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第7話 副業×呪いの人形(5)

いつも読んでいただき、ありがとうございます。

今回は短めですが更新します。

―――月の草―――


「さて、ゆっくり話そうじゃないか。」


和馬は机の上にある人形が入った黒い袋と対峙している。

相変わらず、人形からは悪霊の気配は感じられない。


悪霊が憑いていないのか、憑いていても完璧に気配を消しているのか。

家の中には他に悪霊の依り代になりそうなものはなかった。

袋の御札で悪霊の力を抑え込んでいるが、一旦人形を出してみるのも手だ。


「袋越しに話したかったけど、仕方ないか。」

和馬は黒い袋から人形を取り出した瞬間、絶句した。


人形の顔に黒カビがびっしり覆い尽くし、ブロンドの髪は所々抜け落ちて見るも無残な姿になっていた。

深いブルーの瞳は怪しく光り、和馬を見つめているように感じる。


「…絶対、これに憑いてるじゃん。」


和馬は机に人形を置く。

「お前は誰だ?どうしてあの家にいた?」

「…。」

「お前が成仏できるよう助けるから、何か話してくれ。」

「…。」

人形は変わらず答えない。

しばらく人形を見つめていると、小刻みに人形が震えていることに和馬は気付いた。


パキッ!!


乾いた音を立てて、人形の左額から右の頬にかけて大きな亀裂が入った。


「話したくないようだな。」

和馬の言葉に答えるように人形から吐き気を催すような嫌な感じが漂ってくる。

悪意に満ちていて、息が苦しくなるような感じがする。

結界になっている店の中でこれほどの空気を漂わせるのは、やはり只者ではない。


話してわかる相手じゃない。


「あいつに電話するか。お前、最後のチャンスだぞ。あいつ、血も涙もない奴だからな。」

「…。」


和馬はスマホで電話をかけた。

『なに?』

数回の呼び出しで出た女は明らかに不機嫌そうな声だった。


「おう、久しぶり。今話せるか?」

『板橋、また変なのと関わってるだろ。』

「なんでわかるんだよ?」

『お前の声の後ろでうめき声が聞こえる。』


店には和馬しかいない。


『除霊できないんだから、気をつけろよ。で、その件で助けてほしいっていう電話か?』

「おっしゃるとおりでございます。」

『前に渡した袋に入れて、明日持ってこい。』


電話を切った後、和馬は人形を元の黒い袋に入れ、店のキャビネットの中に入れた。

念のため、鍵をかけておく。


―――楠家―――


係長は久々に体のだるさや肩の重苦しさも感じずに快適に過ごしていた。


今日からぐっすり眠れる。

ベッドに入った係長はうとうとし始め、やがて意識が遠のいていった。


コンコン…。


コンコン…。


窓をノックする音で係長は目を覚ました。

―――こんな夜中に誰だ?


「パパ、開けて。」


あかね?なんで外にいるんだ。


係長は寝ぼけながらもベッドから起き上がり、寝室のカーテンを開けようとしたところで手が止まった。


―――本当にあかねか?


ここは2階。

女子高生が登れる高さではない。


「パパ、開けて。家に入れないの。」


あかねの声をしたものは、再び声をかけた。


―――違う。あかねじゃない。


係長は静かに寝室を出ると、あかねの部屋に向かった。

ドアを開けると、そこには大の字で豪快にいびきをかいて眠るあかねがいた。


コンコン…。


「ひっ!!!!」


今度はあかねの部屋の窓をノックする音が聞こえ、係長は小さく悲鳴を上げた。


「ぐがっ!!…パパ?ここで何してんの?」

係長の悲鳴にびっくりしたあかねは、大きないびきと共に目を覚ました。


コンコン…。

「あかね、パパ、窓を開けて。入れないの。」


今度は春子の声で話かけてきた。


「ママ?なんで外にっ…!!」


外から聞こえる母親の声にあかねは答えようとしたが、父親に口を塞がれた。


「しー!ママじゃない。ママは寝室で寝ている。」

係長は小声であかねに伝えると、口を塞いでいた手をゆっくり放した。


「あかね、開けて。ママ寒いわ。中に入りたいの。」

あかねは外にいるものにすっかり怯え、今にも泣き出しそうになっている。

そんなあかねを抱きしめながら、係長はあかねと共に静かに部屋を出て、寝室に向かう。


寝室に戻ると、春子が窓のカーテンを開けようと手を伸ばしているところだった。

「ママ!ダメだ!!」

係長は急いで春子のもとにいくと、手を掴んだ。


「パパ?どうして?あかねが外にいるみたいなのよ。」

春子はきょとんとした顔をしている。

「ママ、あれはあたしじゃないよ!」

寝室にいるあかねを見て春子は顔面蒼白になった。

「じゃぁ…外から声をかけているのは…?」

「とにかく、窓から離れて。あかねと一緒にいてくれ…!」


係長はベッドサイドに置いているスマホを取り、和馬に電話をした。


―――月の草―――


ソファで爆睡する和馬の枕元にあるスマホから大音量で演歌が流れる。

手探りでスマホを見つけた和馬は半分眠っている状態で電話を取った。

「はい…もしもし…。」

『い…家の外に何かがいる…!2階の寝室の窓を…ノックされて…開けてくれって…!』


声の主が係長だと気づくと、完全に目を覚ました。


「外に?」

『あ…あぁ。最初はあかねの声で、次に春子の声で…でも2人とも家の中にいる…!』

それを聞いて、和馬は急いで1階の戸棚に向かった。


人形の入っていた戸棚が黒カビで朽ちて大きな穴が開いていた。

中を確認するも人形の姿はない。

ただ穴の開いた黒い袋が残されている。


戸棚の前から入り口にかけて何かを引きずった跡があり、それは外に続いていた。


「すぐに行く!絶対にそいつと話したりするなよ!」

和馬は急いでカバンを持ち、店から飛び出していった。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

よろしければ次回もまた読みに来ていただけると嬉しいです。

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