誰もが称賛する存在になったユーク。
——自分たちが「必要だ」と言っても、冷たく突き放すユーク。
すべてが、許せなかった。
「お前が俺たちに従わないなら……力づくででも連れ戻す!!」
叫びながら、ユークに向かって剣を振るう。
だが——
「……愚かだな」
ガキィン!!
一瞬。
ユークはレオナールの剣を、片手で軽く受け止めた。
そして——
「これが、俺とお前の差だ」
次の瞬間、レオナールの剣は粉々に砕け散った。
レオナールは、呆然と砕けた剣を見つめる。
「……嘘だろ……」
ユークは一歩も動かず、ただ静かに言った。
「二度と俺の前に現れるな」
そう言い残し、ユークはその場を去っていった。
残されたレオナールたちは、何も言えずにただ立ち尽くしていた——。
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