第16話 副業×廃旅館(3)
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「止まれ!!!動くな!!!」
和馬と係長の目の前に若い制服警官が警棒を向けて立ちはだかっている。
とっさに和馬と係長、藁男は両手を上げた。
「規制線が見えなかったのか!?ここは事件現場だぞ!!」
若い制服警官は2人を睨みつけながら話す。
「規制線?あったかなぁ~そんなの…。」
和馬はとぼけた様子で答えた。
「和馬、そのいい訳は無理があるぞ…。」
係長は呆れた様子で和馬を見つめた。
「お前らの車を停めた場所の近くにガッツリ張ってただろ!お前ら、さては…。」
若い制服警官は無線で応援を呼んだ。
「林さん!建物内で怪しい2人組を発見しました!恐らく…こいつら犯人かと…!」
「「犯人!?」」
和馬と係長は驚いて声を揃えた。
「待ってくれ!俺たちは怪しいものじゃない…って言っても、この状況じゃ、そう思われても無理はないか…。」
和馬は弁明するも、段々と自分たちの置かれている状況を冷静に把握し出す。
「勝手に入って申し訳なかった。私は、斗南警察署生活安全課の楠だ。ここには行方不明になった戸田裕也さんの家族から捜索依頼があって来た。」
係長は警察手帳を見せながら若い制服警察官に向かって話した。
若い制服警察官は再び無線で林という警察官に再び連絡する。
「…林さん。犯人の1人は警察官を名乗っています。恐らく…嘘かと…。」
「いや!嘘じゃねぇよ!本当に警察官なの!!この警察手帳見えないのか!?」
「黙れ!嘘をついているに決まっている!だいたい、なんで斗南警察署の人間がここにいるんだ?管轄の違う現場に勝手に入るなんて本物の警察官はしないだろ!」
「くっ…!!ぐうの音も出ねぇ…。」
係長は若い制服警官のド正論に撃沈する。
「あれ?楠先輩?」
入り口の方から入って来たスーツ姿の警官は驚いた表情で係長を見た。
「は…林くん!」
ーーーーーー
「先輩、来るなら事前に連絡もらわないと困りますよ。」
スーツ姿の警官、林巡査部長は係長と和馬、後輩の制服警官と共に廃旅館から外に出ると係長に向かって苦言を呈した。
「すまん、急に来ることになって連絡するのを忘れていたよ。」
係長は林巡査部長に話しながら、その手があったかと気づく。
「パパさんの知り合いか?」
「あぁ、こちら林大作君。昨年度まで斗南警察署の生活安全課に勤務していた後輩だ。今は斗南警察署朝露支所に勤務している。」
「どうも。で、そっちは警官…ではなさそうですね。」
林巡査部長は鋭い視線を和馬に向ける。
「彼は板橋和馬君といって…えーっと、失踪事件のプロファイリングが専門で今回の事件を手伝ってもらっている。」
和馬は思わず、プロファイリングって何だ?と言わんばかりの顔で係長を見るも、係長の鋭い視線で制された。
「プロファイラーが来てくれたのはありがたいですね。手がかりになる物が何もないので。」
林巡査部長は係長の説明に納得し、和馬を見る視線は鋭いものから助けを求めるものに変わった。
「で、そっちは朝露支所の若手かな?」
係長は先程から和馬と係長を睨みつけている制服警官を見た。
「こいつは薮下太一巡査。今年入って来た新人です…おい、薮下、挨拶しろ。」
薮下巡査は相変わらず鋭い視線を係長と和馬に向けている。
「…さっきは失礼しました。でも!いくら警官だからって勝手に現場に入るのはやっぱり規則違反です!てっきり犯人かと…いや、自分はまだを疑ってます!!」
「「疑ってるのかよ!!」」
和馬と係長は思わず突っ込んだ。
「薮下…ちょっと黙ってろ。」
林巡査部長は眉間に青筋をピクピクさせながら、怒りを抑えて話す。
「でも確かに、規則違反だったのは事実だ。私から後で署の方には報告して正式な手続きを進めるよ。」
「すみません、先輩。こいつ熱くなりやすくって…それにバカで…。」
「うん…熱心ってことだよな…。それより、失踪事件について朝露支所ではどこまで情報を集めてるんだ?」
「通報は3日前、一緒に撮影に来ていた友人からでした。友人は車の近くでドローン撮影、戸田裕也は建物内での撮影をしていたようです。友人が撮影中に建物内から戸田裕也の悲鳴が聞こえ、すぐに探しに行ったものの、発見できず、警察に通報したようです。」
「捜索で何か見つけたのか?」
和馬は建物を見上げながら林巡査部長に尋ねた。
「建物内を捜索しましたが、地下室から本人のカメラを発見しただけで、後は何も。争った痕跡もなかったです。建物周辺も捜索してみましたが、見つかりませんでした。」
「支所の見解は?」
係長は林巡査部長に尋ねる。
「支所としては、戸田裕也が自ら失踪したと見ています。」
「自ら失踪?」
「悲鳴を聞いてすぐに友人が駆けつけたにも関わらず、本人を見つけられなかったこと、争った形跡もなく、忽然と姿を消していることからただの失踪として処理しようとしています。」
「警察ってそんな簡単に幕引きするのか?」
和馬は林巡査部長と係長を交互に見ながら、どちらにともなく尋ねた。
「そんな簡単なことじゃないはずだ。」
係長は戸惑いながら答えた。
「先輩、ここだけの話ですが、支所ではこの行方不明事件について、あまり触れたくない雰囲気があります。」
「どういうことだ?」
「この廃旅館には恐ろしい呪いがかけられていて、入った者を不幸にするという言い伝えがあります。ここ朝露村は信心深い者が多く、支所内も例外ではありません。」
「の…呪い?」
途端に係長は怯えた表情になる。
「私も詳細まではわかりませんが、以前にもここに立ち入った青年が行方不明になっているとか。元々この町にいて呪いの噂を知る警官はこの現場に近づこうとしないので、現場の捜査は町外から来た私と薮下、あと数名の警官しか対応できていません。」
「そんなことってあるのか?」
係長は呆れたように話す。
「いや、田舎の小さい村では、割とよくある話だぜ。都会よりも土地の信仰が生活に残っている地域は意外と多い。例えば、氏神信仰や山の神を祀っていたり、特定の場所や行動で呪われるから足を踏み入れてはいけないとか。特に温泉街は傷や病を癒す霊験の湯として発展した場所が多いこともあって、土地の信仰が色濃く残っている。」
「和馬、さすが詳しいな。」
「まぁ、色々あって…。」
廃旅館の窓ガラスを風が震わせる。
誰もいないはずの暗い館内を見て、薮下は無意識に警棒を握りしめた。
「こういう状況なので、先輩方が協力してくれるのは本当に助かります。」
「林さん!?こいつらが犯人かもしれないんですよ!?」
薮下を睨みつけながら、林巡査部長は続けた。
「私自身、本当に戸田裕也が自ら失踪したとは思えません。自ら失踪したと断定するには証拠が足りないですし、それに失踪するなら、こんな手の込んだやり方なんてしない方が騒がれないで済みますからね。そして1番不可解なのが、戸田裕也が写したカメラ画像を確認したところ、旅館の窓に複数の人影が写っていたことです。あれだけの人数が友人にも警察にも見つからずに消えるのも説明がつかないです。」
「確かにな。じゃぁ、本署と支所の共同捜査でいこうか。」
係長は林巡査部長と握手を交わした。
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