第21話 副業×廃旅館(8)
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前回の続きです。
「私の声が聞こえるのか?」
男は少し驚いた表情をしている。
「まあな。それより、行くなってどういう意味だ?」
「命がほしければ、ここから今すぐ立ち去れ。」
「何か知っているのか?」
「もう時間がない。早く立ち去れ。」
「待ってくれ、この人を探しに来たんだ。知らないか?」
和馬は男に戸田裕也の写真を見せる。
「…あれに連れ去られたのを見た。」
男は写真を見ながら悲しい表情をした。
「見たのか!?」
「この旅館に入って来たのを見て、忠告したが、私の声はあの若者には届かなかった。」
男は悔しそうに唇を嚙みしめた。
「あんたが言う、あれってなんだ?」
「災いをもたらす者だ。」
「それって…」
ゾクッ!!!!
次の瞬間、和馬の背中に冷たいものが走った。
振り返ると、ロビーの方から大きな黒い影がゆっくり近づいて来ているのが見えた。
和馬は全身に鳥肌が立ち、恐怖で体が動けなくなるのを感じた。
気持ちもみるみる沈んでいき、急に生きているのがつらく感じる。
次第に吐き気がこみ上げ、泣き叫びたい気持ちになった。
「おい!!!」
突然、両肩を思いっきり叩かれ、和馬は我に返る。
さっきの男が和馬の肩に手を置いていた。
「しっかりしろ!!俺が足止めするから、お前は仲間を連れて、早くここから逃げろ!!ここを出たら、始まりを探せ!始まりにその若者はいるはずだ!」
和馬は吐き気を抑えるのに必死で頷くのが精一杯だった。
頭がガンガンと波打っている。
男は和馬を係長たちが向かった方向へ押しやると、ロビーから近づく何かに向かっていった。
和馬はフラフラと壁に何度もぶつかりながら、係長たちを追いかけた。
――――――
「ここが戸田裕也のカメラが発見された場所です。」
林巡査部長は地下室に続く真っ暗な階段を懐中電灯の光で照らした。
湿り気を帯びた冷気が3人を包み込む。
「下に…降りるべきだよな…。」
係長は震える声で話す。
「泣いてます?」
林巡査部長は係長を覗き込む。
「いや、泣いてねえよ!」
「おい!!!」
「うわぁ!!!!」
急に現れた和馬に係長は悲鳴を上げた。
「今すぐここから出るぞ!!」
和馬は苦しそうな表情で壁にもたれている。
「和馬…びっくりさせるな!心臓止まるかと思ったぞ!!」
「来たばっかりですよ?戸田裕也のカメラが発見された場所を確認しておきましょうよ。」
薮下巡査は呆れた表情で和馬に話す。
「どうかしましたか?顔色が悪そうで…っ!!」
林巡査部長は和馬に近づいて声をかけたところ、廊下の奥で大きな黒いものが近づいてくるのを見て、目を見開いた。
和馬は林巡査部長の様子を見て、後ろを振り返る。
大きな黒いものがゆっくりこちらに近づいてくる。
再び頭痛と吐き気が襲ってくる。
「にげるぞ!」
和馬と林巡査部長は係長と調査したいと息巻く薮下巡査を引っ張って廊下奥の小さな部屋に逃げ込んだ。
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