第8話 新たな出会い
母も父も、今も病院で眠り続けている。
あれからも、目を覚ますことはなかった。
そんな中、母がある日突然、病院から退院していた。
なんでも親族が迎えに来て、連れて行ったらしい。施設の職員からそう聞かされたものの、詳しい事情を教えてもらうことはできなかった。
私だって家族なのに……。
両親が面倒を見られなくなってしまったため、私は施設で暮らすことになった。そこには、同じように身寄りのない子供たちが何人もいた。
初めは戸惑うことも多かった。けれど、生活に慣れるのに時間はかからなかった。
朝起きて、学校へ通い、帰ってきたら父の病院へ向かう。それが日常になった。ある日、父方の祖母が私を引き取りたいと申し出てくれたこともあった。ありがたい話だった。けれど、私は断った。
これから先、必ずあの悪魔と対峙することになる。また身近な誰かを巻き込むわけにはいかなかった。
私の目的のために、誰かを危険にさらしたくない。
それが、私の決めたことだった。
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今日は学校帰り、近くの駅で出入りする人たちを見ていた。
日々、自分に迫る危険はないか、繰り返す要因がないかを観察していた。
そんなとき、久々にノイズが頭に響いた。とっさに頭を抱えてしゃがみ込んだため、周囲にいた大人たちが心配そうに集まってくる。
『■■■き■■■■あの■■悪魔が、■■■■■』
「大丈夫? 気分が悪いの?」
『気を付■■■■■■■勝てな■今すぐ、■■■■■れろ』
「お嬢ちゃん、顔色が悪いけれど、どこか痛いのかい?」
周囲から心配の声がかけられる。
私は頭を抱えながら顔を上げた。
「……ただの偏頭痛です。大丈夫ですよ。ありがとうございます」
気分は大丈夫なんかじゃなかった。
悪魔。その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が締めつけられた。
いまだに、この声の正体は分からない。いったい何なのだろう。そんなことを考えていたとき、ふと駅から出てきた男が目に留まった。
スーツ姿の、ごく普通の会社員。特別目立ったところはない。
男は駅前を歩き、人通りの少ない道へ向かっていく。
その姿に、なぜか嫌な予感がした。
私は周囲の大人たちに何度も頭を下げ、その後を追った。心配そうに見送る人たちの視線が背中に届いていた。
ある住宅街の通路にて。
追っていた男は、近くにいた高校生たちに近づくと、突然話しかけ始めた。
「なあ、君たち。ちょっといいか?」
突然声をかけられ、高校生たちは顔を見合わせた。
「何すか? おっさん」
そのうちの一人が答える。
男は笑みを浮かべたまま、彼らの前に立っていた。
「少し聞きたいことがあるんだが」
「いや、それ答える必要あります?」
高校生の一人が男の肩を押し、横を通り抜けようとした。その様子を見て、ほかの二人も小馬鹿にしたように笑う。
その瞬間、男が通り抜けようとした高校生の肩に手をかけた。
「何すんだよ!」
高校生は腕を振り、つかまれた手をはじいた。
もう一人が男の胸元を押す。間に険悪な空気が流れた。
「なんだよ、やんのか?」
高校生の一人が挑発するように言った。
男は、ゆっくりと顔を上げた。
「そうか。お前たちは、そういうことをするのか」
次の瞬間、男の拳が高校生の顔面に叩き込まれた。
「ぐっ!」
「おい! 何しやがる!」
殴られた高校生が地面に倒れる。残る二人が男に飛びかかった。
一人が男の顔面に拳を叩き込み、もう一人が鳩尾に拳をめり込ませた。
