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第32話 副業×廃旅館(19)

いつも読んでいただき、ありがとうございます。

前回の続きです。

―――朝露旅館―――



「さあ、急ぐよ!」

尊の車から降りたしずは勢いよく森へ向かって行った。

「ひいばあ!」

隼人はしずを追いかけようとしたが、正玄に止められた。

「隼人君と奈美ちゃんはここで待機してくれ。」

「えー!面白い動画撮りたかったのに。」

「俺も行きます!ひいばあはクロモジのアロマでしゃきっとしているだけで、山道を歩くのは無理です!」

隼人の言葉を聞いた正玄は振り返ってしずを見る。


さっきまでの勢いはなくなり、立ち止まって苦しそうに肩で息をしている。

「こら!ドラ息子!こっちに来な!」

しずに呼ばれ、正玄は駆け寄る。



「よし!出発だ!」

しずはちゃっかり正玄の背中に陣取り、森を指さした。

「…じゃあ、2人はここで待機しててくれ。何かあれば連絡する。」

正玄はそう話すと、しずを背負ったまま森へ向かった。


「尊さん、これ」

隼人は儀式の道具一式を持った尊にクロモジのアロマを渡す。

「ひいばあをお願いします。」

隼人の言葉に尊は深く頷くと、正玄としずを追って森へ入って行った。



―――祠―――



「戸田裕也か?」

林巡査部長は男の顔を覗き込む和馬に尋ねた。

「ああ、間違いない。」

壁にもたれかかっている裕也の服は汚れているものの、行方不明当時の服装をしている。髪はボサボサで、顔や手は土で黒く汚れている。

裕也は俯いたまま動かない。

顔は写真よりも痩せ細り、瞼は窪んで唇は乾燥している。

何日も飲まず食わずなのが明らかだった。


薮下巡査は裕也の頸動脈を触り、脈があることを確かめた。

「まだ生きています!」

よく見ると、裕也の唇は微かに動き、息をしている。


「い…生きてるのか?」

小走りでやってきた係長は裕也を見て驚いた。

「薮下、応援を要請しろ。」

「はい!…ダメです。林さん、ここ圏外です。」

「外に出ないとダメか。」



和馬は裕也を寝かせようと、裕也の両肩に手を置いた。

その時、係長の肩から藁男が飛び降りてきた。

藁男は裕也に近づくと心配そうに顔を覗き、しばらく見つめている。


「藁男、この人を横にするのを手伝ってもらえないか?」

和馬は藁男に尋ねるも、藁男は裕也をじっと見つめたまま動かない。



次の瞬間―――



パコ―――――――ン!!!!!!!



藁男は思いっきり裕也の頭を引っぱたいた。



「おい―――!!!!瀕死の人になんてことをしてくれてんだ!!!」

和馬は藁尾を捕まえると、思いっきり説教した。

「その藁人形って狂暴なんだな…。」

林巡査部長は、藁男を見つめながら呟いた。


「藁男!乱暴なことはやめなさい!!」

係長は急いで裕也に近づくと、息をしているか確認する。



すると―――



「くはっ!!!!!」

突然、裕也が深く息を吸い込み、目を覚ました。

係長は驚きのあまり、体をのけぞりながら倒れ込む。


裕也は、まるで悪夢から目覚めたかのように目を見開き、少しパニックを起こしているようだった。


「びっくりしたびっくりしたびっくりしたっ!!!!」

係長は心臓を抑えながら自分を落ち着かせようとしている。


「裕也さん、大丈夫です!警察です!あなたを探しに来ました!」

薮下巡査は裕也に近づくと説明しながら警察手帳を見せた。

「け…警察?」

「あんたのお姉さんから依頼されて、みんなで探してたんだ。」

和馬は藁男を羽交い絞めにしている。


「姉ちゃん…。」

裕也はまだ現実だと信じられない顔をする。

「とにかく、ここから出ましょう。」

薮下巡査が裕也の腕を肩にかけ、立ち上がらせようとする。

「だ…だめだ!あいつが…あいつがいる限り、俺はここから出られない!」


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

次回もよろしくお願いいたします。

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