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聖戦回帰/全ては血滲む努力の結果です。  作者: ナノテクミリオン
2章 アメリカ滞在編

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第10話 and welcome Hell

アメリカに到着した。


空港から車に乗り、案内されたのは学区と呼ばれる地域だった。

これから私が通う学校がある場所。新しい生活の始まり。


「まずは、ここで勉学に励むことになる」


おじいちゃんが、車窓から見える建物を指差した。


「昼間は学校で勉強。宿舎に戻ってきてからは、歴史について勉強を開始しよう」

「……歴史?」

「そうじゃ。ぬしが知っておかねばならぬことは多い。ついてこれるかな?」

「ついていかなきゃならないのよ」

「良い意気込みだ!」


おじいちゃんは満足そうに頷いた。

……なんだか、急に先生みたいになった。


「ただ、転入として入るからしっかりするんだよ」

「わかったわ」


私は素直に返事をした。


これから学校で勉強して、宿舎に戻ってからも勉強。

大変そうだけど、やるしかない。頑張ろう。


「……ねぇ、おじいちゃん。一ついい?」

「なんじゃ、早速怖気ついたのか?」

「違うよ。私、パスポートにハンコを貰えてないけど……不法入国にはならないのよね?」


その言葉に、おじいちゃんの表情が固まった。


「……な、なんじゃと?」


さっきまで余裕たっぷりだったおじいちゃんが、明らかに狼狽えている。


「おじいちゃん?」

「……おい」


おじいちゃんは近くに控えていた黒スーツの男性に、私のパスポートを手渡した。


「おぬし、これのハンコを押してきてもらえるかの」

「聖グラウディアス卿!? いくらなんでも――」

「押してきてもらえるか……のぉ?」

「いやしかし――」

「押してきて……もらえぬか……のぉ?」

「か……畏まりました」


男性は、慌ててパスポートを受け取った。

その覇気に気圧され、有無を言わざるを得なかったらしい。


……いや、覇気っていうか。

完全におじいちゃんの権力行使だよね。


「そもそも、旅客機で普通に来る予定じゃったんじゃ。つまり、ぬしらのせいと言っても、あながち間違いではない」


おじいちゃんの小言に、後ろに続く黒スーツたちが一斉に肩を震わせた。


「そうなんだね。なら、元々予定していた飛行機の機体番号はなあに?」


その言葉に、おじいちゃんの肩がびくりと震えた。


「……ま、まあ、パスポートのことは心配するな。それより今日は疲れたであろう? 今日は顔合わせで終わるとしようじゃないか。な? なぁ?」

「ふ~ん。おじいちゃんに任せるよ」


そう告げると、おじいちゃんも黒スーツたちも、一息つく。…だけれど。おじいちゃんが黒スーツたちに視線を向けると、彼らはまたも狼狽え始めた。


「……おじいちゃん?」

「なんでもない。なんでもないぞ」


そう言って、何事もなかったかのように私には笑顔を向けた。



<><><>


その後、私たちは宿舎へと向かった。


建物の中に入ると、廊下を行き交う人たちの姿が見えた。

年齢も、服装もさまざま。

それぞれが何かしらの目的を持って、この場所で生活しているようだった。


「ここにいる人たちは、みんな悪魔のことを知っているの?」


私が尋ねると、おじいちゃんは頷いた。


「そうじゃ。各々ができることをしながら、来たるべき時に備えておる」


その言葉を聞いても、まだ実感は湧かなかった。

だが、ここにいる人たちは違う。


日々の暮らしの中で、当たり前のように悪魔を意識している。

それだけ、身近な世界には知られていないことがあるのだろう。


「……ねえ、おじいちゃん」

「なんじゃ?」

「私くらいの年齢の子はいるの?」

「そうじゃな。ぬしと同じくらいの子はおらぬが、近い年齢なら一人おるらしい」

「……そうなんだ」


近い年代の子がいるなら、仲良くなれるかもしれない。


「まずは、中を案内しよう」


おじいちゃんに連れられて、私は廊下を歩いていった。


建物の中には、いくつもの部屋が並んでいる。

通りかかる人たちは、おじいちゃんを見ると頭を下げていた。


……やっぱり、すどく偉い人なのかな。

そんなことを考えていると、おじいちゃんが一つの部屋の前で立ち止まった。


「ここじゃ」


中には、机や椅子、それから本棚が並んでいた。


天井は高く、壁沿いには天井に届くほどの本棚がいくつも並んでいる。窓から差し込む光は、空気に漂う細かな粒子を照らし、部屋全体を淡く輝かせていた。


書物を整理する司書さん。積み重ねた本を前に、机に向き合う人たち。

そして、辺りには光を帯びた紙が、ふわりふわりと舞っていた。


それは、意思を持っているかのように、宙を漂い、時には人の頭上を越え、時には本棚の隙間へと飛び込んでいく。それを追いかける人たちの姿もあった。


……なんだろう、ここ。

まるで、物語の中に迷い込んでしまったみたいだった。


「ここで歴史を学ぶことになる」

「……ここで?」

「そうじゃ。学校での勉強とは別に、ぬしには知っておかねばならぬことがある」


おじいちゃんは本棚から一冊の本を取り出した。


「これから学ぶのは、正史には記されておらぬ歴史じゃ」

「正史に……?」

「神話の時代から後世に伝わるまでに、長い年月の中で忘れ去られた歴史。神、天使、悪魔。そして、それぞれに従う者たちや、敵対する者たちの存在について記されておる。 ただし、持ち出し厳禁じゃからな」


本を受け取った。

表紙には、見たことのない文字が刻まれている。


「……これ、読めるの?」

「心配せずともよい。しっかりした指導者が教えてくれる」


おじいちゃんは、私の頭をぽんと撫でた。


……神様に、天使に、悪魔。どれも、物語の中に出てくるような存在だ。

けれど、本当にあった歴史。


「それと、もう一人紹介しておこう」


おじいちゃんが部屋の外へ向かって声をかけた。


「入っておいで」


扉の向こうから、小さな女の子が顔を覗かせた。

私より少し年上だろうか。見た目は十歳くらい。


「…この子が、ぬしに近い年齢の子じゃ。これから顔を合わせる機会も多いじゃろう。仲良くしてやってくれ」

「……よろしく」


女の子は、頭を下げた。


「私は、永遠《とわ》。永遠《とわ》 柊《ひいらぎ》だよ。これからよろしくね」

「…私はルノウェ・サンドライト」


そう言って何処かに行ってしまった。

……仲良くなれるといいな。


「さて、永遠《とわ》。今日はまず、冒頭を読んでみるかの」

「……もう?」

「そうじゃ。学ぶことは多いからの」


本を開いた。

そこには、神話の時代についての記述があった。

私は表紙をめくり、最初の一行を読み始めた。


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