#2-11 遮竜柱郡
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「んむっ、んっ、うめぇ!」
朝方朝食を取らず出たせいで空腹も相まってか、狼呑狗嚥バリにピザロールをガツガツと平らげていく、正直いって行儀は最悪だが、こゆう食べ方は開放感があって気持ちがイイ。
一息つき、途中で買ったミントフレーバーなレモンジュースを油に蹂躙された口の中を水分で奥へと流し込む。
『駄目ですよ、マスターちゃんと咀嚼しないと、飲み込む様に食べるのは行儀的にもですが、消化への負担、胃や腸への負担が通常の66%上がります』
「それは、おまえみたいにゆっくり食べろてことか?」
『はむ(はい)』
露店街から離れ、居住区の広く開けた広場のベンチにて休憩と昼飯がてら俺は座っていた。
そんなアリスも手に小さなピザロールを両手で握り、まるでカタツムリの様にゆっくりと咀嚼し食べていた、無論だがアリスAIであり実物のピザロールを食べてるわけではない、だが半分は本物を食べてるとも言える。
俺の昼飯にアリスもピザロール食べたいと言いはじめたので、俺が食べる前にロールの一部だけ千切って包み紙の包めてベンチの脇に置いた。
そして俺が肌身離さず身につけてるアリスの本体である石版、を覆ってるケースの一部から伸ばしたケーブル針を、千切ったピザロールにブッさしていたのだ。
そのケーブル針から得られる分子データーを元に映像に出しているピザロールをゆっくりと食べていた。
「アリスさん・・・おいしいのか?」
『わかりません、味覚がないもので、でも何事も形からとも言いますし、はむっ』
食べたいとは言ったものの、アリスはこの上なく無表情にそのピザロール(映像)を食べていた。
当たり前の様だが俺の前でふらふらと動き回るこの幼女だが、AI故に生物的五感はない、人の真似は出来ても人ではない2進法の世界の住人だ。
『不思議です、この分子構造数値でしたら地下に居た物質生成機で作った模造食品でも問題ないはずですが、マスターはやはりこちらの食べ物がいいのですか?』
「そりゃそうよ」
『はむっ、やっぱりわかりません、味覚がない以上結論が出ません』
「だろうな、いつか判るといいな」
『善処します』
相変わらず脚をぶらつかせ、ちょこちょこと生成したデーターを食べてる姿は可愛いらしい。
見渡せば広場は人の往来がゆったりとし、中央の噴水では、子供が数名水遊びをしていた。
遠くでは荷馬車がこれでもかと荷物を詰め込み運搬していた。
近くのほかベンチでは若い男が女とイチャついていた。
それをまた別のベンチで街の巡回休憩なのか鎧を着た兵士が頭兜を脱ぎ、白い目で俺とおなじピザロールを齧りながら向かい側のアベックを睨んでいた。
平たく言えば平和であり、ここが10年前は機械に襲われた国とは思えないほど長閑だった。
それもこれも遠くで視界にちらちらと見える、国のの至る所にある謎の物体のお陰とピュティが説明していた事を思い出す。
偉大なる先人の遺物 ・遮竜柱郡
この国の至るところに斜めに差し込まれた円柱状の白い巨大建造物、エルフたちはそれを偉大なる先人の遺物と敬称し、それらが魔竜からこの国を守り繁栄させ続けてきたとピュティは言った。
偉大なる先人の遺物と呼ばれる物体がある国は、魔竜はほぼ襲撃してこない、来ても偉大なる先人の遺物が勝手に装置が対処するため、安全に国が発展しマグナ国家と言われ生存率がとても高い。
マグナ国家の隣接する国や街周辺一帯は準マグナと言われ生存率は並よりちょっとだけ高い、そしてそれ以外のいつ機械の群れに襲われてもおかしくない非マグナと国家の格が分かれている。
無論、この国は一度機械に襲われたことを考えれば、マグナ国家だから絶対安全という訳にはいかないらしいが。
「遮竜柱郡ねぇ、あれがマグナてやつか、しかしあからさまな人工建造物すぎてびっくりしたわ」
長閑の中世の営みの中に異物の様に聳え立つ白き斜塔は、非日常感を彷彿とさせるが、道行く者たちは誰もそれには気にも留めず、これがこの国の日常なんだろうと理解する。
『はむっ、私の知識によれば第一級分類建造物ですねあれは、第一級生命情報防波堤、通称エリコの壁』
「なんだそれ?防波堤?」
『海ではないですよ』
いまだに食べてる仕草をし、情報を咀嚼してるアリスが口を開く。
『空から降り注ぐ、流星への防波堤です』
「それてつまり・・・」
『はい、エルフたちが遮竜柱郡と呼んでるアレらは、本来は遊星異星文明体からのメテオ着弾から生命を守る強力な電磁防壁発生装置です』
「まぁそんな気はしたが、また遊星異星文明体か」
『とはいえ遊星異星文明体を産み出す、≪原初石版≫は人類の並々ならぬ種族決死の作戦により破壊作戦が成功し、流星は降らなくなりましたが』
ようやく満足したのか、はむはむとたべてたピザロールを食べ終え、口を袖でごしごしと拭く仕草をする。
『すこしこの柱たちが気になりますね』
「なして?」
『これは第一級分類建造物です、なのにピュティから聞いた説明では、時折迫ってくる魔竜は柱に阻まれ国に立ち入ることが出来ないと』
「ん?問題か?敵が来たら自動で起動するんだろ?」