男は、二人の攻撃をまともに受けた。しかし、男は倒れなかった。顔を殴られた頬を撫で、鳩尾に受けた衝撃を確かめるように腹を摩る。
男は顔を上げると、まず顔面を殴った高校生に拳を叩き込んだ。続けて、鳩尾を狙った高校生の腹にも拳をめり込ませる。
さらに、背後から仕掛けようとした高校生が男の背中を殴った。
男は振り返り、その顔面に拳を叩き込んだ。
高校生たちは、次々と地面に倒れていった。
「ゲホッ、ゴホッ……くそっ……!」
倒れた一人が咳き込みながら、必死に立ち上がろうとする。
男はその胸元をつかみ、再び地面へ叩きつけた。それでも手を緩めず、立ち上がろうとする相手に何度も蹴りを加える。
「や、やめろ……! 頼む、やめてくれ!」
高校生の声が震える。男は答えなかった。
ただ、倒れた彼らを見下ろし、振りかぶった足を振り下ろそうとする。
「最初に手を出したのは、お前たちだ。なら正当防衛だよな?」
男の声は、ひどく冷たかった。
「やめてくれ……!」
一人が声を上げた。
「安心しろ。すぐに終わらせてやるから」
高校生たちは、もう抵抗する気力も残っていなかった。互いに支え合いながら、必死にその場から逃げていく。男が追いかけようとする。
その進路を塞ぐように、私は割って入った。
「やめて!」
「……何だ、お前は」
男が私を見下ろす。私は男を睨み返した。
高校生たちは振り返ることなく、通路の先へと消えていった。
「……お前、何者だ?」
「あなたこそ何者なの。殺しちゃってたかもしれないのよ?」
「何。あのような輩、死んでも誰も困らんだろう」
「この国には殺人の法律があるの! 警察に逮捕されちゃうんだから!」
「法律……そうか、法か……ククク。クァハハハ!」
男は腹を抱えるように笑った。
「人間の法など知ったことか! 我らには我らの法がある!」
その言葉に、私は眉をひそめた。
「その口ぶり……まさか、あなたも人間じゃない……!?」
男は、私の表情を見て笑った。
「その通り。察しのいいガキに、褒美をくれてやろう」
「……っ!」
スーツの中で、何かが這い回るように歪み、蠢いた。
顔の右頬には、素肌が見えないほど大きな瞳が一つ。その歯は獣のごとく鋭く、牙と呼ぶにふさわしい形をしていた。元からあった瞳も含め、白目と黒目が入れ替わったような異様な色彩へと変わっている。
そして、右側の額から角が生え、自らの後頭部に突き刺さるかのように彎曲し伸びていく。人間とはかけ離れた姿がそこにあった。
「我は悪魔。人間の定めた法に縛られる存在ではないわ」
ここに、スーツを纏う悪魔が出現した。
「……まさかお前!! カルバンか!!!」
私は、思わず口にしていた。
「私の両親に一体何をした! 答えて!!」
「カルバン……誰だ、そいつ?」
男は、きょとんとした顔をした。
「そんな名前の悪魔は知らん」
「え……だって、自分で悪魔だって……?」
「俺が知らないほど無名の悪魔なら、よほど弱い下等悪魔なのだろうな」
男は、嘲るように笑った。
その言葉が、私に突き刺さった。悪魔とは、両親を襲ったカルバンだけだった。ほかにも悪魔がいるなんて、想像すらしていなかった。
「……あなたも、無慈悲に人を殺すの?」
「いや、俺は一日一殺と決めている。さっきのガキでもよかったが、お前でもいい。これは契約。自ら割って入った己を恨め」
嫌な気配が広がる。
男は私を見つめ、笑った。次の瞬間、男が動き出す。
反射的に身構えた。けれど、遅かった。
男の拳が腹部にめり込み、身体が浮き上がる。息を吐く間もなく地面へ叩きつけられ、視界が揺れた。
