第15話 『元パーティーの仲間たちを超えて、王国の座を狙う!?』
ユークは王都に到着してから数日、街の様子に少しずつ慣れ始めていた。王都の広大な規模、賑やかな市場、そして煌びやかな宮殿が一望できる位置から、ユークはぼんやりとその景色を見渡していた。だが、どこか異質な感覚が胸に残る。それは、以前訪れた場所とは何かが違う。街を歩けば、他の冒険者たちも多く見かけるが、今は何となくその存在が浮いているように感じた。
「いくらなんでも、余所者感が強いな…」ユークは苦笑し、気にせず歩みを進める。
だが、その時、目の前に突然、上品な服装をした男が現れた。彼はユークをじっと見つめていた。その目には、ただ者ではないような鋭い視線が宿っている。
「あなたがユーク様ですか?」男は穏やかに声をかけた。
ユークは一瞬立ち止まる。
「俺のことか?」
「はい、実は王国の貴族の者でして…」
男は一礼し、さらに続けた。
「あなたがドラゴンを討伐したという噂を聞き、ぜひお話を伺いたいと思いまして」
「噂…か。大したことじゃないさ」
ユークは軽く肩をすくめた。
「いえいえ、あなたの実力は王国中に響き渡っています。是非、我が家に仕官していただければと思いまして」
男は真剣な表情で言った。
「仕官? いや、俺はただの旅人だし、そんなのには興味ないよ」
ユークは答える。
男は少し驚いたような顔をし、それでも諦めずに言葉を続ける。
「しかし、あなたの力があれば、我が家の家計や名誉が大きく向上することは間違いありません。何かしらの対価をお渡ししますので、少しでもご考慮いただけませんか?」
「うーん…あまり、こういうのは面倒だな」
ユークは再度肩をすくめ、何も言わずに歩き出す。だが、その直後、男は慌てて後ろから声をかけた。
「お待ちください! 実は、王女セリナもあなたの力に興味を持っておられます」
ユークはその言葉に、足を止めることなく顔だけを男の方へ向けた。
「王女?」
「はい。王女セリナ様が、あなたに会いたいと言っておられます。あなたの実力と、何かしらの契機を見出して、何かお力をお貸しいただけるのではないかと」
男は少し顔を赤らめながらも、熱心に続けた。
「王女に興味を持たれているってことか」
ユークは無表情で答える。
「でも、俺はただの冒険者なんだ。いちいちそんな大層な期待に応えられるわけがない」
「いえ、王女はそのようなことを言っておりません。ただ、あなたの力を大いに評価されており、ぜひ一度お会いしてみたいとのことです」
男は頭を下げ、何度もお願いするように促してきた。
ユークはしばらくその場で考え込んだ。王女に会う理由もないが、もしかすると王国の裏事情を知ることになるかもしれないという好奇心が、わずかに胸の中で芽生えた。だが、すぐにその考えは振り払った。
(王女だって、結局はどこかで利用しようとしているだけだろう。俺にとって、どんな関わりも面倒事を増やすだけだ)
「分かった、会うだけなら」
ユークは冷たく答えると、その場を後にした。
男は嬉しそうに頷き、ユークの後ろをついてきた。
王宮の敷地内に入ると、そこは一層の静けさが支配していた。大きな扉が開くと、華やかな装飾が施された廊下が続き、ユークはその壮麗さに少し圧倒される。数々の絢爛な絵画や高級な装飾品が目を引くが、ユークはそんなものに目もくれず、目の前に待ち受ける王女に意識を集中した。
そして、ついに王女の前に到達した。王女セリナは、非常に優雅で落ち着いた雰囲気を持っていた。金色に輝く長い髪、青い瞳、そして白いドレス。まるで一枚の絵画から抜け出してきたかのような美しさだ。しかし、その美しさの裏には、鋭い知性と強い決意を感じさせる眼差しがあった。
「ユーク様、お待ちしておりました」
セリナ王女は穏やかな微笑みを浮かべながら言った。その声には、どこか威厳があり、同時に人を引き寄せる力があった。
ユークはわずかに目を細め、無表情で答えた。
「呼ばれたから来ただけだ」
「ありがとうございます。噂に聞く通り、あなたの実力には驚かされました」
王女はユークをじっと見つめながら続けた。
「ドラゴン討伐の実績、あれは王国にとっても非常に重要な出来事でした。」
「ただの偶然だ」
ユークは素っ気なく答えた。
「そうでしょうか?」
王女は少し微笑みながら、その言葉を受け流す。
「しかし、あなたの力を使っていただければ、王国を大いに助けていただけると思うのです」
「王国に助けるつもりはない」
ユークは冷たく答えた。
「俺はただ、自由に生きていきたいだけだ。」
「自由…」
王女はゆっくりと頷きながら言った。
「あなたが自由を求めているのは理解できます。しかし、私たちはあなたの力を必要としているのです。私たち王国のために、少しでもその力を貸していただければ、王国がもっと強くなることは間違いありません」
ユークはその言葉に一瞬、立ち止まるような気持ちになった。王国の力を借りて生きるという選択肢は、確かに魅力的だった。しかし、同時にそれがどれほど厄介なことかも理解している。
「…俺は誰かのために戦いたくはない」
ユークは低い声で言った。
「では、何のために戦うのですか?」
王女は問いかけた。
「俺のためだ」
ユークは答えた。
その言葉に、王女は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに微笑みを浮かべた。
「あなたの強さ、信念、そして自由を求める気持ち、私はそれを尊重します。
でも、どうか…王国に少しだけ力を貸していただけませんか?」
ユークはしばらく黙ったまま、王女を見つめ続けた。その眼差しに、王国への興味がわずかに芽生えていたことに気づいた。
「分かった、考えておく」
ユークはそう言い、部屋を後にした。
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