『敵が来たらしますよ、敵ならね、ここの防衛システム上敵て誰のことを指しますか?』
「そりゃ、遊星異星文明体、あぁそうか」
すこし考えれば判るのだ、対遊星異星文明体用の防衛装置なのだから、人間時代はAIたちはすべからく機械の軍隊として戦った所謂友軍なのだ、識別上は友軍判定されてるはずなのだから防衛装置はそもそもAIが率いる機械軍に反応はしない。
だが実情は攻撃しにくる≪惑星破滅派≫の機械に反応し防御を展開するとなれば、不思議である。
『つまりです、敵襲時人為的に防御装置であるエリコの壁が展開されていることになります、そしてそれには人類の生体認証が必要です』
「ふむ・・・人類ね」
ふと視界の端でいまだにイチャイチャしてるアベックの女の方は耳が短いことに気づく。
『ちなみ、いま現存してる新人類と旧人類では遺伝的に大きな隔たりがあります、機械の判定上いまの耳の短い人は人類とは認めてません、それは私たちAIとてそうです』
俺のわずかな疑問を速攻で潰しにきたわけだ、やっぱおまえ俺の頭のプライベート覗いてるだろ。
『何より、一番の謎はどこからその電力を供給してるのかです、この国をまるごと覆えるほどのでかい装置であれば、相当の設備が地上になければなりませんが、衛星で見る限りその様なものはありません』
「地中に埋まってるとは考えられないのか?」
『それこそありえません、エリコの壁に常時送る電源は予備電源でもかなりの電圧になるはずです、そこから任意に起動する瞬間電圧も考えれば、発する熱量の装置を地中に埋めるのは自殺行為です、故にこうゆう大規模装置の電源施設は地上に置かれます』
「魔法とかは?」
無理だと思うがいちおアリス先生に聞いてみた。
『無理ですね、そもそも格が違いすぎます、所詮魔法というのはナノマシンが発する微弱運動です、これだけ大規模な建造物を動かせるほどの電圧を作ることは技術上不可能』
「なるほどね」
と飯後の休憩がてらにアリスにより周辺を見回っての所感と考察を聞いていた。
結局のところまだ情報が不足で何も判らないてのが実情だ、なにより昨日手紙の件もある、そして当初の目的である≪EXE≫ともまだ逢えてない、これらがすべて明かされるときには点と点が繋がりえるのだろうか?
「ねぇ、お兄さん」
「ん?」
いろいろ思案しながらぼーと風景を眺めていた俺に何物かが声をかけてきた。
「お隣いいですかい?」
ふと周囲を見ると、相変わらずアベックはイチャついてるが、兵士は職務に戻ったのか代わって老夫婦がベンチに座り日向ぼっこをしている。
声をかけてきたのは長い布のローブを身に纏い、背は低く恐らく中学1年ぐらいの歳で、顔にすこし幼さを残した少年だった、栗色の短髪に長いエルフの耳、手には俺と同じく紙袋に包んだピザロールが収っていた。
「あぁ、いいよ」
「あんがとう、お兄さん!」
そう言って少年はアリスが居た場所の席に座り、手元の昼飯を解き食べようとする。
「あ・・・しまった何か飲むもの買っとけばよかった」
少年はやってしまったという表情になり、そう自責を呟く。
わかるぞ少年、あのピザロール口の中が油まみれになるからな、くちをそそぐ飲み物はあるにこしたことはない。
「潔癖じゃなければ、まだ半分残ってるがいるかい?」
「おお、いいのかい?お兄さん、いるいる!」
「おうおう、そうか、ほいよ」
なかば小粋な洋画ジョークのつもりだったが、まだ半分も残ってるジュースを少年に渡した。
ジュースを受け取った少年は嬉しそうにロールを食べながらジュースを飲む。
「さてと、そろそろ俺はいくよ、じゃな」
そう言って俺は、食後の休憩も終わりそろそろまた国内を見て回ろうかと思っていた。
「あぁ、ちょっと待ってお兄さん」
「ん?どうした少年、礼はいらんぜ」
立ち上がろうとした俺を少年は引き止めようとする。
「いま立ち上がると、椅子の下に仕掛けた地雷で死ぬよ」
「そっか、じゃもうすこし座ろうかな・・・てっ・・・はっ?!」
今なんて?言ったこの少年?
「え?いまなんて・・・」
「だから、さっき座るときにお兄さんの席の下に自走地雷設置したから、立ったらそのまま天国まで吹っ飛ばされるよ」
「え?え?・・・え?」
唐突に地雷という単語がこの長閑な風景の一角、しかも俺の椅子の真下にあると告げられ、頭がさらに混乱を呼ぶ、何故?どうして?そしてこの少年は一体何者なんだ?
『マスター落ち着いてください、はったりも考えられますが、ほんとに”自走地雷”なら先ほど座るときに設置された可能性があります』
相変わらず俺があげたジュースを飲みながらもぐもぐとピザロールを食べる少年。
「お前なのか?昨日の窓枠に封筒を張ったのは?・・・」
「あぁ、あれ?うん、そうだよ、中身がナンなのかは聞いてないけどね」
「それて・・・そうか、誰だ、お前に命令したのは」
「それはそこの本人に聞いて、うちはここでお兄さん引き止める役だから」
そこで少年がアゴで指したのは俺の席の後方、背逢わせで置かれてたベンチの裏側に気づけばもう一人人物が座り、先ほどの一部始終俺と少年のやりとりを聞いていたことに俺は初めて気づいたのだった・・・。
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