第31話 副業×廃旅館(18)
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前回の続きです。
―――禁足地―――
「ユユイノミコトの祠はこの先だ。」
斎は禁足地のさらに奥を指さす。
「和馬、やっぱりこの先にあるのか?」
斎の姿が見えない係長たちは和馬の視線の先を見る。
「そうみたいだ。神宮斎が教えてくれている。」
そう話すと、和馬は禁足地に足を踏み入れた。
全てが朽ち果てた禁足地に一歩踏み入れると、空気が冷たく感じる。
それまで聞こえていたモズの高鳴きも風に揺れる木の葉の音も全て消え、異様な静けさに包まれていた。
木々は枯れているものの、倒木せず、凛として佇んでいる。
「こんなの見たことないです…。」
薮下巡査は辺りを見渡しながら慎重に歩みを進めている。
不思議なことに禁足地の奥に進めば進むほど、空気は冷たく、重くなっていった。
「段々近づいている感じはするな。」
林巡査部長は周りの雰囲気から何かを感じ取っているようだった。
斎の背中を追いかけ、和馬はさらに禁足地の奥へと歩みを進めていく。
やがて朽ちた木々が多い茂る薄暗い中、山肌にたどり着く。
そこには人が1人やっと通れる程の裂け目があり、その先は漆黒で埋め尽くされていた。
裂け目の両脇には大きな岩が置かれ、裂け目を横切るように古びた注連縄が張られている。注連縄には紙垂が付いていたようで、縄の一部に紙のようなものが張り付いており、裂け目の先が神域であることを示している。
「ここがユユイノミコトの祠に通じる地下道だ。」
斎は黒い裂け目を指さした。
「ここが祠に通じる入り口だそうだ。」
和馬も裂け目を指さす。
「いや、想像以上に不気味過ぎるだろ…。」
係長は裂け目を見ながら怯えたように呟いた。
係長の胸ポケットから藁男が飛び出し、50㎝大の大きさになるとファイティングポーズを決めた。
「藁男、手伝ってくれるのか?」
和馬は藁尾に声をかけると、藁男はピッと片手を上げて返事をした。
「ありがとう。でも、ユユイノミコトには手を出すなよ。」
藁尾は再び片手を上げた。
「この先は本当に危険だ。ユユイノミコトは日中の時間は活動していないようだが、油断するなよ。」
斎はそう話すと、静かに消えていった。
和馬達は懐中電灯を手に1人ずつ注連縄を潜り抜けて裂け目に入って行った。
中に入ると、石階段があり、地下へ続いている。
4人は階段を下りていく。
「この臭いはなんだ…。」
係長は腕で鼻を塞ぐ。
肩に乗っている藁尾も鼻はないものの、臭いを感じるのか鼻があるであろうところを手で隠している。
地下に進むにつれ、悪臭が強くなっていく。
しばらく階段を下りていくと奥に長い空間が現れた。
懐中電灯で空間の奥を照らすと、古びた祠があった。
半分が壊れており、祠の下には壊れた残骸といくつかの岩が落ちている。
天井をみると、穴が開いており、祠の下の岩はここから落ちたことがわかった。
「この場所の上あたりが源泉だ。源泉を引くための工事が行われた影響で岩が崩れたんだろう。」
林巡査部長は懐中電灯で天井を照らしながら話す。
「祠が壊れたことで、ユユイノミコトは祟り神になってしまったと。」
和馬も天井と祠を見ながら話した。
「「ひっ!!!!!!」」
和馬の後ろで薮下巡査と係長の静かな悲鳴が聞こえた。
和馬と林巡査部長が振り返ると、顔面蒼白な係長と薮下巡査が空間の横を懐中電灯で照らしていた。
2人はゆっくり係長たちが見ている視線の先に目を向けた。
「「っ!!!!!!」」
そこには白骨化又はミイラ化した人の遺体が何体も山積みされていた。
遺体は様々な年代の服を着ていて、中には登山の服装をしている者も何人かいた。
「悪臭の原因はこれか…。」
和馬は空間の隅から隅まで懐中電灯で照らすと、遺体の山があった場所の反対側の壁にもたれかかる男の姿を発見した。
和馬はゆっくり男に近づいていく。
「おい、和馬…!あぶないぞ…!」
係長は小声で話すが、和馬は気にも留めず、林巡査部長と薮下巡査も和馬に続いて行った。
「お…おい!お…お前たち怖くないのかよ?」
声を震わせながら係長も3人を追いかけた。
男に近づくと、はっきりと顔が見えた。
男は数日前から行方不明になっている、戸田裕也だった。
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