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第28話 麻痺した心


 兄と再会した喜びに浸る間もなく、私は亡くなった父方の祖母の葬儀の場に立たされていた。

 線香の匂いと、黒い服を着た見知らぬ大人たち。重苦しい空気が漂う中、私はようやく手に入れた絶対的な安心である兄の背中に、片時も離れまいとぴったりとくっついて過ごしていた。


 そこへ、父の妹である「叔母さん」の一家がやってくる。


 幼い私の目に強烈な違和感として焼き付いたのは、その出で立ちであった。私の母は、つきっきりで祖母の過酷な介護を押し付けられ、心身ともにすり減らしてひどくやつれ果てている。私を愛してくれていた余裕すら失い、ヒステリックに手を上げるほど壊れてしまった母。


 それなのに、亡くなった祖母の実の娘であるはずの叔母は、煌びやかなメイクを施し、まるでどこかのパーティーへ着飾って出かけるかのような華やかな姿で現れたのだ。


 なぜ、実の娘であるこの人は親の世話をせず、血の繋がっていない私の母だけがあんなにも苦しまなければならなかったのか。大人の世界の醜く理不尽な構図が、六歳の胸に冷たい疑問として落ちていく。


 叔母が連れてきた子供たち、つまり私にとっての従姉妹たちもまた、小綺麗で立派な服を着せられ、きちんと整えられていた。親元を離れた田舎暮らしで薄汚れ、自分だけのランドセルすら持てない私とは、明らかに違う「別の世界」の子供たちに見える。


 そして、その目に見えない断絶を決定づけたのは、他でもない叔母の言葉だった。

 彼女は私と兄の姿を冷ややかに一瞥すると、あろうことか私たちの目の前で、自分の子供たちに向かってこう言い放ったのである。


「あの子たちとは、あんまりお話ししないようにね」


 血の繋がった親族から突きつけられた、あからさまな見下しと明確な拒絶。あの日、従姉妹たちと言葉を交わすことは一度もなかった。ただ、住む世界が違うのだという痛烈な印象と、大人たちの冷酷なエゴだけを残し、それが叔母一家との最初で最後の対面となった。


 葬儀自体は、滞りなく静かに終わっていく。


 当時の私に詳しい理由が教えられるはずもなかったが、どうやら父は、あの葬儀を境に叔母一家と完全に縁を切ったらしかった。


 後になって聞いた記憶によれば、叔母が宗教に入っていたことや、父からひどくお金をせびっていたことなどが絶縁の理由だったという。母を壊した過酷な介護の裏で、大人たちの間にはそんな生々しい事情まで渦巻いていたのだ。そこには、決して埋まることのない決定的な溝があったのだろう。


 すべてが終わった後、私の記憶に色濃く残っているのは、父が肩を震わせ、静かに涙を流していた姿だけである。


 しかし、それを見つめる私自身の心には、「悲しい」という感情が一滴も湧き上がってこなかった。おばあちゃんが死んで、お父さんが泣いている。それなのに、胸の奥はひんやりとした空洞のままである。


 理不尽な暴力や、先の見えない孤独を一人で耐え抜いてきたあの三年間。泣いてもどうにもならない現実を前に、生き延びるため無意識に感情を押し殺し続けた代償として、私の心はすっかり麻痺してしまったのではないか。


 父の涙をただ冷めた目で見つめながら、私は自分自身の内側に広がる静かな虚無感を、まるで他人のもののようにぼんやりと観察していたのである。



ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。

私の人生録が、少しでもあなたの心に触れたり、「この先どうなるんだ」と興味を持っていただけたなら幸いです。

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何卒、よろしくお願いいたします。

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