「ぐっ……!」
起き上がろうとしたところへ、男の蹴りが飛んでくる。腕でかばったものの、衝撃を受け止めきれず、私は再び地面を転がりまわる。
拳が頬を打ち、身体が傾く。続く一撃が肩を捉え、私は膝から崩れ落ちる。
何もできない。短い手足は届かない。
勝てない。
そう理解するのに、時間はかからなかった。
――今回は、諦めよう。
このまま抵抗しても、結果は目に見えていた。今回が駄目でも、次がある。そう考えた私は、身体の力を抜いた。悪魔が、ゆっくりと近づいてくる。
「何だ。急に大人しくなったな」
せめて痛みなく死ねたらいいな。
目を閉じ、ありえない希望を抱き始めた。
「そこまでじゃ」
そのときだった。
聞き覚えのない声が、戦いの場に響いた。
男の足が止まる。薄れかけた意識の中で声のした方を見た。
そこには、一人の老人が立っていた。
白髪交じりの髪に、深く刻まれた皺。穏やかな表情でこちらを見ている。
どこにでもいそうな、優しそうなおじいちゃんだった。
悪魔が睨みつける。
老人は、そんな視線など気にも留めず、私の姿を見て困ったように眉を下げた。
「おお、これはひどい。こんな小さな子を、ずいぶんと痛めつけてくれたものじゃ」
「……何だ、貴様は?」
「通りすがりの年寄りじゃ。じゃが、これ以上は見過ごせんのう」
「ふん。死にぞこないが混ざったところで、何が変わる?」
悪魔は私から視線を外し、老人へと向き直った。
「いや何も変わらない。今日は貴様を殺して、日付が変わればガキを殺そう」
その瞬間、悪魔の姿が消えた。
一気に距離を詰め、老人の顔面に拳を叩き込もうとする。
老人はほんの少し身体を傾けただけで、その拳は空を切った。
「おっと」
老人は男の腕を掴むと、そのまま軽く引いた。
悪魔の身体が前へと傾き、そのまま倒れこむ。
「な、小賢しいまね……!ふざけるなッ!」
悪魔が起き上がり、再び老人へと飛びかかった。
連続で拳を繰り出す。顔面、腹部、胸元。人間ならばまともに受ければ倒れてしまうような攻撃。空を切る音を鳴らすほどの素早い攻撃に老人は難なく対応する。
老人の拳が、男の顔面に叩き込まれた。攻撃の合間、隙間を練って何度も攻撃する。
悪魔の頭が何度も後方へのけぞる。
「まったく。年寄り相手に、ずいぶんと元気がいいのう」
老人は、穏やかな声で呟いた。
途端に悪魔の爪が伸び、攻撃を捌く手目掛けて鋭い一撃が繰り出された。
だが、悪魔の爪が貫通することなく、老人の手のひらで止まっていた。
ギャリギャリギャリギャリッッ!!!
「……は?」
悪魔が目を見開く。
突然の停止、壁に当たったかのような感触。手のひらとは思えないほどの強固で金属同士が反発しあうような火花がまき散らされる。悪魔は腕を引き戻す。
「貴様……司祭か!」
「何、ただの役職じゃよ」
「なぜここに神聖協会の者が出てくる!《《管轄範囲外だろう》》!?」
悪魔の表情が変わった。
その目に、初めて明確な警戒が浮かぶ。
「隠居したいんじゃがな。まあ……ぬしがそれを知る必要はないな」
「ふざけるなッ!」
悪魔が咆哮し、再び襲いかかる。
その咆哮一つであたりの砂が吹き飛ぶ。
だが、先に老人が悪魔の胸に手を当てた。
「……もう終わりじゃ。《《ルベレスト》》」
老人の口から、聞き馴染みのない言葉がこぼれた。
何を意味するのか、分からない。
ただ、言葉が響いた途端、男の身体を覆っていた黒ずんだ気配が揺らぎ始める。
頬にあった巨大な目が、狼狽えるように激しく動く。
男は苦しそうに顔を歪め、頭を抱えた。
「ここは人間の暮らす場所じゃ。半端者が好き勝手してよい場所ではないぞ」
