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#2-10 ピザロール

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 おおきな油で熱された鉄板に厚めのパイ生地が敷かれ、生地を焼くいい匂いが鼻腔をくすぐり食欲を刺激する。


 「ふわぁ・・・」

 『わー』


 だがそんな食欲の前でも俺がたまらず大きな欠伸あくびをしてしまう、そして隣の幼女アリスもわざとらしく追従する様に口を半開きにし俺の欠伸を真似する。

 昨日の夜に届いた謎の手紙により、俺は朝まで警戒してて身構えてよく寝れなかった、結局それきりっ何事もなく朝日を迎い、おかげこの様でまた欠伸が出そうなのを必死で堪えるありさまだ。


 『ふむ、例の手紙を筆跡鑑定してみましたが、マスターの記憶上には該当する人物はいませんでしたね』


 コアラの如くアリスは俺の片腕に抱きつきながら、昨日の手紙の鑑定を報告する、無論アリスも鉄板上の物が気になるのか同じく鉄板をじっと見つめながら報告をしいた。

 鉄板ではいい匂いを漂わせほどよく焼かれた生地に、鉄板の隣で焼かれた野菜や肉の具材をどんどん載せられていく、ピザよろしく薄くスライスされたチーズもトッピングされ、仕上げとしてピザらしき物に薄緑のソースをかけて、そのピザを最後にロール状に巻きつけて、食べやすい様に紙に包む。


 「あいよ、耳無しのあんちゃん。特製ガラドニカ巻きお一つね、」

 「お、あんがとうおっちゃん」


 今日は朝からピュティは国の要人や貴族たちが屋敷に面会しにくるため、部外者の俺はこうして情報収集がてら王国内を見て回っていた。

 屋敷ではレズリーが朝食を用意してくれようとしたが、忙しそうなメイドの人たちの働き見て丁重に断りをし、そのまま屋敷を後にし、こうしてガラドニカの商業地区にある露店屋台にて美味しそうで懐かしい匂いの食べ物に釣られ、エルフの店主に注文をし、こうして焼きたてピザツイーストらしき食べ物を目の前に生唾を飲み込む。


 「えっとちょっとまってな、たしか銅貨3枚だっけ?一、二、三、と」

 「あぁええよええよ~あんちゃん、御代は結構さ!」

 「え?」

 

 いざ支払いをと、ポケットから取り出した銅貨3枚を渡そうとするが、店主は予想外のことを言う。

 

 「あんた、関係者か何かなんだろ?ドリアドネ公の」

 

 店主は自らの服の胸元をぽんぽんと指を指す、おそらくそれは俺の胸元につけてあるブローチのことを指してるのはそう時間はかからなかった。

 胸元には朝出かける前にレズリーが俺に付けてくれた、ドリアドネ家の家人を示す青い宝石が埋め込まれたブローチがキラキラと太陽の光に照らされ輝いていた。


 「いやぁ、うちは昔≪鋼蜘蛛アラクネ≫の襲来でドリアドネ公に助けられてねぇ、こうしてなんとか生きてられるのもそのおかげよ」

 「はぁ」

 「はは、だからこうしてドリアドネ公の縁の人にはオマケをしてんのよ」

 「そうだったんですね、あはは~ありがとうございます!」

 

 やべぇ・・・言えねぇ・・・大してえんもゆかりもないだなんて、だがここで訂正すればややっこしい事になる、ここは日本人特有の場の空気を読むとして話を合わせることにした。


 「しかし、よかったのかおっちゃん?コレ」

 「いいてことよ、たいして高くねぇし日ごろのドリアドネ公への感謝てことよ、もってけもってけ」


 そう店主のおっちゃんは陽気に話す、若干申し訳なささはあるものの、ここまで押されたら貰っておかないと失礼な気もしてきたわけだが・・・。


 「だ~れ~が、高くないですって!」

 「お、おめぇ!」


 そんな俺と店主のやりとりに割り込んできたのは、先ほどから露店裏で黙々とパイ生地を捏ねては広げていたエルフの幼い少女だった。

 少女はアリスと同じぐらいの背幅で、小さなエプロンをつけ、むっとこちら主に店主のおっちゃんに向けて顔をむっとさせていた。


 「お父さん、いい加減にそのオマケするのヤメテて言ってるでしょ!」

 「シエラ、そんな事言ったておめぇ恩人さんたちだぜ、受けた恩を忘れちゃ駄目てお父さんいつも言ってるだろ」

 「それはそうだけど、これはこれ!店は慈善事業じゃないの!こんな頻繁に兵士さんや関係者にオマケしてたらウチは商売あがったりなのぉ!材料費だってタダじゃないのよ!」


 そう娘のシエラに一喝され、店主のおっちゃんはしゅんとなっていた。


 「あの、俺やっぱり払います!」

 「もういいよ、お兄さん、ウチのお父さんがあげるて言った以上はあげるから、それより美味しかったらまたうちの店来てね!」


 再度支払いを断られたが、ちやっかり店の営業はしかっりとする少女に感心をした。


 「あはは、あんちゃん見苦しい所みせちまったな、これうちの可愛い娘なんだよぉ」

 「もうお父さん!店番私やるから、後ろで生地作ってて!」

 「わかった、わかったからて」


 そう娘に追いやられる様に店の奥へ押し込まれ、代わりに少女が店番を代わる。

 何気ないこの国の下町の一幕を微笑ましく感じ、俺はその場を後にした。


 「お兄さんぁ!また来てねぇ!」

 「おう!次ちゃんと客として来るから!」


 去り際に店番をしているシエラに再度呼ばれ、それに応じる様に俺は言葉を返す。

 

 『ジー』


 そして一連のやりとりを不思議そうに眺めていたアリスは、気づけばずっと俺が手にしているピザロールをじっと見つめていた・・・アリス、食べたいの?




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