第1話 永遠の誕生
第1話 永遠の誕生
――2030年4月2日。
病院の一室で、一人の女の子が生まれた。
「おぎゃあ! おぎゃあ!」
小さな産声が響く。
出産を終えた母親は、疲れ切った様子でベッドに横たわっていた。そのそばには、彼女を支えてきた父親の姿がある。
生まれたばかりの女の子は、母親の胸元に抱かれていた。
聞こえてくる声も、触れている感触も、まだ何もかもが曖昧だった。
だが、そのとき。
世界が止まった。
動いていたものが、すべて静止する。
人の声も、物音も、何も聞こえない。
――ザー……ザザッ……。
代わりに、ノイズの混じった声が響いた。
『⬛️⬛️⬛️ ⬛️を見つけ⬛️ ⬛️⬛️たの⬛️⬛️ ⬛️の……』
『⬛️⬛️助け⬛️⬛️⬛️て⬛️らせて……』
途切れ途切れの声。
何を言っているのか、はっきりとは聞き取れない。
『⬛️ ⬛️ ⬛️⬛️ ⬛️⬛️⬛️ ⬛️ ⬛️ ⬛️⬛️ ⬛️』
ノイズが強くなる。
やがて、声は途切れた。
そして――。
「おめでとうございます! 元気な女の子ですよ!」
医師の声が響く。
父親は生まれたばかりの娘を見つめ、震える手で顔を覆った。
「……よかった。本当に、よかった……」
その目から、涙がこぼれ落ちる。
母親もまた、疲れ切った顔で娘を見つめていた。
「あなた……」
「頑張ったな。よく頑張ったな……!」
父親は何度もそう繰り返し、妻の手を強く握った。
しばらくして、母親が小さく口を開く。
「この子の名前……決めていたでしょう。この子に教えてあげましょう?」
「ああ」
父親は涙を拭い、娘の顔を覗き込んだ。
「永遠。永遠と書いて、とわだ」
母親は、娘の額にそっと口づけた。
「永遠……」
優しい声。温かな手。
私は、母の胸に抱かれていた。
けれど、眠気が訪れる。
泣き声も、少しずつ小さくなっていく。
そして――眠りに落ちた。
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第1話 永遠の誕生
「おぎゃあ! おぎゃあ!」
産声が響いた。
「4月2日、午前0時32分30秒! ご出産、おめでとうございます!」
聞こえてくる声。
慌ただしい足音。
そのそばで、父親が膝から崩れ落ちた。
「……ああ……!」
両手で顔を覆い、声を震わせる。
出産を終えた母親は、疲れ切った様子で横たわっていた。
それでも、娘の姿を見れば、自然と笑みがこぼれる。
父親はそんな母親の手を握った。
「頑張ったな……。本当によく頑張った……!」
何度も、何度も。
その声は、涙で震えていた。
母親は娘を抱き寄せる。
「あなた……この子が、永遠なのね」
父親は頷いた。
母親は小さな額に口づけをする。
「生まれてきてくれて、ありがとう」
温もりに包まれる。
優しい声が聞こえる。
やがて、眠りについた。
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第1話 永遠の誕生
温かい。
柔らかなものに包まれている。
どこまでも心地よく、離れたくない温もり。
けれど、その温もりが少しずつ遠ざかっていく。
身体が押される。
狭い場所を通り抜けるように、少しずつ、少しずつ。
そして――。
「おぎゃあ! おぎゃあ!」
小さな産声が響いた。
「奥様、ご出産おめでとうございます! 元気な女の子ですよ!」
明るい声。
肌に触れる空気。
慌ただしく動く人々の気配。
母親は疲れ切った顔をしながらも、嬉しそうに笑っていた。
生まれたばかりの小さな身体が、優しく抱き上げられる。
温かい手に包まれる。
柔らかな声が聞こえる。
「生まれてきてくれてありがとう」
そう赤子に伝える。
こうして、私は三度目の出産体験を迎えた。