「な、何だ……これは……力が!求めた力が消えていく!?」
男の身体から、黒い靄のようなものが抜け出て霧散していく。
悪魔の姿を見せるとき変化した、額の角、牙、鋭い爪も無くなり始めて、やがて頬の巨大な目も、溶けるように消えていった。男はその場に崩れ落ちた。
「……あれ? 俺は一体、何をしていたんだ?」
男は呆然と自分の手を見つめ、周囲を見回していた。
老人は、男を責めることなく穏やかに声をかけた。
「気分が悪くなって、倒れてしまったようじゃな。このお嬢さんが声をかけてくれて、目が覚めたんじゃよ」
「気絶……? そうだったのか」
男は自分の身体を確認し、私の方へ向き直った。
「君が助けてくれたんだね。ありがとう」
「いえ……」
私は、うまく返事ができなかった。
男はもう一度頭を下げると、身の回りを確認しながら、その場を後にした。
その背中を見送る。
先ほどまで、私を殺そうとしていた悪魔。
それが今は、何事もなかったかのように去っていった。
私は、地面に座り込んだまま、不思議な老人を見上げた。
身体のあちこちが痛む。
腹部は息をするたびに鈍く疼き、頬は腫れ、腕を動かそうとするだけで鋭い痛みが走った。服には土がつき、擦りむいた膝からは血が滲んでいる。今も頭から滴る血で意識は既に朦朧としてきている。立ち上がることなど、とてもできそうになかった。
「……あの」
「どうしたんじゃ?」
「さっきの悪魔……私に、お礼を言っていました」
私が助けた相手だと錯覚。
自分が何をしたのかも覚えていない様子だった。私を殺そうとしたことも。
「……あの悪魔を、このまま帰してもいいんですか?」
今は何事もなかったかのように去っていった。
老人は、私の問いを受け止めるように、少しだけ目を伏せ答えた。
「今の彼は人間じゃ」
「……人間?あんな姿になったのに?」
「そうじゃ。正真正銘の悪魔ではない。心に溜まったものを利用され、あのような姿になっておっただけじゃよ」
老人はそう言ってから、私の顔を覗き込んだ。
「それより、お嬢ちゃん。ずいぶんと痛そうじゃな」
「……平気です」
口にした途端、堪えていた痛みが一気に意識へと押し寄せた。
口からの吐血も出始める。身体が震える。息を吸うだけでも、腹の奥が痛んだ。
老人は私の様子を見て、首元に手を伸ばした。
そこには、一つの首飾りが掛けられていた。
「……それは?」
「これのおかげじゃよ」
老人は首飾りをそっと持ち上げ、私に見せた。
「これで彼も周囲の者たちも、わしの行動に何の疑問も抱かなかったのじゃ」
「……そんなことが、できるんですか?」
「さてな」
私は、首飾りを見つめた。
老人は、その様子に穏やかに笑った。
「……あの、あなたは一体、何者ですか?」
「その話は、君の手当てをしてからにしよう」
私の傷ついた腕をそっと支えた。
老人は傷の具合を確かめながら、何かを感じ取るように目を細めた。
「……ほう。お嬢ちゃん。少し聞いてもよいかの?」
「何ですか?」
「お主から、神聖の気を強く感じるのじゃが……どこの出の者じゃ?」
「でのものって?」
「お主の名は?」
「柊 永遠です」
「ふむ。父の姓か、母の姓かどちらの姓を名乗っておる?」
「……分かりません」
「分からん?」
「はい。私、両親から聞いたことがなくて……」
老人は、私の返事を聞くと、少し考え込むように黙った。
「一般的な家庭でこれほどの逸材とは……」
「……おじいさん。私、何か変なんですか?」
「いやいや、変というわけではない。むしろ、素晴らしいことじゃ。じゃが、今はまだ説明しても分からぬことも多かろう。しかしよく意識を保っておったものじゃ」
