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「いらない」と言われた万能スキル、俺が本気で使ったら世界最強でした  作者: 一ノ瀬咲
第一章 追放と覚醒──万能の力が世界を変える時
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第12話 『ドラゴンを討伐したSランク冒険者、無名のはずが王都で話題に?』

森を抜けた先に広がる城壁都市ガルス。


 この都市は王都へ続く街道の分岐点として栄えており、多くの商人や冒険者が行き交う活気あふれる町だ。


 堅牢な城壁に囲まれた町には、王国紋章の旗が掲げられた門が二つあり、それぞれに鎧をまとった兵士たちが立っていた。


 ユークは通行税を支払い、城壁をくぐる。


 (……王都に近づくほど、街が整備されてるな)


 以前いた小さな村と違い、石畳が敷かれ、街並みもきれいだ。商業ギルドの建物や、貴族らしき者が馬車に乗っている姿も見える。


 通りを歩いていると、武具を売る露店の前で騎士風の男が剣を見比べていた。


 「この剣は王都で流通しているのと同じか……?」

 「へへっ、良い目をしてるね旦那。こいつは鋼鉄とミスリルの合金で——」


 (なるほどな……やっぱり王都の影響が強い街って感じか)


 交易の要所としての役割を担っているガルス。

 この街での情報収集は、今後の旅を進める上で役に立つかもしれない。


 市場の近くを歩いていると、数人の商人たちが熱心に話し込んでいるのが耳に入った。


 「おい、聞いたか? 二日前、西の森でドラゴンが討伐されたらしいぜ」

 「ああ、俺も聞いた! たった一人で仕留めたSランク冒険者がいたってな!」

 「そんなヤツいたか? どこのギルドにも所属してねぇらしいが……」


 ユークは一瞬足を止めたが、何事もなかったように歩き続けた。


 (……やっぱり噂になってるか)


 考えてみれば当然だった。

 ドラゴンは高位の魔物で、討伐となれば国の記録に残るレベルの大事件だ。

 それを単独で仕留めたのだから、話題にならない方がおかしい。


 ——とはいえ、噂が広がるにつれて、どうにも内容が誇張されていっている気がする。


 「どこかの国が秘密裏に育てた英雄かもな」

 「いや、封印されていた伝説の戦士だったりしてな!」


 (……いや、ただの旅人なんだけどな)


 なんとなく気まずくなりながらも、ユークはギルドへ向かうことにした。


 ギルドの重厚な扉を開けると、中は騒然としていた。


 壁には討伐依頼や探索任務の紙がびっしりと貼られ、中央には巨大な掲示板がそびえ立っている。

 受付カウンターの前には複数の冒険者たちが列をなし、各々が報酬の受け取りや新たな依頼の申し込みをしていた。


 だが、それ以上に目立ったのは——


 「なあ、聞いたか? ドラゴンを討伐したSランクの新入りの噂!」

 「ああ、どこのギルドにも所属してねえんだろ? どんなヤツだ?」

 「まさか、伝説の戦士の再来じゃねえだろうな!」


 まるで都市伝説を語るかのような盛り上がり方だ。


 ユークは眉をひそめながら、カウンターに向かった。

 だが、その瞬間——


 「……おい」


 渋い声が響いた。




 振り向くと、黒髪のひげ面の中年男が腕を組んでユークを見つめていた。

 ギルドの奥から歩いてきた彼は、明らかに普通の職員とは違う雰囲気を持っている。


 「お前が、ユーク・アーデルか?」


 鋭い視線が突き刺さる。


 「……そうだけど?」


 するとギルドマスターは顎を撫で、深く息をついた。


 「やっぱりな……ちょっと奥へ来てもらおうか」


 一方、その頃——


 王都の王宮では、王女セリナが豪奢な玉座に腰掛け、報告を聞いていた。


 背後には金の装飾が施された大理石の壁、天井には細やかなステンドグラスの窓がはめ込まれている。


 「無名のSランク冒険者が、単独でドラゴンを討伐しました」

 「無名? どこの貴族の出でもないの?」

 「はい。どこのギルドにも正式には所属せず、王族とも関係がないようです」


 セリナは微笑み、椅子の肘掛けに指を滑らせた。


 「興味深いわね……彼を王都に招きなさい」


 翌日、ユークがギルドで宿の手続きをしていると、突然ギルドの扉が開かれた。


 「ユーク・アーデル殿!」


 青い軍服をまとった使者が、恭しく頭を下げる。


 「王女セリナ様より、王都への正式なご招待を賜っております」


 ギルド内が静まり返る。


 ユークは心の中で絶望した。


 (……めんどくさくなってきた)


 こうして、ユークの望まぬ英雄伝説がまた一歩進んでしまったのだった。

読んでいただきありがとうごさいます!

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