傷だらけの私の姿を見て老人は、呆れたように、けれど優しく笑った。
「この傷なら間に合う」
そう言いながら、老人は懐から小瓶を取り出した。
中には、赤く、それでいて明るく輝く液体が入っている。
老人は小瓶を掲げ、空を見上げた。そして、突然大きな声で続けた。
「聖アグノリア・サンドルマよ。ここに貴女の水を必要とする者がいる」
「その栄光を彼の者に与える。その真偽は如何に!」
……何を言っているのだろう。
私は、目の前で起きていることを理解できず、ただ老人を見つめていた。
老人は一瞬だけ目を閉じる。そして頷いたかとおもうと小瓶の蓋を開けた。
次の瞬間、小瓶の中から赤い液体が溢れ出した。
「……え?」
液体は地面に落ちることなく、宙へと浮かび上がる。
小瓶の中身がすべて流れ出すと、空になった瓶は老人の手の中に残された。
赤い液体は、私の身体へと向かってくる。
逃げる間もなかった。
液体は私の全身を包み込んだ。
髪にも、服にも、傷ついた肌にも。さらには口の中にまで入り込んでくる。
「んっ……!」
けれど、息苦しさはなかった。
液体に包まれているはずなのに、呼吸はできる。
それどころか――先ほどまで身体中を襲っていた痛みが、消えていた。
腹部の鈍い痛みも、腕を動かすたびに走っていた鋭い痛みもない。
頭から滴っていた血も、いつの間にか止まっている。
赤い液体が、私の身体からゆっくりと離れていく。
そして、最後の一滴まで消えたとき、そこには傷一つ残っていなかった。
「……痛く、ない」
「うむ。これでひとまず安心じゃな」
呆然と呟く私を見て、老人は満足そうに頷いた。
そして、私の頭をそっと撫でた。
「……おじいさん」
「何じゃ?」
「私、これからどうすればいいんでしょうか」
「…一人で悪魔を倒せるくらい…強くなりたいんです」
気がつけば、そんな言葉が口から出ていた。
老人は、私の顔をじっと見つめた。
「悪魔に、もう何も奪わせたくない」
老人は顎に手を当て、しばらく考え込んだ。
「ならば、ひとつ提案がある」
「わしら神聖協会は、今では本拠地をアメリカに移しておる」
「神聖協会には、悪魔に関する古い記録が数多く残されておる。悪魔のことを知り、対抗する術を学ぶには、うってつけの場所じゃ」
老人は、穏やかな声で続けた。
「アメリカに来るか?」
「……行けばあの悪魔たちを倒せるようになりますか?」
「それは、おぬし次第じゃ。来るというなら施設や学校への話は、わしがつけよう」
司教は、私の迷いを察したように言った。
「お主が突然いなくなったなどと騒ぎにならぬよう、きちんと説明しておく。後見人もわしが引き受けよう。渡米に必要な手続きも、心配せんでよい」
「……そこまでしてもらっても、いいんですか?」
「もちろんじゃ。ひとり悪魔に立ち向かおうとする子供を、放っておくわけにもいかん。おぬしの選択が何だったとしても」
「…なら、私は―――」
<><><>
次の日
私は、いつものように父の病室へ向かい、ベッドのふちに座った。
ベッドの上で、父はいつもと変わらず眠っていた。
私はそっと近づき、その手を握る。
「……お父さん」
「決めたよ私、アメリカへ行くよ」
父の手を握り、そっと胸元へ身を寄せる。
「悪魔を倒せば、お父さんもお母さんも、目を覚ましてくれるかもしれないから」
私は父の胸にぎゅっと抱きついた。
小さな両腕をいっぱいに回し、服をきゅっと握りしめる。
「絶対に私が助けるから」
父の胸に顔をうずめたまま、私は小さく呟いた。
「……たまには、会いに来るからね」




